第23話 霊子エナジー
木のテーブルの上に置かれた金色の球体は鉄の蓋のついたガラス瓶に入れられていた。
エマはその美しさに思わず時間を忘れて見とれてしまった。
それは人間の心の奥底に直接語りかけるような美しさであった。
「これが
ぼそりとエマは言い、なおも視線が外せずにいる。
「そう、これが私たちが駆る獣鬼兵の基本的な起動システムになるんだよ。帝国のそれとは基本理念が違うのさ」
コーヒーをすすりながら、ドミニクは言った。
「え、じゃあレイブン事件って……」
エマは形のいい顎に手を置き、考える。
「そうさ、あれは帝国側の思い違いから生まれた不幸な事件さ。だからサラはそれを防ごうと帝国本土まで侵入してまで止めようとしたのさ。でもあの時はアリババっていう少女しか助けられなかったけどね」
ドミニクはそう言った。
これはアリババから聞いた話ではあるがトルキア人が開発した獣鬼兵は魔宝石とよばれるものをメインのエネルギー源としている。
その魔宝石はあのロシュフォールが使用していた魔剣シルフィーユにも取り付けられていたものと同様のものである。
アリババの話では
獣鬼兵はその星のエネルギーとも呼ばれるマナを魔宝石で集め、直接注ぎ込み、動かすのである。
帝国と共和国の獣鬼兵は外見はにているが中身はまったくの別物であったのだ。
不幸なアリババたちの一族は帝国側の勘違いであのような目にあったのである。
そのことを考えるとエマは目が熱くなるの覚えた。
人間はおろかな生き物だと思った。
「こいつは私も知らなかったね」
豊かな胸の前で腕を組み、ベレッタは言った。
「そうだね、この
さらりとドミニクは言った。
エマはドミニクの最後の言葉にひっかかった。
「ちょっと待って、私に伯母さんがいたの!!」
エマは驚き、言った。
今の今まで自分の家族は義理の妹のリナだけだと思っていた。
「ああ、あんたには伯母さんがいる。レイラにはあんたが大人になるまで黙っていてくれと言われてたけどね。まあ、もういいだろう。十五才は立派な大人だからね」
ドミニクは言った。
「私たちはこの
ドミニクは一気に言った。
ドミニクの話は途方もなく、聞いたこともない単語が多く、エマの理解力の限界を越えようとしていた。
ベレッタもその話を聞き、ただただ頭をかいていた。
「まあ、この話はそのフェルナンド辺境伯の軍を追い返してからだね」
ドミニクは言った。
自分の叔母レイラのことはかなり気になることであったが、今はあの辺境伯の軍が迫っているのも事実だ。
まずは目の前の問題を片付けるのが先決だと思われた。
「そうね、辺境伯の軍に勝たなければどのみち私たちに未来はないわけだし。まずは未来を手に入れてからね」
エマは自身を説得するように言った。
この戦いに勝って、そのレイラという叔母さんに会ってみたい。
そうエマは決意した。
「それでだ、この
ドミニクは言い、ガラス瓶をなでた。
「あんた、サラの娘を助けてあげてね」
そのドミニクの声はあまりにも小さく、エマやベレッタの耳には入らなかった。
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