第21話 最後のトルキア人
銀色の髪をした先端のとがった耳を持つその褐色の肌をした女盗賊はトルキア人と名乗った。
トルキア人はエルフとも呼ばれていた。
人間よりも先にこの大陸に住んでいたとも言われている。
ドワーフが工業技術に優れているのに対し、エルフは魔法と呼ばれる技術に優れていた。
ロシュフォールの魔剣シルフィーユに埋め込まれていた黒い宝石もトルキア人が作ったものだ。
他にも
もともとトルキア人と帝国の関係は良好であった。
しかし、三十年戦争後期にある事件がおきる。
それはレイブン事件と呼ばれるものであった。
獣鬼兵をもつのは帝国だけであった。
それがとある戦いで共和国も獣鬼兵を投入したのである。
その報せを受けた帝国政府はトルキア人が裏切ったものだと考えた。
卑怯な裏切りととらえた帝国貴族たちはトルキア人の集落に攻めいった。
ろくな調査もせずにである。
トルキア人の指導者であるレイブンは帝国に弁明の機会をもとめたが、それは聞き入れられなかった。
彼らの集落は燃やされたのである。
トルキア人の一部は人間たちに絶望し、その魔力をつかい別の世界に旅たったともいわれている。
トルキア人には白い肌をもつものとアリババのように褐色の肌をもつものがいた。白い肌をもつものの方が魔力が高く、褐色の肌をもつものは高い戦闘能力をもつといわれていた。
白い肌のエルフは皆、別世界に旅立ってしまった。
褐色の肌をしたダークエルフたちは必死に抵抗したが、多勢に無勢で皆殺しにあってしまった。
ただ一人、ブレーメン旅団のサラ・パープルトンによって救出されたアリババを除いてである。
「そうか、サラ旅団長が助け出した最後のトルキア人が君だったのか。あの作戦のときは私は留守番をしていたからね」
ベレッタは言った。
「ええ、子供だった私は燃える集落からサラ旅団長に助け出されたのです」
アリババは言った。
「それであなた方はどちらにむかわれるのです?」
アリババは尋ねた。
「私らは無敵のドミニクに会いにいく途中なんだ」
ベレッタは言った。
辺境伯の宣戦布告を受けたエマたちは頼りになる仲間を得るためにガイゼルの街に向かう途中だとベレッタは説明した。
「そうか、あのトリプルDに会いに行くのか。お願いがある、私をつれていってくれないか。私は帝国に両親や友を殺された。ここで帝国相手に盗賊行為をしていたが、そんなことをしていても同胞の恨みははれない。一緒につれていってくれ!!」
アリババはエマの手を握り、そう懇願した。
エマの手を握るアリババの手は熱いものだった。
それは彼女の感情のたかぶりのためであろう。
エマはその手を握り返した。
「ええ、今は一人でも戦う仲間がほしい。一緒に戦いましょう。いいですよね、ベレッタさん」
エマはベレッタに言った。
「ああ、いいよ。決めるのは団長のエマ、君の役目だ。私に依存はないよ」
ベレッタは言った。
こうしてダークエルフのアリババが新しくブレーメン自警団の仲間に入った。
アリババの提案で彼女のアジトで休むことになった。
ベレッタは夜のうちに渓谷を抜けたがったようだが、エマはアリババの申し出に賛成した。正直いって騎馬の旅に疲れきっていたからだ。
たしかにベレッタのいう通り、時間がおしいが疲労がたまっているのも事実であった。
アリババのアジトは洞窟を改造したものであった。
小さな穴に布をはりつけ、部屋として使用していた。あらゆるところにランプが点いていて簡単な調理道具なども置かれていた。
そしてエマたちを出迎えてくれた人物たちがいた。
それはアリババと共に暮らしているという戦災孤児のアズライルとスルーシという兄妹っだった。
「おかえり、アリババお姉ちゃん」
兄のアズライルが出迎える。
「お客さんなんて初めてだね」
妹のスルーシが言った。
仲のいい兄妹はエマたちのために焼いた黒パンと熱いコーヒーをいれた。
スルーシはエマのためにたっぷりの粉ミルクを混ぜて、渡した。
「ありがとう」
そう言い、エマは持ってきたチーズと缶詰の肉を出した。
五人は簡単な食事をアリババのアジトでとるのであった。
「飯を食べたら、寝る前に見せたいものがあるんだ」
アリババはエマに言った。
食事をとったあと、ベレッタは先に休むことにした。
渓谷を
ベッドにはいるとすぐに寝息をたててしまった。
アズライルとスルーシも食事の後片付けをして眠りについた。
アリババの案内でエマは一際大きな穴に案内された。
そこにあるものはかなり大きな布が被せられていた。
「これってもしかして……」
エマはその大きさにあるものを想像していた。
「そうだよ、あんたの想像通りだよ。こいつは私がいろんな所から部品をあつめて作ったものだよ」
そう言い、勢いよくアリババは布をめくった。
そこからあらわれたのは翼の生えた獣鬼兵であった。
鷹の頭にジャッカルの体に翼が生えている。
「こいつが
アリババは言った。
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