その日も彼は月明かりが部屋を照らし出すまで仕事をしていた。冥府がようやく門を開けることとなり、数多くの死者の魂を輪廻の輪に入れるべく彼は不眠不休で事に当たらなければならなかったからだ。

 サシャは眉間を揉みしだきながらふと、空を見る。そのとき、ふと景色が変わる。彼はまさしく、地形が変わるという見たくもない奇跡を、目の当たりにしてしまった。

 巨軀が、竜が蹂躙するかのように、屋敷を潰していく。

 一瞬にして彼の屋敷の大部分が潰れて、執務室も半壊してしまったのは、しかし彼がいた場所だけはかろうじて無事だったことに対し、喜ぶべきなのか。

 とにかく、一呼吸しただけで大地を変貌させてしまうほどの竜が飛来してきたことに驚愕するあまり、その上にリオンが乗っていたことに気付くのは、もう少し時間が経ってからのことであった。


「……なんですか! この事態は」


 竜に殺意はない。とりあえず、すぐに自分を殺すこともないだろうと希望的観測をもって、彼はローブを羽織り、外に出る。そうして彼は、竜を連れてきた彼を出迎えた。


「後任を連れてきた」


 挨拶もせず不躾に言う彼は、白銀の長い髪を切りもせず、乱暴に髪を括っていたーーサシャは目を見開く。幼い頃に見かけた最後の姿から成長しているような――かつての彼の兄に、あまりに似ていたからだ。

 しかし雰囲気はやはり少し前に見た彼そのもので、自分を忌ま忌ましげに睨んでいる。

 けれど何故だろう、殺すわけでもなく「公認者を連れてきた」と言われてついにサシャは、毒気が抜かれてしまった。


「……この子どもは、あなたの子どもですか」


 その子どもは、リオンの後ろで彼の腰を掴んで震えていた。震えている姿はまさしく彼らの種族を表す髪色と瞳を兼ね備えている。ただ、羽だけがない。

 恐らく誰かに奪われたのか――と想像する。そしておおよそ、サシャの予想は当たっていた。


「……上から攫ってきた」

「あなた……こんな幼児趣味があったなんて、猟奇趣味は百歩譲ってよしとしても……流石にここまでとなると……素直に引きます」

「俺にそんな趣味はない」


 彼はうんざりしながら、子どもをぽいっとサシャに投げよこす。その少年も、初めて見る光景に右往左往している様子が見て取れた。

 サシャは戸惑いつつ、半壊した屋敷の中に案内する。破壊した本人――否、竜は、何もしゃべらず息もせず、蜷局を巻いて目をつむって、サシャの声にも反応することはなかった。



「で、冥府の主人たる素質が備わっているから攫ってきたと」

「……さ、攫われてはいないんですが」


 サシャは壊れていない数少ない屋敷の中を案内しつつ、客間に移動する。彼らをソファーに座らせ、少年の自己紹介を済ませると、いよいよリオンは冗談ではなく、本気でサシャの後任を連れてきたつもりであるようだ。

 リオンがこの子どもを見つけたのはたまたまだという。今はもう見ることもなくなった、天使である資格があるくせに全く天使らしくない、見た目はどこにでもいそうな、普通の子ども。


「かつては羽が生えていた人間だ。見た目に反してお前の後任を務められるぐらいには頭も悪くない」

「何故急に、私の後任者をわざわざあなたが連れてきれくれたのでしょうか」

「お前の後任を決める人間はみな死んだ。だから俺が選び、連れてきた、それだけの話だ」


 ならば寿命は十分だろう。天使の資格を持っていたなら、たとえ今は羽がなくとも不死である。外因要因がなければ死ぬことがない、冥府の盟主足り得る資格。確かに、彼が殺しつくした後であるなら、寧ろサシャの後は、この少年しか務められるものはいないだろう。


「でも、何故? 選ぶなら、選ばなくてもいい。後任がいないなら、私が世界の終わりまで冥府の主のままでもいいはずだ」


 そう、結局のところ冥府の主が座るところが「空席」でなければそれでいい。その席に座るものは、誰だっていいのだ。そしてもっとも相応しいのは、今のところサシャのみである。

 サシャは不死だ。決して病気にかかることもなければ、老化もせず。殺されない限り死ぬことはない。それこそ世界の終わりまで、誰かが選ばなければ延々と冥府の主であるつもりだった。そもそも友であった者が就くはずだったその役目を、自分が認めたものでないと、誰が後任を決めても、自分が譲るつもりは毛頭なかった。

 しかし今は、唯一の友であった男が決めた後任が、サシャの目の前にいる。異論を唱えるつもりはない。元々、サシャが永遠にこの座から降りないと決意したのは、これ元々は友の役目であったからだ。けれど、そのかつては友だったものが、決めたなら――彼はそうして、彼が後任を連れてきた理由をようやく述べた。


「……お前は大事なことを忘れている」


 リオンは立ち上がり、サシャの目の前に立つ。影のせいで彼の表情が分からない。そして彼は指を上げ、その銀色であろう眼差しで、迷いなくサシャを射抜いた。


「冥府の主の座を降りるそのとき、俺が必ず殺す」


 それはつまり、彼の殺意を一身に受けることに他ならない。


「お前を殺す刻が、ついに来たということだ」


 彼は宣言した。間違いなく脳髄をぶち撒けるといった。天使は確かに不死である。けれど害意をもっと敵と相対すれば、死ぬ。

 自分が殺されるのは構わない。彼が竜を連れ舞い降りたそのときに問答無用で殺さなかったのは彼の慈悲だろう。けれどそれでも、サシャに残された時間は、あまりにも少なかった。


「……一週間待ってください」

「待てるか、俺は今でもお前を殺したくてたまら」「待ってくださいと言ってるのです!」


 彼は鞘から剣を抜きかけ、けれどサシャは無抵抗で、ただ待ってくれと懇願した。

 あと少し。あとちょっと。ほんの少し時間があれば、それでいい。死ぬことは構わない。しかし彼は、何も遺さず、何も遺せず死ぬわけにはいかないのだ。


「一ヶ月……いえ、一週間でいい。私はあなたに必ずこの首を捧げます。だから一週間だけでいいのです。一週間だけ、私に時間をください。信じられないのなら、傍で見張っていればいい」

「……」


 にらみ合って、どれほどのときが経っただろうか。やがて彼は剣の柄から完全に手を離して、再びソファーに座る。

 無言は肯定と受け取っていいのか。恐らくだが、彼は一週間だけ待ってくれるだろう。問答無用で、慈悲を決して許さず天使を容赦なく殲滅する彼が、結局剣の鞘から指すらかけていないのだ。つまりは、そういうことなのだろう。



「本当に傍で見張っているとは思いませんでした」

「お前が言い出したことだろう。許可を与えたのはそちらだ」


 それから少ない時間、サシャはミオに後任の手続きを進めつつ、自分のすべきことを進めていた。リオンは何もするべきことがないのか、執務室の前に置いていたソファーに座り、サシャを視界にしつつ、紅茶を飲んで暇を持て余していた。


「流石に中身までは見ないですよね」

「当たり前だ。人の趣味を見るつもりは毛頭ない」


 サシャは今、仕事をしていない。今は完全な私的な時間だ。今書いているものも、事務机を使っているが、完全な私用である。リオンがいるのも、本当に彼を見張るためなのだろう。サシャを殺すための剣は見当たらなかった。


「一週間、時間をくれと言った理由は」

「それは命令に入りますか?」

「ただの好奇心だ」


 命令なら盟約として、リオンも必ずサシャが課せられた同じほどの盟約を提示、準じなければならない。けれどただの質問なら、必ず答える必要はない代わりに、リオンは何も罰を下されることはない。

 これは冥府に住むものの規律ルール。これが、たとえ冥府の主であっても適用される絶対の不文律であった。

 彼はけれど、ただの好奇心からくるものであるならば――と、答えることにする。


「……遺書ですよ、私が唯一、本当に愛していた相手への」


 決して叶わなかった、些末の夢。せめて文章に綴りたかった。愛を伝えたかった。結局、自分が想いを募らせているを誰に知られることもなく、冥府に閉じ込められてしまったが。


「まぁ最後まで想いを告げることもなく、片想いに終わりましたけどね」


 そう、本当に誰にも伝えることも、想い人に自分の心を知られることもなく。それで良かったかもしれない――と考えていた。それこそ世界の終わりまで胸の奥に秘めているつもりだった。

 けれどこんなことになって、急に自分の死期が決まって、せめて最後は想い人に気持ちを伝えようと、筆を執りこうして悩むことになってしまった。こんな無様な姿――本当なら誰にも見せたくなかったのに。


「でも駄目ですね、どうしても思い浮かばない」


 彼はずっと悩んでいた。目の前にある紙には真っ白のままだ。ただの一言も書くことも出来ず、あと少ししか彼に残された時間はないのに、結局遺書は白紙のままであった。


「……どうして遺書を書こうと思ったか、何て話を切り出そうか、どんな想いをしていたなんて、想いが溢れてしまって、綴ることすらできないのです」

「時間は有限だ。お前が死ぬそのときまで、存分に考えろ」

「……えぇ、そうさせてもらいますよ」


 リオンは会話を終えると、その辺に落ちていた本の続きを読むために、ついに黙り込んでしまった。サシャはちらりと、リオンを視界に捉える。彼が今持っている本は、確かそれはリオンが興味を示せない分野であったはずだ。それでも読んでいるといことは――本当に暇なのだろう。

 リオンは芸術や音楽に興味を示すことはない。描く技術はあっても、手ひどく裏切られてからは芸術や音楽の言葉すら嫌がるようになってしまった。

 その彼が芸術に関しての本を興味なさげではあるが読んでいる。

 きっとリオンが飽きたときこそ本当に自身の最後であると――サシャは彼を視界から外し、今度こそ遺書を書くべく万年筆をとって――今日も最後まで、何も書けなかったことを悔いるのであった。



「えっ、サシャ様の想い人なんて、見ていてすぐわかる――……あー……、ロケットペンダントを持ってるでしょう、彼。たまに執務室で開けては眺めているから、きっとその人が片想いの相手だよ」


 ミオは頭のいい子どもだった。普通の人間より成長が遅い彼らは、見た目よりよほど大人びている。ミオもそのうちの一人だ。彼は確かにリオンやサシャより年若いが、こちらにいる子どもよりずっと年をとっている。きっと彼がこちら側の人間であったのなら、子どもだっていたかもしれない。


「へぇ、よく見ているじゃかいか」

「リオン様が人のことを見なさすぎなだけだよ」


 彼はその観察眼を以て、すぐにサシャの想い人を見破った。しかし彼が言うには、単にリオンが鈍いだけらしい。サシャは首元に確かに銀色の飾りチェーンをしていた。しかしそれがロケットペンダントだとは気付かなかった。

 サシャは度々、仕事中ですらそのペンダントを無意識に胸の上から触れ、休憩中にチャームを開いて物思いに耽ることがあるらしい。リオンは一度も見た覚えがないが、本当にただ興味がないかなと結論した。


「それはそうと、サシャの代わりに役目を務めることはできそうか」

「多分。本当はもう暫く引き継ぎしたかったけれど、こればかりはね」


 ミオはサシャに時間がないことを知っている。そして、リオンがサシャに殺意を抱いていることも。一週間がリオンが正気を保ったまま、サシャを殺さないでいられる境界線。

 結局彼の衝動は、かつての友でさえ抑えきれずにいられなかった。どう足掻いても、呪いのようにリオンに付きまとう、その感情。帯剣をしていないのも、衝動でサシャを殺さないためであった。

 しかしそれも今日まで。日付を越えたとき、彼は殺す。間違いなく、殺す。

 殺意は最早抑えきれない。どんな者であろうと、彼は天使を殺す。

 リオンは彼の想い人を知る必要がない。きっと知れば、天使であろう者も殺してしまうから。リオンは彼の想い人を既に殺してしまったかもしれない。

 それでも彼は、誰がどんなものであろうと、天使であれば殺さずにはいられなかった。


「……いってらっしゃい」

「あぁ、行ってくる」


 彼は黒い革の鎧を薄着の上に身に着け、剣を帯刀する。力を持つ人間ですら、たちまち腐らせる魔の剣。生き物ではないただの革さえ、一年に一度、新しいものを替えなければならない。決して大ぶりのない剣はかつて竜であったものの死骸だ。

 けれど今回だけは、これを使うわけにはいかない。

 リオンはもう一つの小ぶりのナイフを取り出す。これでは一撃で魂までも潰すことがままならない。けれど今日の殺人は、このナイフだけで十分だった。


「遺書は」

「あなたに言われずとも。ちゃんと遺してきましたよ。私が死んだあと、ミオが届けてくれるよう手配しているはずです」


 完全な旅衣装を纏ったリオンは、死に装束を着ているサシャのもとに行く。リオンは未だ正気のままであった。これなら、完全に彼を殺せるだろう。

 彼らは冥府の境界線まで移動をはじめた。この国でさえ縛ることはできない竜が咆哮を上げながら彼らごと飛んでいく。空を飛び、どれほどの刻が経ったのだろう。冥府と、冥府でない境界線が見えてきた。


「……」


 そのとき、美しい夕日が見えていた。冥府は常に太陽を見せない。サシャは生まれて初めて、この世界での太陽を、空の色を見た。青色ではない、赤色と黄色と、時折紫が重なった、複雑な色。これを最期に見られるなんて、なんて幸せなことなのだろう。

 彼は空を見て、静かに涙した。あまりの美しさに――声も出なかった。音もなく呆けている彼は静かに剣を携え、たったぽつりと一言、零す。


「須く、死ね」


 肉が割れる音がした。しかし骨が砕く音がしなかったのは、彼の剣技を以て、器用に骨の間を、筋肉の繊維を断ち切ったからだ。

 サシャは呆けたまま、ずっと空を見ていた。だから彼は、羽を断ち切られたことすら、気付かなかったのだ。


「は?」


 彼はようやく、自身に羽が落とされたことに気づく。四枚の、鈍色に濁った羽。そして彼はようやく、自身の処刑が終わったことを知る。


「私、何で、生きて」


 サシャが静かな声で呟いた。そう、彼は彼のままここに在るままなのだ。しかし彼は生きている。リオンの殺意は間違いなくサシャに向けられていた。けれど。

 サシャは慌ててリオンに振り返る。リオンは無感動にサシャが落としたその羽をまるで宝物のように布で包んでいる最中であった。


「……お前が天使であり続けるなら、俺はたとえお前が何者であろうと殺さなければならない――……いわばこれは、手前勝手の、苦肉の策ではあるが」


 だから、サシャは生きているままなのか。サシャは未だ天使ではある。しかしその身に宿した奇跡は、まるで半身が抜けたように、既にサシャの身体には存在していなかった。

 彼はやがて熱を持ち痛む背中を忘れたまま、両ひざを付く。結局、彼は何も大切なものを失うことなかったのだ。翼は、サシャにとっても忌むべきものであった。


「……何だ、本当に死にたかったのか、変わり者め」

「あなたに言われる覚えはありません!」


 サシャは今度こそ涙をぼろぼろ零して、襟元を濡らしていく。彼の心の枷が、とめどなく声となって叫びざるを得なかった。


「私が、どんな思いで、ずっといたか、知りもせず……ッ!」


 手で顔を押さえ俯いて泣くさまは、それでも彼はかつて美しい天使であったことを思い出させた。けれど今はサシャもただの人間だ。彼は人間になって、初めて感情を露わにした。


 暫く彼が泣いて、ようやく彼は泣き腫らして真っ赤になった目をそのままに顔を上げる。


「……遺書」


 サシャは慌てて立ち上がる。ここは既に冥府ではない。再び冥府に潜ることは、普通の方法では叶わなかった。それでも。


「まずい、すぐにミオのところに行って差し止めしなければ」

「……別にいいじゃないか、良かったな。想いを伝えることができて。ひょっとしたら、向こうもその想いに報いてくれるかもしれないぞ」


 サシャは帰りたがった。泣き腫らした顔をさらけ出して、それも構わず慌てているさまは、リオンの目には少し滑稽に映るほど。リオンは彼の哀れな姿を眺めて思わずあり得るかもしれない未来を提案して慰めた。

 既に竜は冥府との境界線を離れ、リオンがかつて住んでいた家に向かっている。

 けれど彼はますます様子を取り乱して。


「私を舐めないでくれますか!? 拗らせた者がどれほど面倒になるかは、あなたも嫌というほど知っているでしょう……!」


 そしてリオンはサシャに怒られた。

 確かに感情を拗らせて、素直に物事を捉えられなくなった人間を相手にすることはとても面倒くさかった。寧ろリオンは、歪んだ感情を抱いた人間たちにより、色々なものを奪われてしまった。

 けれど現在、リオンを煩わせるものは今や見ぬ天使のみ。リオンの大切なものは全て彼らによって取り上げられて、掌から零れ落ちてしまった。けれど今は、彼らによって奪われる大切なものも、何もないから。


「あーまぁ……うん、そうか?」


 彼は疑問を抱いた。嫌であれば、取り返す。その人間が天使であったら殺すだけだ。羽が生えていなければ、自分に害がなければ、放っておく。それだけのことなのだけれど。


「そういうものなんです!」


 サシャは未だに怒っている。けれどやはりリオンには理解出来ない。

 どちらにしても、既に竜は戻れないところまできているのだ。リオンとしても戻るつもりは毛頭ない。リオンは話を逸らすつもりで、彼に話しかけた。他人を気にかけて、しかも話しかけることなんて、今までのリオンからは考えられないことだった。


「まぁそんなことより」

「そんなことはありません! 私にとっては一笑がかかった一大事なのです。あなたという情緒がない人間には分からないと思いますが」


 それでもサシャは怒り続けている。降りたら手当をしなければならないだろう背中の痛々しい傷跡をそのままに。今は怒りで痛みを忘れているだろうけれど、彼が正気に戻ったとき、気絶しなければとリオンは思う。


「良いじゃないか……--いこうぜ、冒険に。色んなところに頭を突っ込んだ、あの頃みたいに、旅をしようじゃないか。せっかく飛べなくなったんだ。その足で、その身体で空を見るのも、楽しいだろうよ」

「ッ!」


 リオンもサシャも、幸せであった頃を思い出した。かつての記憶。二人して色々なところに無謀にも入り込み、様々な人間に怒られた、今となっては既に戻ることもできない些末の夢。それでも今であるならば、生きてさえいれば彼らはあの頃のように、走ることだってできるのだ。


「……仕方ありませんね、行きましょう」


 サシャは力なく笑う。泣いたせいで顔を腫らし、背中もじくじくと熱を持って満身創痍であったが、それでも彼はリオンに笑いかけた。


「あまりに永い刻、机に縛られていましたからね、精々足を引っ張られてください」

「あぁ、望むところだ」


 幸せだった頃の記憶はぽろぽろと掌から零れ落ちて、今となっては戻ることもできないが、彼はついにかつての友だけは、たとえ天使であろうとも、その手を首にかけることはついぞなかった。

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贖え天使よ、罪人よ呪え 藍砂 @fuyuhime

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