架空の大名家が存在するファンタジーな東北が舞台ですが、実在した大名家を絡めたり、作中には存在しない史実の要素を上手くアレンジして取り入れているところが、歴史好きには堪らないですね。たまに後世のものと思しき視点から解説を入れることで、ファンタジーな設定にリアリティを与えているところも素晴らしいです。正直、読む前は「戦国時代は好きだけど、忍者ファンタジーは少し違うかな……」と思っていましたが、そういう数日前の私みたいな人にこそ読んでもらいたい作品だと思います。
しっかりとした骨太なストーリーに引きこまれます。史実と架空のお家をうまく構成したお話で、主人公さや姫の苦しみや、未来への哀しみを纏った決意に先が気になります。このさや姫に付いている忍び、紫月が魅力的で、言葉足らずだけれど、子供らしからぬ環境で生きているさや姫に寄り添おうとしている姿に、癒やしのようなものを感じます。これからが楽しみな作品です。