1話(仮終)

「A!時間じゃぞ!起きんか!」


声の主は土人と呼ばれるドワーフ種族の男、ダイヴだ

僕は咄嗟に残っている片腕で時計を見た


「ゲッ……D!なんで10分前に起こさなかったんだよ!」

「起こしたわい!」

「BちゃんとCちゃんに怒られるだろ!!」

「魔性と殺戮マシーンをちゃん付けするのはお主だけだぞ?」

「うるせぇなぁ!」


急ぎ、支度をして窓を開ける


「……居るじゃんよぉ、バカ商人御用達のVIP専用荷物運び車」

「とんだ皮肉だの」


見晴らしのいい廃墟ビルの下を、1台の2トントラックが通過する


「ここまで誘導するのに苦労したと聞いたぞ」

「Cちゃんかぁ?」

「道路封鎖に意識誘導魔術の同時使用で参っておったよ」

「電話かけて労わねぇとなぁ!」

「バカモン!強襲が先じゃ!!」


ダイヴに襟首を捕まれ、窓から放り投げられる


(相変わらず雑なやり方だねぇ、あの野郎)


トラックの屋根を凹ませて降りると、運転手が顔を出す


「な、なんだってん────」


僕が運転手の頭部を守る全魔術防衛システムを、魔術反転弾用拳銃で撃ち殺すと、死体が足の筋肉を膠着させたのか、スピードを上げていく


「よいっ、しょっ、とぉ!」


一気に運転席を破壊して開けると、死体を引きずり落として運転席に座る


「このままドライブと行きますかね」

”おい……おい!何かあったのか!?”


どこからか無線が入り、僕は無線を取り頭と肩で固定すると、ダイヴ特製の首に装備する肉声変換器で返事をした


『いえ、問題ありません』

”そうか……ルートから外れてるが確認は取れている、なんせ荷物は────”

『MB(魔術反転弾頭)ですよね?』

”お、おう……くれぐれも気をつけるんだぞ!”


僕は無線を切ると、走りながらにもかかわらず助手席に乗ってきたダイヴを見た


「ちったァスピード落とさんかい」

「見えなかった、わり」

「いつかお前さんを武器にしてやるわい」

「そうなったら僕が先に殺してやる」



十字路があれば左へ右へ

T字路があれば右へ左へ

幾度となく繰り返して、目的の人物が走りながらのトラックに乗り込んでくる


「D、寄って」

「うるさいのう、Cは。よっこいせ」

「ちょ、ドワーフ臭い!」

「何じゃA!差別か!喧嘩売っとるんだな!?」

「D、うるさい」

「ワシが悪いんかァ!?」

「……あ、もしもし?Bちゃん?」

「Aは無視して電話するでない!」

「うん、そうそう今からー……そそ、あぁ、今押してもらってる?」

「おい、Bはまた喰らうのか」

「どうせ辿るは同じ末路」

「お腹壊さねぇように、腹巻作ってあげっかなぁ?」

「普通胃薬じゃないかしら?」

「おいA、電話切れておらんではないか!!」

「あ、やべ」

「……B、怒らせると手がつかないのよね」

「あの魔力供給式ブースト車椅子で追われる身にもなって欲しいぜ」



目的地の高層ビルが見え始め、アニムンガントが仕切るカジノがある1階から3階を見る


そこにトラックを突っ込んでMBを起動して、金を奪って襲ってくるやつは殺して逃走する

簡単な話だ


「……作戦確認」

「A、裏手」

「D、正面」

「CはAについて行く」

「BはDの介護」


俺は携帯からBに伝えた


「おい待たんか!介護言うでない!」

「へーへー、んじゃ作戦開始」



トラックに積まれているBMを、Dが起動させる


「効果は2時間、それまでは実弾のみだ」

「1時間で事足りる」

「ワシなら30分で制圧できるぞ」

「私なら目標物を15分」

「Bが5分でビル破壊できるってさ」


「「「……」」」











━━━━━━━━


出会いなんてのは偶然でも必然でもない


運命だ


やっぱ必然だわ


A、B、C、D




俺たちは、瓦礫になったビルの上でビールを飲んだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪道──残酷小児の悪路── 黒煙草 @ONIMARU-kunituna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る