第2話 展望
太陽が。
月が。
雲が。
風が。
雨が。
海が。
雷が。
火が。
土が。
地震が。
菌が。
虫が。
動物が。
植物が。
薬剤が。
人間が。
薬草師である
とある日。都雅が一人の結界師を連れてきた。
灯ってさえいれば凛々しい目になるだろうに、実際は、虚無の感情しか宿していない死んだ魚の目。サラサラの紅茶色の短髪、体力仕事には向かないだろう、ひょろく白い体躯の男性。
名を
結界など要らない。
言ったところで、都雅があっさりと引き下がるわけない。言い合いになるのは面倒だ。と判断して、言わなかったわけではない。
ただ単純に見てみたかっただけだ。
今は死んだ魚の目をしているが、いつか己が羨む凛々しい目になる瞬間を。
史月は史月で仕事がほしいので住み込みで置かせてくれと言うのだ。
国からたんまりと金はもらっているので、一人雇うくらいわけなどない。
浅葱は目まぐるしく頭を働かせては、契約を交わした。
五年前の話であり。
今の今まで、一度たりとも、史月の目が凛々しくなる刻はなかった。
外側は黒煉瓦、内側は白煉瓦の天井裏部屋ありの二階建ての家。
史月は二階にある二部屋の内の宛がわれた一室の窓辺から、薬草を嬉々として世話をする浅葱を見て、一つ、溜息を出した。
すれば、灰色の縄が出現。
薬草限定の結界縄であり、成長はするので老死からは逃れられないが、この縄で囲めば薬草は健康状態を維持できる上に、あらゆる災厄からも保護してくれる(ただし、結界を解く強い解界師からの保護は無理)ので、薬草師からすれば喉から手が出る代物だろうに。
(僕はあいつに必要とされているのか?)
眼前に広がる薬草畑の中で、縄で囲んでいる薬草が圧倒的に少ない上に、その少ない薬草にさえ縄を渋々囲む有様。
必要ないのでは。
何百回思ったか知れないが、生きていく上で金は必要、家は必要なのだ。
解雇されるまでは、貯金をして、次へと繋げていこう。
まだまだまだまだまだまだ。
先は長いのだ。
(2021.9.18)
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