南北朝時代の主役はなんと言っても尊氏ですが、この物語は尊氏の絶頂期ではなく、王者となった晩年から始まります。
時代は既に次世代に移りつつあり、本来なら引退して激闘の人生を振り返ってもおかしくないところですが、政権のピンチに表舞台に出ざるをえなくなります。
ストーリーは、四谷軒さん独特の神視点で淡々と描かれていきますが、客観的な事実の選択と配置の妙で、尊氏の戸惑いと苦境をリアルに想像させ、映画的な味わいを感じます。
さてもう寿命が尽きようとしている尊氏ですが、これまでの全ての成果を覆しかねない状況で、いぶし銀の采配を見せることができるのか、さらには次世代にどうやってバトンを渡すのか、今後の展開が期待されます。