第20話 GWを過ぎれば、あの季節ですよね……
「もう、真嶋っちったら~」
「ほんと図太いよな」
ビール代まで出るわけないだろうが。さすがの森川会長も領収書のところにビール代があったら目ん玉飛び出すわ。
「待たせたね」
しばらくして、部長と顧問が出てきた。
にこやかな部長とは対照的に、顧問はしょんぼりテンション低めである。
ビール代くらいで……。
「まぁ、楽しかったし、いいじゃないですか」
「それもそうね~。青島君の小説も面白かったし」
ユーザー登録しておくわ~、と早速小夜にやり方を聞いている。
みんなで2人を見つめていると、不意に緩やかな風が吹いた。5月も中旬ということもあって、柔らかな夜風が丁度いい。
「気持ちいいですね~」
自然とのほほんとした心持ちになってしまう。
こないだまでは夜になるとまだ寒く感じる日もあったが、季節が移り替わるのもあっという間だ。この後すぐに梅雨になって、夏になって……。
「あっ、そうそう」
ユーザー登録が終わるまで3人で適当に話していると、ふと何かを思い出したように真嶋先生が声を上げた。
どうしましたか?
疑問符をつけて彼女を見つめると。
「来週から中間テストだけど、みんな準備してる?」
唐突に。
真嶋教諭は何気なしといった感じで高校生が最も忌み嫌うイベント名を口にした。
え、ええと、それは…………。
ただ目を泳がせて黙り込んでしまう。
「ああ、それならもちろん」
だが、そんな俺とは対照的に。
残酷な事実を告げられても、部長は当たり前と言わんばかりの余裕っぷりだった。
さすがは、我が鷹ノ森高校が誇るエースである。
「わ、私も……少しだけ……」
申し訳程度に話すのは、東雲さん。まだあまり本格的ではないものの、この土日にノートなどを見返し始めたらしい。
やはり、勉強にも真面目に取り組もうとするいい子である。
と、二人がすぐに答えた一方で。
鷹ノ森高校文芸部の部員3名は、彼女の言葉にただ固まったのだった――。
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