第15話 フラグ回避
「――で、今回の歓迎会の特別ゲストが……」
「やぁ、みんな久しぶり~って、君達とは毎日会ってるよね!」
適当に紹介すると、特別ゲストさんはハハハッ、と豪快に笑い飛ばした。
確かにフラグは回避できたけど……っていうか、あそこまでフラグ立てたのだからいっそのこと森川会長が登場したって良かったのだが。
まぁいい。
紹介としよう。
何を隠そう、凛様がお声をかけたゲストさんとは。
「あっ、真嶋っちこんばんはー」
「こらっ、雨宮さん。真嶋先生でしょ」
「ごめんなさーい」
我らが2年3組担任、真嶋真紀教諭だった。
入店した彼女をみたとき、部長の言葉に納得した。
そういや去年に文芸部の顧問の先生(名前は知らないが、鷹ノ森の仙人という異名を持っていたおじいちゃん)が退職したから、文芸部の顧問になったんだっけ。
文芸部なんて顧問の先生来ることほとんどないから忘れてた。
今年は多分一回も部室に顔を出してないはず。
確かに、今日の特別ゲストと言っても過言じゃないレアさだ。
ガ〇ガリ君の当たりくらいレアだな。
「あ……えっと、この方は……?」
親しげに話す真嶋先生と小夜を横目に楓はさりげなく尋ねてきた。そういや、部室に来てないんだから真嶋先生を知ってるわけないか。
学年も違うし。
「この人は、俺のクラス担任で文芸部の顧問も務めていらっしゃる、真嶋真紀先生です」
「あ~、顧問の先生……」
俺の説明に楓が納得していると、先生は楓に気づいたようだった。
「君が小鳥遊さんね、雨宮さんから話は聞いてるよ」
「は、話……⁉」
ビクッと肩を跳ねさせ、楓は恐る恐る首を小夜の方へ動かす。すると、彼の視線の先の彼女は無言でてへっと可愛く舌を出してウインクをした。
彼の顔から血の気が引いていく。
彼女の話にろくなものはないことを楓は瞬時に読み取ったらしかった。
さすが、毎日小夜のおもちゃにされているだけある。
「あ、安心していいよ。私は雨宮さんみたいなことはしないから……」
本気でビビる楓に、真嶋先生は優しく頭を撫で、よ~しよ~し……とまるで本物の母親のように楓をなだめている。彼女の中からあふれ出る母性に感化されたのか、しばらくすると楓の顔色も戻り、平静を取り戻したようだった。
「雨宮さん、小鳥遊さんをここまでビビらせるって……いつもどんなことしてるのよ?」
「一緒にじゃれ合ってるだけですっ☆」
またも舌を出しておどけたポーズをとる。
最近よくやるけど、それハマってんのかな……。
全然可愛くないんだけど。
むしろ俺のお前に対する憎たらしさが倍増するんだけど。
「さっきから私への評価がひどいわよ、遊馬?」
「さっきからじゃない、ずっとだ。そこ大事だから、今度から絶対間違えるなよ」
俺の小夜評がいつ良かったのか、俺も知りたいくらいだ。
「それじゃあ場のあったまってきたところで、そろそろ歓迎会を始めようかな」
みんなのまとめ役、凛様のかけ声と共に歓迎会が盛大にスタートした。
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