第14話 スペシャルゲストのご到着!

「そういや、なんで今日にしたんです?」

「あれ、言ってなかった?」

 ドリンクを汲みながら、少し気になっていたことを部長に尋ねる。どうやら部長は言ったものと勘違いしていたようだった。

 俺が聞いてないことを告げると、部長はわざとらしく笑みをこぼした。

「今日は、特別ゲストが来てくれるんだよ」

「と、特別ゲスト、ですか?」

 部長の口から飛び出したのは、意外な答えだった。彼女の性格上、あんまりゲストとか呼ぶような人じゃないような気がするんだけど。

「それって、誰……」

「もうすぐ来ると思うから、楽しみにしておいて」

 何やらもの知り顔でこちらを見る部長。

 えっ、誰ですか、本当に?

 文芸部メンバーは全員揃ってるし……あとは誰がいるんだっけ。まさか、森川会長が来るわけないし……って、フラグ立ててどうするんだ。俺ともあろうものが、初歩的なミスをするなんて……!

 会長が来たりでもしたら、歓迎会どころではなくなってしまう。速水部長のどれほど素晴らしいのか、本人がいる前で堂々と説明し始めるくらいなのだから。一度、速水部長にヘルプのラインをもらった時の悪夢は今でも鮮明に記憶に残っている。

 あれは本当にきつかった…………部長が。会長の白熱した速水凛談議に顔を真っ赤にしていた姿はカメラに残しておきたいくらい可愛かっ……可哀そうだった。

 彼女の熱量に触発されて、途中からは俺もその談議に加わってたし。

 あの時はどうもすみませんでした。

 とまぁ、それはさておき。

 この話から森川会長がどれだけ危険人物か、みんなにも伝わっただろう。

 万が一でも来ないよう、両手を合わせて全力で祈っておく。フラグ判定されてませんように、フラグ判定されてませんように……。

「いや、私に拝まれても……」

 困り顔の凛様をよそに、全力で神様仏様凛様……と祈っていたところ。

「いらっしゃいませー」

「あっ、噂をすれば」

 部長の口端がわずかに上がった。

 どうやら、件のスぺゲスさんが到着したようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る