第7話 小っちゃくないよ、東雲さん!

「へぇ~、やっぱり東雲さんって運動系なんだ」

「そうだよっ。こう見えて、中学校で卓球、ここに来るまではバスケットボールってたんだから」

 小夜はこの日日直ということもあって、俺と東雲さんの二人で部室へと向かっていた。彼女の部活経歴を訊ねると、ラケットを振ったり、シュートしたりする素振りを見せる。

 まさかの卓球とバスケか。

 嬉々として話す彼女を見下ろす。いかにも身長が150センチに満たないであろう彼女と相性が悪そうに感じた。現に彼女も「よくリーチが届かなかったんだよね」と卓球の思い出を語ってるし。

 それゆえ文化系の部活って入ったことないのだそうだ。

 確かにスポーツ系は基本的に部活に入らなきゃだけど、読書するためにわざわざ部活に入らなくてもいいもんな。

 そうやって会話を交わしているうちに、部室に到着した。

 電気もついてるし、どうやら誰か先にいるようである。

「で、ここが文芸部の部室です、ボロいけど……」

 きゅぃ~~という変な音と共に扉を開け、先に入ると速水部長と楓が二人静かに本を読んでいた。

「あ、青島君。こんにちは」

 俺に気づいた部長が軽く微笑む。

「せ、先輩、こんにちは……」

 楓も部長に続けて挨拶した。

 すると部長は俺の後ろにいる東雲さんに気づいたようだった。

「君の後ろにいる子は……入部希望の子、かな?」

「あ、いや……見学という感じです」

「ああ、そういうことか。大して何かするわけでもないけれど……今日は好きに見学していって欲しい。私が文芸部部長の速水凛だ、よろしく」

「……ああっ、えっと、東雲ほたるです!」

 部長の凛々しさに気後れしつつも、最初の自己紹介の時と同様に元気な声を出す東雲さん。その姿にさすがの速水部長もほおが緩んだように見えた。

「一年生かな?」

「あ、いや、東雲さんは俺のクラスメイトで……」

「こう見えて、高校二年生です!」

 そう言いながら、元気にジャンプしてアピールする。

 これまでも思っていたけれど、東雲さんは小さい子扱いや小さく見られるということにあまり抵抗がないらしい。個人的には「ちっちゃくないよ!」と飛び跳ねて欲しい気持ちもあるが、素直なのも意外といいものである。

「こないだ転校してきて――」

 簡単に彼女の事を説明する。

 東雲さんから直接説明してもらえばいいのだが、ついつい彼女の代わりに何かしてしまいたくなってしまうのだ。何というか、保護者ってこういう気持ちなんだろうな~、と彼女を通して実感する。

「それじゃあ、文芸部について簡単に説明するね」

 一通り彼女の説明を終えると、部長は東雲さんに文芸部の概要を説明し始めた。

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