第5話 待ちに待った感想!
その日の夜。
風呂上がりに部屋に戻ると、スマホに一件の通知が入っていた。小説サイトを確認すると、それは@fireflyさんからのメッセージで。
待ちに待った彼からの感想をすぐさま確認する。
【最終話、読みました!それと一年間お疲れ様でした!
最終話は、いつも以上に胸がときめきました。ですがそれと同時に、この二人とはもう会えないのか……と少し寂しい気持ちになってしまいます……。
なので、早くシマウマさんの次の小説が読みたいです!
図々しくなってしまいましたが、これからもシマウマさんが書く小説を楽しみに待っています!頑張ってください!】
おおぉ~~~‼‼
スマホを食い入るように見つめてしまう。
すごい、これすごいっ‼
彼の感想を読み終えた時、俺のテンションは一気にMAXとなっていた。めちゃくちゃ長文のメッセージ、それもめっちゃ応援してくれている内容にこれだけ気持ちが高ぶってしまうのも仕方のないことだった。
ひょえ~などと、自分でもどこから出してるんだという声が出てしまう。
これまであきらめずに待った甲斐があったというものだ。
てか、@fireflyさんも次の小説を楽しみにしてくれてると分かったからには、これは新たな小説を書かねばならないな。
いや~、シマウマさん頑張っちゃいますよ!
内輪以外のたった一人しかいない読者からの応援に思わず一人で画面を見ながら顔が綻んでしまう。
あぁ~嬉しい、本当に嬉しい。
送られてきたメッセージに何度も何度も目を通しては、むふふっ、と気持ち悪い声が漏れ出てしまうくらいだ。
こうやって読者から反応をもらうということも小説を書いていく上で結構な比重を占めていた。小説を書いて感想をもらうまでは分からなかったけれど、感想をもらうことでしか得ることのできない、認められたことへの喜びがそこにはある。歌手のインタビューなどでもよく聞く、 一回この喜びを知ってしまうと癖になってやめられなくなる、そんな喜び。
早速、感謝のメッセージを書こうっと。
俺の気持ちが熱いうちに@fireflyさんに感謝の思いを伝えることにする。
だが余りに勢いがつきすぎてしまったせいか文量がすごいことになってしまったので、添削して要点だけをギュッとまとめた。
【ありがとうございます!@fireflyさんからのメッセージもあって、ここまで小説を続けることができました!これからは短編を書いていこうと思ってるので、楽しんで読んでもらえればうれしく思います!】
推敲した文章を打ち終わり、誤字・脱字がないか確認する。一回読み直したのに小夜に誤字・脱字を指摘されたばかりなので、この数行の文章はいつもより入念にチェックした。
画面越しに何度か音読した後、送信する。
これで、本当にこの小説も終わり、だ。
@fireflyさんへのメッセージを送信し終わった俺は、ふぅ~っと大きく息を吐いてベッドに倒れ込んだ。
これでしばらくはゆっくりできる。
何もない、平穏な日常が戻ってくる。
これまでは大体週に一回くらいのペースで更新し続けていたけれど、これからはそんなに短いスパンで書くこともないだろうし。連載をしていた時は、次の締め切り日に追われるような変な強迫観念によく襲われていた。一話を上げるとすぐに、今度の話はどうしようか……と次の締め切りに追われていた。
プロでもないし、小説家を目指すわけでもないのに締め切りに追われる、という謎すぎる日々に、あの頃はすぐに逃げ出したいと思っていたんだけど。そう思っていたはずなのに、いざ終わってみると逆に手持ち無沙汰のような状態になってしまう。
何も書かなくていいんだよな、と何をするでもなく適当にスマホを弄る自分に罪悪感さえ覚えてしまっている。妙に落ち着かない。
俺は既に小説の呪縛に囚われている、ということを改めて実感した。
スマホを横に投げ捨て、天井を見上げる。
次の小説が読みたい、か……。
@fireflyさんからのコメントを口の中で反芻する。
まぁ、仕方ない。
このままスマホを見ていても落ち着かないんだったら、俺がすべきことはただ一つ。小説を本当の意味で楽しみに待ってくれてるただ一人の読者のために、シマウマさんが一肌脱ごうじゃないか。
ベッドから起き上がった俺は、ペチペチ顔を叩いて気合を入れて次の短編の構想を考え始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます