第12話

アサヒの元まで戻った俺は


「終わったよ。」


と告げる。


「何があったんですか?」


心配そうにそう聞いてくる。


アサヒは何か危ないことがあったことはなんとなく把握しているようだったが、あのムカデの魔物が出たということまでは把握できていないようだった。


「強めの魔物が出た。まあ、でも今、倒してきたからもう大丈夫だよ。」


それを聞いてアサヒは


「なら、良かったです。」


と安心した様子を見せる。


「そうだ。魔石。魔石を回収しないと。」


アサヒに見つけてもらった魔石。ムカデのせいでどこに消えたのかわからない。


探し直しだ。


そう思っていると、


「魔石なら持っていますよ。」


と魔石を見せてくれる。


赤色の宝石のような石。

アサヒが持っているのは間違いなく魔石だ。


ムカデが出現したあの瞬間、魔石を掴みそのまま持っていたか。


「良かった。ありがとな。」


と魔石を受け取る。


さて、これをどうするか。


魔石のあった場所にムカデがやってきた。あのムカデは魔石を狙ってきた可能性があるかもしれない。


関係なかったとしても少しでもその可能性があるのなら破壊する必要がある。


そう考えて魔石を地面に落とし剣を突き刺して破壊しておく。


「あ。」


何も言わずに魔石を破壊したせいかアサヒは破壊された魔石を勿体なさそうに見つめていた。


「欲しかったか?」


魔石は価値があるし欲しくないわけないと思うが。


「あ、いや、全然。」


アサヒは両手と頭を左右に振って否定する。


お店を紹介してくれたり、街の案内をしてくれたりと助けてもらった。何かあげられればいいのだが。


魔石は危険だからと破壊したのであげられない。かといって直接お金をあげると言ってもなんか違う気がする。


何かいいのないかなと考える。


考えていると魔法を教えるというのが一番いい気がしてきた。


さっきから魔物が出るたびにアサヒを遠ざけ、戦って戻っての繰り返しだ。


いちいちそんなことするのはめんどくさいし、今だけの話じゃなく、強くなれば金を稼ぐこともできる。


「この後、魔法を教えようか。」


唐突にそう聞く。


ここら辺に最初に発見した魔獣の元となった魔石があるかどうか確認しないといけない。探している間に魔物と遭遇すると思うので次はアサヒに任せる。その時に魔法の使い方を教えよう。


「他にも魔獣がいないか確認しなきゃいけないから、その最中に出てきた魔物を倒してくれないか?」


「はい。」


「魔法はその時教える。」


「わかりました。」


「じゃあ、探索始めるか。」


と歩き出す。


魔物と魔石を探して数分、ネズミのような魔物を発見した。


「よし、やるか。」


俺はアサヒの方を見てそう言うと


「はい!」


とアサヒは元気よく返事をした。


「まずは魔法陣なしの魔力のみの魔法を使おうか。」


「えっと、どうやれば。」


やり方がわからなくて困惑している。


魔法陣を展開する魔法しか使ってこなかったのだろう。


魔法陣を使えば簡単に魔法を使うことができる。しかし、頼り過ぎれば自分で応用が出来なくなる。魔力と魔法の関係それを理解して初めて魔法を自分で使えることになる。


「手を前に伸ばして。」


そう言うとアサヒは素直に手を前に伸ばす。


「掌に魔力を集中させて。」


「魔力を。」


そう呟いて魔力を掌に溜めようとするが上手くできずに、何も起こらずに魔力が消えてしまう。


「魔法は魔法陣を展開して放つだろ?」


「はい。」


「じゃあ、その魔法陣は何を使い展開しているかわかるか?」


「えっと。」


「魔力だよ。魔法陣に魔力を流すことで魔法は発現するけど、その元となっている魔法陣も魔力で展開している。つまり、魔法は全て魔力で成り立っているだ。魔力を扱えるようになるということは自分の思い通りに魔法を扱えるようになるのと同義なんだよ。」


「魔力を扱う。」


アサヒはそう呟いて再び魔力を掌に流す。しかし、何も起こらずすぐに魔力が消える。


魔法陣は魔法製造機だ。使いたい魔法の情報が書き込まれていて魔法陣を作れば自動的に自分の魔力を消費し魔法が撃てる。そして、その魔法陣には型があり魔力を適当に流すだけで作り出せる。


なので、魔法陣の型を知っていれば感覚だけで魔法を撃てる。


アサヒは多分そんな感じで魔法を使っている。


魔力を自在に扱えれば簡単な魔法が使えるようになり、魔法陣の書き換え、流す魔力の調整ができるようになる。


それだけ魔力を扱えるようになることは大切なことである。


「指先に魔法陣を展開する感覚で魔力を流してみて。」


「はい。」


そう言って再び魔力を流す。僅かであるが魔力が溜まったのか指の先がほんのりと光る。


そこから魔法陣が展開されそうになったので、


「それをそこの魔物に投げる感じで放ってみて。」


と伝える。それを聞いてアサヒは大きく腕を振って光る魔力を飛ばす。


飛ばした魔力は魔物に当たると消える。魔石は全く効いていないようだった。


それを見て


「ダメでしたか?」


と聞いてくる。


「大丈夫だ。あれでいい。」


魔力を飛ばすことはできていた。あれを練習すれば、そのうち魔力を自由に扱えるようになるはずだ。


「よし、あいつが逃げる前にどんどん魔力を投げよっか。」


そう言ってクロストによる魔法の特訓が始まった。

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魔王討伐部隊の最強と呼ばれた剣士、100年後の世界でも最強だった 吹雪く吹雪 @hubuku_hubuki

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