第11話

先程魔獣を倒した場所に辿り着いたクロストは辺りを見渡して、魔石らしきものを探すが見つからなかった。


なのでアサヒに、


「これと同じような魔石がここら辺に落ちてないか探してくれないか?」


とバラバラに砕けた魔石を見せてお願いする。


「いいですよ。」


とアサヒは魔石を探し始める。


クロストも木の下などを探しす。


10分ほど探し、諦めそうになった時、


アサヒが


「ありました!」


そう言って魔石に手を伸ばした。瞬間、地面が少し揺れる。


何かくる。


クロストがそう考えた瞬間だった。


アサヒの足元の地面から大きな何かが飛び出してくる。


思いっきり地面を蹴ってアサヒの元に駆け寄り、アサヒを抱いてその場から離れる。


突然のことにアサヒの理解は追いついていない。少し離れた場所までアサヒを運んだ後、


「ここで待ってろ。」


とだけ言って魔物の元に戻っていく。


「なんだったんだ?」


さっきの何が出てきたか確認する。


地面から出てきたのは3メートルほどのムカデのような生物。


「魔物か。」


魔物から敵意を感じるので剣を構える。


「ここで時間を割きたくはないんだけどな。」


そう呟くと、ムカデの魔物は大きく口を開いて威嚇すると突っ込んでくる。


剣で受け止めることはできないと判断したクロストは横に避けて軽く側面に剣を当てる。


しかし、側面に当てた剣はムカデを傷つけることなく弾かれる。


「硬いな。」


しょうがなく距離を取る。


距離をとりながら何度か攻撃を入れていくか。


一度、魔物の背後まで走る。


全身外殻に覆われていて、弱点らしきものは無い。


とりあえず、魔法を撃っておくかと魔法を展開しようとするとムカデは地面に潜り始める。


逃げられた?


ムカデが完全に地面に潜ったのを確認して、その場で止まって地面を警戒する。


いつムカデが出てくるかわからない。慎重にいかないとな。


さっきと同じように穴から出てくるならば避けるのは簡単だ。


見た感じ内側が柔らかそうだったので、次の出てきた瞬間に叩く。


そう決めて集中する。


足元が僅かに揺れる。ここにくるのは確定か。


揺れは更に大きくなっていく。そして、地面に僅かに亀裂が入った瞬間、


「そろそろか。」


とムカデが地面から出てくる前にその場から離れる。


離れた瞬間、ムカデが顔を現したので思いっきり地面を蹴って加速して、ムカデの体節と大節との間目掛けて剣を突き刺す。


剣は弾かれることなく突き刺さる。


そのまま、刺さった剣を振って大きな斬り込みを入れる。


ムカデは痛みに耐えられなかったのか左右に大きく身体を振って暴れている。


かなり激しく暴れているため近くことができない。


「どうするか。」


一度、身体強化を解除して、ムカデの周りを走りながら様子を見る。ムカデは痛みに慣れたのか暴れるのをやめる。


今だ。


動きが止まり威嚇を入れようと大きく口を開いた瞬間、その瞬間を見逃さない。


一度、魔法を展開する。


かなり激しく暴れているため近くことができない。


「少し静かにしていてくれ。」


暴れるムカデに対して魔法を展開する。


時間はかかってもいい。最大の威力で魔法を放つ。


魔法陣はムカデの足元に広がりムカデを囲い込む。


今だ。


「氷河領域」


魔法を放った瞬間、ムカデを下から順に凍らせる。凍りついていくムカデは暴れることができなくなり、その場で動かなくなる。ムカデは全身凍りつき完全に動きを止める。


全力の氷河領域。


魔力を一気に使い疲れを感じる。


完全に凍らせた筈だが頭の方から氷が破壊される。


魔法陣から遠いほど、高さが高いほど氷河領域は弱まっていく。頭の方は下に比べて強度が高くない。次第に全身の氷を解くだろう。


その前に倒す。


そう考えた俺は加速する。


そして、大きく跳躍して近くに生えていた木の枝に飛び乗り、そこから更に高い場所、ムカデの顎部分を目掛けて跳ぶ。


ムカデからの攻撃はない。後は振り抜くだけ!


ムカデの顎が目の前に来た瞬間、クロストは大きく剣を振った。


それと同時に魔法を解除する。


ムカデは下から大きく衝撃を与えられ後ろにのけぞると突然氷が消え体勢を崩し、そのまま地面に背中をつけた。


空中にいたクロストは両足をついて綺麗に着地する。


仰向けで倒れているムカデは身体をくねらせて起きあがろうとするが剣を突き刺す。


そして、突き刺した剣に魔力を込めて


「氷結斬派」


を放つ。突き刺した剣から氷が勢いよく飛び出してくる。


身体の内部まで氷が突き刺さったムカデはそのまま力尽きた。


ムカデから降りて剣を確認する。剣は氷結斬派を使っても折れることなく刃がダメになっているということもなかった。


「よし。」


問題ないことを確認して剣をしまう。


もうここに厄介な魔物が現れないことを願いながらアサヒの元に戻っていった。

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