第10話

魔石を破壊した剣はそのまま狼の頭を貫く。狼が動かなくなったのを確認して、すぐに狼から剣を抜いて剣をしまい、魔獣の魔石のかけらを拾い集める。全て拾い集めた魔石のかけらをポケットにしまい、


「よし。」


と一言呟いてアサヒの方を向く。アサヒとの距離はかなりあった。


こんなに走ったのか。


ひたすら前に走っていたので気づかなかった。


俺はアサヒの元に戻りながら倒した魔物を見る。


一撃でしっかりと魔物の首を刎ねることができている。


「悪くないな。」


斬れ味はかなり良い。それに魔物の攻撃にも耐えられるだけの耐久もある。魔剣と呼ばれる剣と比べたら劣るが人が作れる剣の中ではかなり上位のものだ。


あそこの店でよかった。案内してくれたアサヒには感謝だな。


そんなことを考えながらアサヒの元に着く。


「終わり。魔物に襲われてないか?」


と聞く。


どこにも怪我は見当たらなかったが念のためだ。


「はい。私は大丈夫です。」


「よかった。」


戦闘中、アサヒのことをあまり考えないようにしていたため怪我がないことを聞けてとりあえず一安心だ。


「あの、クロストさん。今の戦闘って魔法とか使ってましたか?」


「いや全く。」


魔法には身体強化できる魔法があるとか聞いたことがあるが水属性の魔法で使えるようなものは聞いたことがない。


ちゃんと水属性しか使えないと言ったのに。


「魔法なしであの身体能力。」


「剣士なんだ。あれくらいはできて当然だよ。そもそも俺にとって魔法は相手を止めたり、牽制に使ったりする為だけのものだからな。」


元々はスキルによる加速があったので誰よりも速い攻撃が可能であったがそれができなくなってしまった。


スキルなしでも魔力よりも身体強化の方が高いが広範囲に高火力の出せる魔法の方が使い勝手がいい。氷の剣も斬れ味良くないし、すぐに折れるしで見た目だけだったし。


だから、魔法ばかり使ってしまっていた。


「魔法がサブウェポンですか。」


「そんな感じだ。」


剣だけならば一対一では負けない。魔法さえなければ勇者とだって負けることなく引き分けに持ち込むことができるだろ。


「最上位魔法使いレベルの魔法がサブウェポンって本職魔法使いの私はどうすればいいんですかね。」


新人の冒険者の自信を削いでしまうのは先輩冒険者として良くない気がする。


「大丈夫だよ。俺も最初から魔法が使えた訳じゃなかったし。最初の方は初級魔法すら出せなくて、師匠に怒られたくらいだからな。」


魔法適性のないと思っていた俺によく魔法を教えようと思ったなと今考えてみても師匠の考えはわからない。


「そうなんですか?」


「元々剣一筋だったけど、師匠が俺に魔法を教えてくれてそれで今くらいまで成長したんだ。」


師匠は元気にしているのか。そもそも100年経った今でも生きているのか。


「私も強くなれますか?」


心配そうに聞いてくるアサヒに、


「勿論だ。魔法だけを極めれば魔法なら俺よりも強くなれる。」


と伝える。


魔法であっても身体強化であっても練習によって強くなる。例えスキルがなくても、この時代ならばどうにかなるだろう。


「私、頑張りますね。」


と笑顔でそういうアサヒに


「ああ。頑張れよ」


と返した。


「さて、そろそろ魔石のことも確認したいし、魔獣のいた場所に行かないとな。」


「そうですね。」


と歩き出す。


魔石の話はさっきした通りであるが、利点もあって魔石は魔道具を作るのに利用されているのだ。


魔石には魔力が込められている。そのため、魔力を使うような道具、魔道具を利用するときの魔力供給源となることが多い。


採取するためには周囲に生まれた魔獣を倒す必要があり、その難易度はかなり高いものとされ入手困難なレア素材とされている。


魔石は貴重なので本来ならバラバラに砕く必要はなかったが一撃で倒すのにはあれが最適だと思ったので破壊してしまった。


魔道具は別に作る予定はないので破壊しても問題ないだろう。


最初にあった魔獣の魔石も拾っておく必要があったが、いち早く状況理解をしようと拾うのを忘れていた。


それが原因で今の魔獣が生まれていたら、他にも魔獣が現れている可能性がある。


複数体の魔獣。その量次第では俺の手に負えないかもしれない。


自分のミスが生んだ事態なので、怪我人が出る前にどうにかしたい。


「さっさと調査を終わらせるぞ。」


と歩くペースを上げた。

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