第3話

何故なのか、このところ鏡の女と意識を共有し始めている。

被虐的嗜好が自分にあるなんて想像したこともなかった。でもこうして私に意識があるときはあんな行為を受け入れているのが自分だなどとは理解できない。

それに彼にも。おぞましさを感じながら、もう一人の自分を抱く彼を思い浮かべ、いたく冷静に受け止め、何故か愛しいとすら思った。少し、妬ましかった。

嫉妬して自分もそうあろうと、変な努力をしてみようとしたこともあるが、本能と結びついたことなので無理だった。それに彼もそんな性癖があるなんて微塵も匂わせたりしない。本当に、あれが夢での出来事であるかのように。

考えるのを極力やめようと思った。それより、凄惨と言えるような行いに体を任せているときの、自分である彼女の蕩けそうな姿態が妙に目に焼きついて離れない。あの姿を見るのが大好きだった。そのとき感じている苦痛は他人事のように遠く、自分にみられているのを想像した興奮が上回っていた。

私も彼女を犯したい。彼女を引き裂きたい。すべて詳らかにしたとき、中に残るものが何なのか見て確かめたい。そうしてもいいような気がする。許してくれるような気が。


彼と結婚するかもしれない。

この先どうなるか判らないけど、それが揺るがない未来だと確信めいたものを感じている。

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霧の中の鏡 晴れ時々雨 @rio11ruiagent

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