サプライズ

夏伐

サプライズ

 俺は悩んでいた。

 中高一貫校、目をつけられた時から終わったと思っていた。今日も今日とて二学年上の奇人である先輩に無理難題を吹っ掛けられていたのだ。

 今日のお題は「部屋を飾りつけろ!」だ。ただし、サッカー部の先輩の親友さんが満足できるようなパラダイスにしろ、と言った。まるで意味が分からない。

 仕方なく、ボールは友達だよね、とサッカーボールを集められるだけ集めた。

 俺の所属している部活は奇人の先輩が立ち上げた、なんでも部。

 そこらのラノベのように生徒から依頼を受けて、それを解決するというとんでもないものだ。基本的に無料でこき使えるなんでも屋。

 問題はお題だと用意された教室とこのサッカーボールで楽園を作らなければならないのだ。もちろん時間制限がある。明日の休日までに何とかしなければならない。

 スマホで色々調べた。結果、旅行に行きてぇな、という現実逃避しか得られなかった。

 次に考えたのが、おもてなしの心だ。

 う~ん。パラダイス、パラダイス、ゲストである親友さんを楽園へ。

 後に気づくことだが、俺はこの時疲れていた。


「さて、後輩よ」

「はい! 先輩」

「これが君の考えたパラダイスか?」

「そうです。おもてなしの心! ホストクラブの画像を調べて用意しました!」


 サッカーボールを器用にピラミッド型に並べてシャンパンタワー代わり。

 人工芝を購入してきて教室の椅子を緑のソファのように!


 サッカー場と教室、夢のコラボレーション! シャンデリアのようにキラキラと園芸用のライトが教室を照らしている。


 ホストクラブって言っても漫画の画像ばっかり出てきたけど!


「今日のゲストはパラダーイス!!」


 俺は両手を広げて先輩に満面の笑顔を見せた。


「よし、今日は休みをやろう」

「はっ、ありがとうございます!」

「いいか、私の出したお題は誕生パーティーのために飾りつけろ、だ」

「はぁ」

「君の中でどうやってパーティーがパラダイスになったのかは聞かない。一週間休みをやる。休め」


 俺は先輩に言われた通り、しっかり一週間休んだ。

 悩みもなく、健やかに過ごして、あの時は本当にいかれていたんだな、とため息を吐いた。休むことの大切さを思い知った。

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サプライズ 夏伐 @brs83875an

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