後編 青春のスタートテープを切れるか?
下校中、女子高生たちが恋バナに花を咲かせる中、2-a組の教室で2人の男子高校生は、なんだかよくわからない会話でラフレシアを咲かせていた。
「平間、お前はどんな部活が作りたい?」
「そうだな〜宮田、テニス部とかどうよ」
「確かにテニス部は爽やかさトップ!まさに青春王子。だか、すでに部活あるだろ」
「その〜、えっと〜、なら男女混合テニス部とか?」
「はぁ〜?どうせ部活に乗じて彼女ゲットーみたいな浅はかな考えだろ。
俺たちみたいな運動神経普通で目立たないやつは女子からしたら透明人間だからな。
どうせ卒業のメッセージボードで後輩から“先輩のおかげでうまくなれました”とか“一年間ありがとうございました”とか無難で当たり障りのない言葉書かれるだけだぞ。」
「うっ妙にリアルで想像しちまった。
なら宮田は、どうなんだよ」
「男子混合水泳部!」
「欲望に忠実!でも、結局男女混合テニス部と同じ運命たどるだろ」
「たっ確かに、桃色の欲望で俺たちが情けないやつだと言うことを失念してたぜ。
却下か〜。くっそー、次、平間」
「性欲と青春を一旦切り離して考えような?
ん~~~、俺は動物とか好きだし、生物部かな」
「可もなく不可もなく。なんか物足りないなぁ。 バイオ生物部で」
「それ意味、生物生物部になっちゃうから…。なんか良いもの思いつかないなぁ。とりあえずアイディア片っ端から言ってみるか」
「そうだねぇ」
「酒池肉林部!」
「却下!んーと、カブトムシ研究部」
「却下、宇宙銀河パトロー部!」
「何だそれ…、却下!えーと、ヤゴ研究部」
「お前、カブトムシとかヤゴとか小学生か!八門遁甲研究部!」
「木の葉の禁術だろ!そうだなぁ〜、読書部」
「却下!南国風部!」
「なんの部活だよ!はぁ~~。声はりすぎて喉が痛いわ。そんなボケないでくれよ」
「いいじゃん、いつもやってることだろ平間ごん。んっ!!…そうかそれがあったか!平間坊や!」
「ごんか坊やか統一してくれ…。でっ、それって?」
「お前がツッコミ、俺がボケ。つまり、お笑い研究部だよ!」
「ほう、なるほど。確かにいつもやってるしな」
「さぁ、想像してみな!自分が体育館のステージに立って全校生徒に漫才している姿を。多分とてつもなく恥ずかしいだろう。しかしそれを凌ぐ達成感と拍手喝采、ついでに血と涙があるに違いない!これは、日々のまったく無駄な会話が青春に昇華される俺たちにとって最高の部活だぜ!」
「ものすごい説得力だ。わかった。やろうお笑い研究部!」
「あぁ、これで決まりだな。相方よ。では、職員室に行ってきて部活作りの書類をとってくるがよい。」
「わかったぜ。…あっ相方。待っとけよ!」
「いくらでも待ってしんぜよう」
「いちいち癇に障る野郎だな」
平間が帰ってくるまで、宮田は妄想に浸っていた。お笑い研究部の漫才が大成功し、自信がついた二人はお笑い養成所に入る。その後、ボンボンポッチルンパッパというコンビ名を名付け、紆余曲折ありながら34歳でやっと売れてる芸人の仲間入りをする。そして、自分の人気が大爆発。じゃない方の相方になってしまった平間に対して申し訳ない気持ちになる…。そこまで妄想し終えた。
「…おい宮田、話聞いてるのか?半目でニヤニヤしやがって気持ち悪い」
「えっ?なんだって?」
「だから!部活作るためには、5人は必要なんだって!」
「マジか、俺はそんな人的財産もっとらんぞ」
「友達のこと人的財産って言うなよ…。俺の友達はお前以外、もう入部しちゃってるからなぁ」
「人手を集めなきゃならないのか。急に面倒くさくなってきたな」
「俺も見ず知らずの人と話したくないしなぁ」
「…この話は、一旦放置熟成させるということで。日もだいぶ暮れてきたし帰るか平間」
「…そうだな」
日がだいぶ傾いて、長くなった影を引きずりながら宮田と平間は、帰路についていた。
「…結局、俺たちには、青春は難しいのかね平間」
「そうかもな。でも、俺こうやってお前とくだらない話してる時、実は一番楽しい…かもしれない」
「なにツンデレしてんだよ。いけブルーアイズ、平田に滅びのバーストストリーム!!!」
「くそっビッグ・シールド・ガードナー!」
……
くだらない事に消費される無駄な日常、なんのイベントも発生しない。いつか思い出すなら恥ずかしくて聞くに堪えないもの。だけど、どこか懐かしくって切ないそんなもの。だから、実はこれも青春なんだ。多分、少し?いや絶対、そういう事にしておこう。
おわり
青春のスタートラインまでが遠い @ukon11
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