第2話 えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!

--- プーン、プゥゥーン。


「ん?シッ!シッ!」


翌日(その日の夜)

彼は、耳元に響く不快な音で目が覚めた。

自身の身体にハエにたかっている。


「んあぁーー!もう!!シッ!シッ!」


---夢じゃなかったか、、、。


残念に思いながらも、彼は頭の中で状況の整理をはじめた。


とりあえず、自分が異世界転生を果たし

「剣と魔法のファンタジー」観光ツアー真っ最中なのを前提においての状況整理だ。


まず、身体は腐っていて触覚は殆んどない。

嗅覚は無いが、音は聞こえる。

ちょうどVRゴーグルを被ってゲームをプレイしている感じだろうか、、、。


しかし、問題はあの『神の光』を受けた時だ

ものすごく痛かった、、、


「ゾンビかぁ、、、」


そう、人間ではないにしろ、普通のモンスターに生まれ変われていれば、ワンチャン

「ぼく、悪いスライムじゃないよ」的なノリで、美女と冒険したり、ペットにしてもらえたりと出来たかもしれないが。。。


しかし、彼は腐っている。


それはおろか、人間に近づくことさえ叶わないだろう。


しかしまずは、当面の安全の確保だ。


幸いこの肉体は食事を必要としなさそうだ、

起き抜けの喉の渇きもなかったので、水さえも要らないのだろう。


(人を食べる設定じゃなくてよかった、、、)

それが唯一の救いであった。。。


この雑木林や、もっと深い森に潜んでも良いのだが、、、。

どうにも他のモンスターに遭遇するのが少し怖い。


大抵のオープンワールド系のゲームでは

『アンデットとモンスター』は敵同士で戦っていたりするし、

この世界でもそうかもしれない。

(それは一度、弱いモンスターで試してみなきゃな。。。)


「とりあえず、、、墓場かな?」

アンデットが居ても不自然じゃない場所。

流石に墓場を荒らしてまで、退治にくる『冒険者』はいないことを信じたい。


----。


「えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!...」

彼はわざとらしく口でそう言いながら、墓場を探して走り続ける。


前世では体重が90キロを超えていた。

とても走れる体型ではなかったし、運動なんか大嫌い。


唯一、まともに走るのは、

コミケの『始発ダッシュ』の時くらいだった。


でも、この身体は疲れない、

永遠に全力ダッシュができる。


ちょうど最近『競争馬を美少女に擬人化したゲーム&アニメ』にハマってた彼は

「少しランニングとかしてみようかな、、、」

などと、コーラ片手にポテチを食べながら

考えていたりしたこともあったほどだ。


そう彼は今!

『走る喜び』に目覚めつつあった!!


「うふふふふ、今ならウサイン・ボルトにも勝てるぞ」


あえてツッコむが、、、

いくら、永遠に疲れないといっても、

短距離でスポーツ選手に勝てるもずはない。。。


しばらく走ると、廃村のような所を見つけた。

「村がある所に墓場あり」

人が近くに住んでいない墓場があれば最高であるが。。。


しかし、こういった所には、モンスターも居付いてる可能性も高い。

彼は慎重に村に入り探索を始めた。


村は結構な広さがあった。

建物の数からして数百人規模の人が住んでいたはずである。

しかし人が誰もいない、、、


(戦争や略奪があったにしては建物もキレイなままに残っているし、、何が原因なんだろう、、)


村人が居なくなった理由は知らないが、彼にとっては好都合だった。

いくら自分がゾンビで墓場に住むことが安全だとしても『夜のお墓』はやっぱり怖い、、、。


人のいない廃屋に住めるなら願ったりである。


彼はなるべくキレイな物件を探した。

前世での住まいは『築60年近く』のボロアパートだったので、

せっかく住むならキレイなほうが良い。


『ふふふ〜ん♪どの家にしよっかなあぁ、、』


『あっ!あの赤い屋根の家カッコいいな〜、あっ!あのお家は窓がオッシャレ〜』


ノリノリである。。。


そう、物件は“よりどりみどり”であるし、

何しろ家賃がタダだ。


生前、趣味(同人グッズやゲームの課金)にお金をかけるため、

家賃を抑えボロアパートの住んでいた彼にはまさに夢の様な時間である。


【※彼は会社を辞めて2年間貯金でニート生活をしていた!!】


「よし! ここにしよう!」


二階建ての庭付き一軒家、

彼はそこを当分の住処にすることを決めた。


その日、彼はフカフカのベットで眠りについた。

(カビの匂いを感じないのは幸いだった)



----------次話!! 未知との遭遇⁈(仮)

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異世界転生で『生まれ変わった!』と思ったらもう既に死んでいた件(仮) 山原 もずく @mozukune-san

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