異世界転生で『生まれ変わった!』と思ったらもう既に死んでいた件(仮)
山原 もずく
第1話 腐ってちゃ異世界生活が楽しめないぞ??
痛てて、何があった?
確か、、、そうか、確か俺は、、車にはねられたのか??
くそう、、、気を失ってたんなら
病院で処置されるまで起きなければ良かったのに
でも、思った程、痛みは感じないな、、
というか、だんだん気持ちよくなってきた
身体はぜんぜん動かないが、
まるで冬場に湯船に浸かっているような「幸福感」彼を包んでいた。
(あったけぇ...。ん?!ま、まさかコレ!全部俺の血かっ??)
(いや、この量はヤバいって!ねぇ!早く救急車ーっ!!誰か~)
そう心の中でプチパニックを起こしていると
遠くから救急車のサイレンが聞えてきた。
ああ、良かった、、、。
このまま人生積んじゃうかと思ったよ、、、。
よし!退院したら、人生まじめに生きよう!
目的もなく中途半端な人生だったからなぁ、、、
何か人の役に立つ事をして、
立派に誇って死んで行ける人生を目指そう!
決めたぞ!俺は生まれ変わるんだ!
事故の衝撃で「ドーパミン等々」が過剰分泌された彼の脳内は正にお花畑だった。
身体は痛みを感じるどころか、なんとも不思議な『高揚感』に満たされ『今まで何度かしては失敗した』であろう“改心”の決意を再びするのであった。
そんな愉悦に浸りながら、
彼の意識はゆっくり遠退いていく。。。
---。
「、、、ん??」
そんな彼が再び目覚めたのは夜、辺りは真っ暗だ。
「あれ?病院じゃない??よな?」
そう、彼は気を失った時と同じ体制で地面に横たわっていた。
慌てて身体を起こそうとすると
『バリッ』っと地面から何かを引っぺがす音が聞こえた。
「へっ?」満月の異様に明るい光が照らし出したのは、おびただしい量の「血の跡」しかも乾いて固まっている。
(え⁈俺の血?、、、だよね? へ?放置されてたの?俺、、、)
そう、其処は病院のベットの上ではなかった。
それどころか、先ほどの事故現場でもない、あきらかに見知らぬ場所だ。
理解できない状況を必死に呑み込もうと
立ち上がり辺りを確認するが
やはり見知らぬ場所である。
周りに建築物もないし
ましてや人っ子ひとり見当たらない。
「そういえば、俺、怪我は、、、?」
先ほどあれだけ大量に血を流していたのである、平気な筈はない。
どこを怪我したのだろうかと
自身の身体を確認し始める、、、
と同時にパニックに陥るのだった。
「わわわ!!!」
怪我どころか、腕がただれている!
いや、腐っている⁈
にわかには信じられない、
いや発狂してしまう様な状況だろうが、、、
あまりにも「現実離れ」した事態に
彼はしばらく呆然となっていた。
---。
「はっ?!」
自失の後、再び思考を再開する彼。
「これは、まさか、未知のゾンビウイルスにでも感染したのでは、、、??」
そう、終末パニック映画、とりわけ『ゾンビもの』が大好きだった彼が、その考えに行きつくのは至極当然のことであった。
ゾンビ系海外ドラマが流行った時も、彼はその殆んどを網羅していた。
まぁ大抵は「途中からゾンビ居ても居なくても変わらなくない?」と思い飽きてしまうのだが。。。
そういう彼の考察は『半分正解』で『半分間違い』であった。
彼は死んで、異世界に転生していたのだった。
剣や魔法の世界!いまや誰もが羨む「現代ファンタジーの定番」の世界に。
しかし、『異世界転生ものばかり』なことに嫌気がさして、最近はアニメやラノベをめっきり観ていなかった彼の脳は、まだその考えには至っていなかった。
---。
しばらくすると、遠くにいくつか明かりが見えてきた。
「あれは、、、松明??」そう、物資が底を尽き、文明が崩壊し始めた設定の映画では、明かりは松明と相場が決まっている。
「たぶん、、、見つかるとヤバいよなぁ」
自分が、超人的な力で全力疾走して走るタイプのゾンビなのか、それとも「アー、アー」言いながら頭に一撃くらい終わってしまうタイプなのか、
まだ判断がつかない今の状況では
なるべく『人間』との接触は避けたい。。。
というか、自我が残ってる状態で「人襲ったり」とか絶対無理だし、、、。相手が銃とか持ってたりしたら絶対勝てないもんなぁ、、、。
とりあえず、彼は隠れてやり過ごすことに決めた。
ザッ、ザッ、ザッ、カシャ、カシャ、、、。
足音と共に金属の擦り合う音もする。
金属の防具でも着けているのだろうか
だとしたら結構な重装備だ。
遮蔽物があまりないので、彼は目覚めた時の様に地面に伏せて隠れていた。
周りには結構な雑草も生い茂っているので、自分の視界も遮られるが、これならそうそう簡単には見つからないだろう。。。
---近づいてきた「足音」が近くに来てピタっと止まる。
そして突然、女性が大きな声で叫んだ。
「皆さん!注意してください!おそらく、ここら辺に潜んでいるはずです!!」
(え!ばれた?!)突然のことに戸惑う彼
【正(ただし)君、享年30歳、童貞】
(もしかして、匂いか?!)
そういえばこの身体、痛みがないだけじゃなく、鼻も利かない。
彼がプチパニックを起こしていると、再び同じ女の人が叫ぶ。
『神よ!清浄なる光で迷える我らをお導きください、、、ホーリーライト!! 』
--------パァァァ!!--------
芝居じみたセリフの後、辺り一面が急に、昼間の様に照らし出された。
(あちちちっ!)
まったく痛みを感じなかったはずの肉体に、急に猛烈なヒリヒリ感が走る。まるで急に熱いお湯をかけられたようだ!
(とにかく、あの光はヤバい!!逃げなきゃ!!)正くんは思わず駆け出していた。
『居たぞーーっ!!逃がすなーーっ!!』背中から複数人の男の声。
必死に逃げながらも、状況確認のため一瞬振り返る。(なんだ?!あの人たち??)
正を追ってくる集団は、西洋風の甲冑を着た者や、大きな鍔の帽子に杖を抱えたべたべたな魔女の恰好をした者など、まさに仮装集団だった。
(やばいっ!!普通じゃない!絶対ヤバい人達だ!)“本格的なレイヤーさん”達に追いかけられながら、必死に走る正。
幸いにも、その距離はどんどん遠ざかっていく。
人間の時と「速力」は変わっていなかったが、全力疾走しても『息切れ』が起こらなかった。
その後1時間くらい走っただろうか、、、
途中からランナーズハイの様な状態になり深く考えてはいなかったが『取り合えず安全だろう』と思える場所についた彼は、再び頭の中で状況の整理を始める。
えっと、、、とりあえず、俺がゾンビで。あの光は、、、聖なる、、魔法??
そんで、ファンタジーな格好の人達に追いかけられて、、、
まだ、確信は持てないが、それらの状況は此処が「ファンタジーの世界」であることを物語っていた。
いや、でも、俺、ゾンビだし、、、
異世界転生?っていうか、、、
そもそも生き返ってないよね、、、
普通、転生したら、チート能力で無双したり、美女と冒険できたりするはずだけど、、、
(この身体じゃ無理じゃね??)
「神様に異議」を唱えたい彼だったが、先ほど『神の光』によって酷い目にあったので、抗議する気も起こらなかった。
もし神がいたとしても、どうせ『ろくでもない奴』なのだろう。
空が白んでくると、だんだんと眠くなってきた。
ゾンビはやっぱり夜行性かぁ、、、まぁ、前世もニートだったから変わんないけど、、、てか死んでても眠くなるんだなぁ
ウトウトしながらも、彼は“ねぐら”を探す。
まだわからないが、もしかしたら「太陽光」を浴びたら消滅するかもしれないし、またパリピ共に追っかけられるのも勘弁だ。
しばらく彷徨った後、程よい雑木林を見つけた彼は、ゾンビとして始めの眠りにつく。
起きたら病院でした!っていう夢オチだったらいいなぁ、、、
その日彼は夢をみた、異世界に転生して美女と一緒に冒険する。素敵な夢だった。
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