それじゃあ好きです

シヨゥ

第1話

 ぼくと彼女の関係をなんと表すのが正しいのか。

 腐れ縁。ビジネスパートナー。同級生。幼馴染。その時々によってぼくらの関係性は微妙に変化している。それでも変化は長続きせず、けっきょくのところ幼馴染が適当な気がする。


 今日も彼女に呼び出されて彼女の自宅へとやってきた。今の関係性は発注主と請負業者。いわゆるビジネスパートナーだ。

 彼女が開発中のゲームソフトのリリース日として告知した迫る中、進捗が芳しくなくて救援に呼ばれた次第だ。体験版のリリース前にも少し手伝ったし、開発のバージョンが上がるたびにテストプレーヤーとして遊ばせてもらっていた。そんな経緯もあり僕に話を振ったのだろう。まぁ幼馴染として割安でこき使えるというのもあるだろうけれども。

 作業は黙々と進み、遅れを順調に取り戻していく。ようやくオンスケになったところで軽い休憩となった。出前のピザの到着を待ちつつ、雑談となる。そこでぼくは思い切って、

「ぼくたちの関係って何なんだろうね?」

 と尋ねてみた。きょとんとした顔とはこのような顔をいうのだろう。彼女は驚きつつも、

「彼氏彼女?」

 と返してくる。これにはぼくがきょとんだ。

「あれ? ちがった?」

「告白したことあったっけ?」

「ない……と思うけど」

「ぼくも告白されたことはないと思うけど」

 彼女は腕組みして首をひねり、

「たしかに」

 とうなずく。そして

「それじゃあ好きです。付き合ってください」

 と告白してきた。なんというメンタルの強さ。そう感心しつつ、

「まぁいいけど」

 ぼくは告白を受け入れた。なんというムードのない告白シーンだろうか。これがゲームのシナリオだったら落第点だろう。

「それじゃあ彼氏彼女ということで」

 ここで話は終わりとばかりに彼女は握手をするとそっぽを向く。その瞬間、髪の隙間から真っ赤な耳がちらりと見えた。素っ気ない告白は恥ずかしさを隠すためだったのだと理解した。


 ぼくと彼女の関係は恋人になった。いや彼女の中ではとっくにの昔に恋人になっていたのだと思う。

 もう少し早く気づければと思わないでもない。

 相手がどう思っているのかは聞いてみないとわからない。そんなことを今回の一件で強く意識することになった。

 これからは何がしたいのか。何をしてほしいのか。そんなことを訊くように心がけようと思う。

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それじゃあ好きです シヨゥ @Shiyoxu

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