夢の話
ラーメン大魔王
第1話 夢の話
その日は朝から妄想が湧き出てくるのが止まらない日でした。
と言って別にわたくしに異常が有る訳ではありません。
精神的、肉体的に変化を実感している訳では無いのです。登校する事も、人と会話する事も、支障がある訳では無いのです。
しかしふとした隙に、妄想が捗って仕方がないのです。
例えば、今は魔法少女の夢を見ています。
空を飛ぶ魔法少女達が、不気味な巨人と戦う光景を見ています。
この少女達は、翼が有る訳でも、ジェットエンジンやプロペラが有る訳でも無いのに空を飛んでおり、ビーム兵器を使って戦っております。
しかしその相手となる巨人が、
それは、小学生が、紙粘土でヒトガタの物を作り上げたものが動き出しているような物ですが、その表面、人間で言うならば肌にあたる部分が、筆舌に尽くしがたい程写実的なのです。どことなく生物的な、しかし決定的に無機質なのです。昔動物園で見た象の皮膚を、人工的に再現すると、こんな感じになるのでしょうか。
テレビの画面越しに眺めれば、単なるヒトガタの怪獣だと思うのでしょう。しかし実際にこの目で見れば、
その、操り人形のような動きよりも、魔法少女の攻撃に耐えて反撃する姿よりも、トンネルを吹き抜ける風のような唸り声よりも、切実に不気味なのです。
二本足で立ち、二本腕で戦っています。
その動きは、どことなく稚拙で、幼児がお母さんを求めているようでもあります。
しかしその歩みは、確実に街を破壊しており(実際に街が在るかどうかは考えません)
その腕は確実に魔法少女を追い詰めているのです。
それはそうでしょう。
重いとは、大きいとは、そのまま明確なる強さに直結します。わたくしは例え拳銃を持っていたとしても、平均体重が160キロもある大相撲のお相撲さんに勝てるとは思いません。
そして大きく、重たいとは、そのまま耐久力に直結します。
魔法少女達の放つ攻撃は、確実に巨人を削ってはいますが、しかし巨人の動きが鈍ると
運動にあまり興味の無いわたくしが、動きの鈍った状態と云うものを上手く想像出来ないだけですが。
魔法少女達は、高く飛び上がり、低く駆けて行き、跳ね上がるように切り裂き、包囲するように砲撃を加えています。
つまりゆっくりと、巨人を中心として円周を描くように、ゆっくりとした軌道で移動しつつ砲撃を加えていき、巨人が怯んだ隙に一気に突撃して格闘戦に入るのです。
この時、加速を優先する為に、駆け降りる軌道は取れません。地面に激突してしまいます。
近接戦闘に於いては、入るのも大事だが抜けるのも大事なのだ、と昔言われた事が有るので、妄想もそんな形になります。確かに巨人の、あの大腕に捕まるのは、恐怖でしょう。
しかし埒が明きません。もうすぐ学校に着いてしまいます。
十分戦いましたし、ここは巻いていきましょう。
魔法少女達は、巨人を十分に削り切れない所をみると、賭けに出ます。
二人の、あれ三人でしたか、まあ四人で良いでしょう。
みんなの力を結集させて巨大なビームサーベルを作り、一刀両断にする作戦にしました。
失敗すると一気に苦しくなる作戦ですが、持久戦で巨人に勝てるとは思えないので、まあ妥当な線でしょう。
少女達が何か言っています。
前口上でしょうか、仲間を落ち着かせているのでしょうか、呪文でしょうか。
アニメの声優には詳しく無いので、お笑い芸人と女優とアイドルとクラスメイトの声を当てています。
すると魔法少女達の力が溢れ出る奔流となって、天を貫く巨大な柱と化しました。
「 ・ ———————!!」
技名はお好みで。
巨人よりも、遥かに長大な一撃です。少し効率が悪いのではないでしょうか。もう少し短くても良い気がします。まあ、
振り下ろされたその一撃は、的確に巨人の頭蓋を粉砕し、その巨体を両断しました。
街にも少なからず被害が出たのは、まあご愛敬と言う事で。
その一撃に全てを懸けたのでしょう、魔法少女達は、肩で息をしながら、ゆっくりと降下して行き、しかしその顔は輝かしい笑みに
「おっはよう、元気?」
おっと学校に到着していたようです。
夢の話 ラーメン大魔王 @Eneruga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夢の話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます