俺、狙われる
「なぁ、お前すげぇな」
食卓がどんどん鮮やかになっていく。
「当たり前ですよ?」
「いやー、久々のちゃんとした飯!」
「お口に合うかは分かりませんが、どうぞ」
「いただきます!」
「いただきます」
「やばい、成仏しそう」
「しても構いませんがもう魂は戻せませんよ?」
「比喩だ!わかったか!」
「はぁ、そうですか」
「これも美味い。俺さなんかこう味覚的じゃなくてなんだろ、この命名し難い美味さの飯を食べるのは人生初だからさ。なんか感動しそうだよ」
「お、お世辞ですか?お代わりなら自分で継ぎなさいよ?」
「だぁ!いい雰囲気を壊しやがって!」
「でもそうですね、私達女神も食事は野生のボアとか山菜とかでしたからね、こうして調味料?とやらの溢れてる食事はまた良きですね」
「そんなもんか?女神って食べない存在じゃねぇの?」
「食べますよ。神として時に生物を殺めそれを取り入れ───」
「それお前も適用なのか」
「のようですね、失礼しました」
女神の自爆に微笑んでると携帯が鳴った。
「ん?電話か」
「どうされたのですか?」
「いやー、食事中だ。後でにするよ」
食事をやや駆け込み気味で食べスマホを開くと通知が来ていた。
『やぁ、金上だよ!通話しよう』
ダンっ!!!と床にスマホを叩きつけようとした所で身体が固まった
「行動制限もかよ!!まぁ助かったけども」
「どうかされたのですか?」
「あのな、さっき言ってた家に来ないか野郎から通知が来た」
「あら、仲のいいこと」
「バカか、教えてない相手から通知が来るはずねぇだろ」
「そうなんですか?」
「いいか?お前今から前世の俺の友達の家にすぐ行けるか?行けないだろ?そういうことだよ」
「では何故来たのですか?」
「だからスマホ投げそうになったんだよ。とりあえず打ってみるわ」
『なんで知ってる?』
すぐミタヨー通知が来た。
「きもっ、真面目にキモイ」
「うんうん、来た文面に即対応出来るのはいい事ですよ?」
「良くねぇだろ。やらないといけないことすっぽかして見てるって事だぞ」
『簡単さ、帰りから君を付けて家から出ている電波を拾ったのさ』
「悪質なストーカーだろ!」
「好かれてますね」
「好かれるならあんな───」
「センシティブですよ?」
「だぁぁ!!!とりあえず!どうすりゃいいのさ」
「見なければいいのでは?」
「あ、そっか」
「アホ、なんですか?見たくない情報なら見なければいいじゃないですか」
「それもそうだよな、なんか毒されてたわ」
「あまりにも酷かったら女神流でしばきますよ?」
「それは追追だな、とりあえずは様子見だ。下手に刺激すると面倒になるから」
「では、お風呂にでも入って来てください。洗い物するので」
「あぁ、着替えとかある?」
「買い物袋にありますよ?」
「おーこれか、まぁどれでもいいや」
脱衣場の鏡で改めて自分を認識するがなんとも複雑である。45歳無職の自分から見れば美幼女だ、なんなら連れて帰りたい衝動に駆られるかもしれない。だが小学二年生の自分から見れば自画自賛できる程度には可愛いで終わる。それに反応してくれる─────
わっっ!センシティブ!!
「はぁ、でもアイツすげぇな、スマホの設定ずっとやってたはずなのに飯も出来てるわ風呂も湧いてるわ」
シャワーに手を伸ばすが届かない。
「くそっ、小さかったんだ」
風呂のヘリに足を乗せてシャワーヘッドを取りジャンプして降りる。
「とうっ!ってなにしてんだよぉぉ!やべぇ、脳内ロリ化してんのか?」
「はぁ、風呂入るのも久々だな。髪とかボサボサだったのに今ではこんなにサラサラに……下は────」
「なんでセンシティブ!!!!」
結局1人漫才をしながら洗い終わり全身クタクタで浴槽に浸かる。
「ぷはぁ〜あとアレがあればいんだが。そうだったな、飲めないのか……」
「以前だと風呂浸かると水が溢れてたのに溢れない!なんか複雑だな。あのザパァってのもまた気持ちよかっただがな」
「あぁ、せめてマッサージ機くらいはいいだろ。それとテレビだな。マッサージ機に座りながらのんびり見る休日のテレビは最高だからな」
「前世じゃ自由だったが愉しさで言うと今の方が少し上、またこれも複雑」
「はぁ~染みるねぇ〜古傷とかなんも無いけど。歌でも歌うか?はっはは!なんのジョークだ」
「あら、湯加減は如何ですか?」
「ひっ?!な、なんだよ。心臓に悪いな」
「ちゃんと洗いましたか?」
「洗ったわ。なんの疑いだ」
「いえ、男性は多少風呂に入らなくてもいいと聞いたので」
「どこの情報だオラ。出てこい。ガサツちゃっそうだけど入らないことも無くもない」
「曖昧ですね……でもこんな無垢な子に生を受けたのですから今度はしっかり身だしなみを整えてくださいよ?」
「わかったって……」
「さて、私も浸かりますので少し避けてくださいね?」
「避けるって、俺が出れば」
「ダメですよ、こういうスキンシップも大事なのですから」
「はぁ、ぶくぶく」
体操座りをし水面に口をつけぶくぶくと反抗をしてみるも笑われるだけだった。
女神より長く浸かってやると意気込んだがこうやって布団に運ばれている辺り負けたんだろう。
いつもは夜更かししても大丈夫だがこの時間に眠くなるとは……
いや、しかしスマホで遊びたい!前世では人と話すのが億劫過ぎて数世代前の機種を使ってたが!今は容量が1段階下の3TB!入れたいゲームを入れまくれる!
「ふぁ〜明日も早いので私は寝ますね?」
「仕事か?」
「いえ、ご飯の支度です」
「今更なんだが女神も寝るんだな」
「寝ると言うより、日々入ってくる莫大な情報を処理すると言った方が早いでしょうが、まぁそう言ったところですかね?」
「なんで疑問形なんだ」
「あなたのね────」
「いや、お前さマジで俺なんだと思ってんだよ」
「えっと、────」
「うん、わかったこれ以上はやめよう。俺が泣いちゃう」
「さて、では紫雨音。早めに寝なさいよ?」
「おうよ、お前こそゆっくり休めよ」
さーて、スマホいじるか。
「うげ、通知40件。まぁムシムシ、さーて」
アカウント情報は全て暗記しているから同時起動で引き継がないとダメなデータ以外は全て引っ張り出せた。
「よーし、これで俺のスマホは俺のスマホだ」
最近のスマホは何個もデータを持てるから便利だな
「んー、よーし」
「朝ですよ?あんまり寝てるとそのまま首へし折って永眠ですよ?」
「はっ?!」
スマホを掲げながら見事に寝落ちしていた。
「ふぁ〜よく寝たわ……」
「なんせあなたは3日寝てましたよ?」
「はっ?!」
「嘘ですよ、さて朝ご飯出来ましたよ?」
「ビビったわ……ほんと心臓キュッなったわ」
「ほら、早く席ついて」
「いただきます!」
「いただきます」
「ん?わざわざ砂糖醤油作ってくれたのか?」
「えぇ、調合具合を考えてより低糖質で作れるか研究しました」
「やっぱ卵かけはこれだよな」
「私はどちらかというと味噌ですね、お味噌は偉大ですよ?」
「それは訳分からんわ……」
「分からない人はわからなくてもいいですよ?わかる人にのみ分かるこの感覚があるのです」
「へ、へー」
「ほら、お味噌汁も冷めないうちに」
「ぷはぁー、なんつかー死んだのか?天国か?ってくらい幸せな朝だな」
「もう死にましたよ?それと今が7時30分だと知ったら地獄に落ちますよ?」
「なんで?」
「学校の授業開始は8時20分で家から学校まで30分ですが集団登校ですので7時50分には家出てすぐの花屋さんで待ち合わせですよ?」
「ひぎっ?!まじか!早く飯食って準備しないと!」
慌てて駆け込み身支度を整える。
「ほら、歯磨き忘れてますよ」
「あ、すまねぇ」
投げられた歯ブラシを受け取りながらランドセルを背負う。
「歯ブラシを咥えながら投稿するなんて昭和ですか?」
「昭和でもパンだよ!!あほか!」
ぱぱっと歯磨きを済ませ外に出る
「うわぁ眩しっ」
「ほら、遅刻しますよ?」
「たぁぁあああぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁ」
はぁはぁ、花屋に着くが誰1人としていない。
「置いてかれたのか……少なくとも俺らの時は遅刻してでも待ってくれる優しい班長がいたはずだが」
「おやおや、誰かと思ったら万年さんとこの娘さんじゃない」
「ん?おばあちゃんどうしたんだ」
「ほっほほ、あんたのお母さんとは腐れ縁って奴でね、昔っから良くしてやってんだ」
「そうなのか、ふむ」
腐れ縁?あの女神何者?!
「そんで、あんたは慌てて何処に行くんかえ」
「何処って、学校に」
「おぉそうかえ、んで迷子かい?」
「いや、集団登校って聞いたんだが誰も居なくてな」
「あんたも大変だねぇ」
「ほんとですよ」
「集合場所はもう1つ先のパン屋だよ」
「なっ?!」
「ほら、慌てず慌てず」
ランドセルの輪っかを掴まれたせいで足がふん!ふん!と空を蹴る
「いいかい?焦りたい時程冷静になるんだぞ」
謎の助言をすると今度はすんなり行かせてくれた。
集合場所にはもうみんないた。初対面だがな。
「おっ、来たぞ。紫雨音ちゃんだよね?」
「は、はい」
小6の大将系に話しかけられるがあまりの圧迫感に声がすぼむ
「こら!枝尾!怖がるって言ったでしょ?紫雨音ちゃん大丈夫?」
「ヘイキデス」
「ねぇねぇ、そんなことより時間危ないよ」
自己紹介している暇もなく駆け込みで学校へ向かう。
「はぁはぁ……間に合ったあ!」
「そうね、もうくたくたよ」
「すまねぇな紫雨音ちゃんよ、自己紹介は明日でいいか?」
「お、別にいいぜ」
それじゃぁねとそれぞれの校舎にみんな向かう。
奇数と偶数で分けているようだが、生憎と俺の班に偶数はいない。
下駄箱に着いたからバックから上履きを取りだし履き替えた。
「久々だなぁ〜登校か」
本当は探検したいが時間が無いから急いで教室へ向かった。
「おっす!万年さん」
「こんにちはー!紫雨音ちゃん」
昨日だけじゃ話しきれなかったのかゾロゾロと囲われる
「よーみんな」
ワイワイガヤガヤと群れて無意味な会話を続けていたが即チャイムに打ち消された。
「はーい、って事でね。起立!礼!おはようございます」
みんな揃っておはようございますと言っているが、3人くらい叫んでる奴がいた……
先生が点呼をしている最中、隣のご────
隣のなり───、隣の変人が話しかけて来た。
「やぁ、昨日はどうして無視をしたんだい?」
「寝てた」
「そうかい!早寝早起きは美しさの秘訣だもんね!僕は気にしないよ!」
「なんでお前に寝る時間を気にされにゃかんのだ……」
「で、どうだい?」
「なにが?」
「今夜辺り家に来ないか?」
「遠慮するよ、今日は家電を買わないと行けないから」
「なら僕も同行しよう」
「やだね、ってか呼ばれてるよお前」
「おーい、金上は居ないのか?」
「あ、はい!すまないね先生、つい花に夢中になってしまって」
「あーそういうキザいのはいいから」
「まぁてなわけで、お前とはただの席が隣人ってだけの関係だ」
「僕の読んだ本によると、852パーセントの確率で隣の男女は仲が悪くても想い人同士になるって統計が出たけどね」
「現実と作品の区別もつかんのか」
「つくさ!本ってのは実体験しか書いてないだろ?つまりリアリティー!が沢山なんだよ」
「あー、ハイハイ。わかった」
「なんだね?」
「お前半径500米以内に入るな。なんなら地球の外にでも行っちゃえ」
「照れ隠しかな?いいさ、段々距離を縮めてくから」
「え、最後転校生の万年」
「はーい」
「よしっ、みんないるな」
「そうだな、ここでお前に1つ情報をくれてやる」
「これは友好の証かな?」
「頭大丈夫か?生憎と俺は男にゃ興味ねぇから」
「つまり僕みたいな若々しい男子ならいいって事だね」
「ほんっと……この薬────」
センシティブ!!!
1時間目は体育という事で無事とち狂った金上とおさらば出来たのである。
TSロリとセンシティブノーで知識が時代遅れな女神の日常 @sitanosasori
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