四 怪異の結末

「フゥ……」


 俺は安堵の溜息を吐くと、どこか空気感の変わったその部屋の床へ崩れるようにしてへたり込む。


 これまでいくつもの心霊スポットを訪れてきたが、こうした本物・・に遭遇するのは今回が初めてである。


 まさか、こんな恐ろしいことが本当にあるなんて……これからはもう少し慎重に活動することとしよう。


 だが、今回、大きな収穫もあった……ここまで、無意識にもスマホの動画撮影をしっぱなしにしていたのだ。


 どこまで写っているかは再生してみないとわからないが、少なくとも臨場感溢れる心霊スポット動画は撮れたはずだ。


 これで、今までに上げた中でも最高に良い動画がまた一本UPできる……もしかしたら、これがバズって、俺も一流某チューバーの仲間入りかもしれない。


「……さて、帰るか」


 一息吐いた後、気を取り直して抜けた腰を持ち上げると、こんな危険な場所へ足を踏み入れてしまったことに対する後悔が半分、反面、その代わりに良い撮影ができたことへの満足感半分というなんとも複雑な心待ちで、俺はこの〝白無垢屋敷〟を後にすることにした。


 怨霊が消えたことで、この屋敷を覆っていた不気味な雰囲気も一掃されたらしく、なんてことのない、単なる真昼間の廃墟へと変わった屋敷の中を俺は玄関へと戻ってゆく……先程迷ったのが嘘のように、間取りは単純ですぐに玄関へとたどり着くことができた。


「……あれは、本当に現実の出来事だったのか? なんだか悪い夢でも見ていた気分だ……」


 俺は白昼夢を見せられているかのような感覚に陥りながら、玄関の引戸を開けて太陽の照りつける外の世界へと生還する。


 ……が、その瞬間。


「新婦を放っといてどこ行くの? わたし達の結婚式はこれからよ…… 」


 背後からそんな女性の声が聞こえたかと思うと、白い袖からにゅっと伸びる、細長い腕が俺の首に回された――。


                       (白無垢屋敷 了)

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白無垢屋敷 平中なごん @HiranakaNagon

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