第82話 夏休み開幕
酷暑の体育館で終業式が行われた。体操座りはストレスが溜まるが、スカートでバサバサと足元を扇ぐと随分涼しくなれる。女子校ならこんなセルフスカートめくりは日常茶飯事かもしれないが、共学でこうして涼むことができるのは集会の時だけ男女別に並んでいるおかげである。とてもじゃないが、教室で授業中にやることなんて出来ない。
目立たぬように音を立てぬように慎重にしていたが、横から見ていた担任の先生がやめろと言わんばかりの睨みをきかせてきたので苦笑いで誤魔化しながらやめた。もちろん後から優しいゲンコツと、みっともないからやめなさい、可愛いのに台無しという言葉を頂いた。次からは見られないようにやろうと思う。
そんな苦行の先に夏休みが訪れた。とはいえ明日からも授業のある日々が続くことに違いはないが、朝が早くないだけでかなり気が楽だ。
そんな終業式後の私たちがまっすぐ帰るはずもなく、すぐに前から行きたかったスイーツ食べ放題へ直行した。
私たちを含む多くの高校が終業式ということもあって、着くまでに様々な制服を目にした。
男子の夏場の制服はだいたいどこも同じようなもので、変えるとすればズボンや刺繍といったところだけになる。見た目的にほとんど変わらないのが事実だ。
一方女子はバリエーション豊かに展開可能で、私たちのようなベスト付きから白シャツとスカートだけのシンプルなもの、セーラー服からサロペットスカートまで様々な制服が存在するため、見ただけでどの学校か分かるのである。
もちろんスイーツ食べ放題にも、大学生らしき私服姿のグループから祖母くらいの年齢の方々の婦人会、その中に様々な制服の高校生が椅子を埋めつくしていた。
私たちは人目も気にせずひたすら好きなものを頬張り続けた。ここには生のフルーツからオシャレな洋菓子まで様々な甘いものが揃っている。やはり1番ハマったのはケーキ類で、みんなで端から順に全ての種類を食べ尽くした。こぼすほどの勢いがつかないようにだけ気を配りながらひたすら食べ進めた。しかし私たちの今の格好は真っ白な制服だ。生クリームと違ってごまかしの効かない抹茶やチョコといったケーキでは特に気を遣った。
コンビニデザートで言えば6000円分にはなるであろう甘いものたちを食べ尽くした。誰一人としてシナモンが好きではないため、それが大量に使われているアップルパイには手をつけていなかった。それ以外は好みに応じて様々に食べ進めたが、最後をメロンで締めるのは全員共通だった。一般的にデザートとして家庭で登場するフルーツの中で最も登場率が低いと言っても過言ではないため、食べ放題にあるのなら絶対に食べなければならないという使命感すら出てくるのだ。
お腹いっぱいになった私たちは、気付けばもう歩くことすら放棄してお店の近くのベンチに腰掛けていた。今までにないほど甘いものが食べられて幸せな反面、当面は甘いものを食べたいと思わないような気がしていた。
しかしそれは、30分後にカラオケでパンケーキを食べたことによってすぐに破られた。
夏休み0日目の快晴の空の青い色が紺に変わるまで遊び尽くした私たちは、明日からも学校があるという事実の前にガッカリしていたが、それだけみんなに会える機会があるのだ。
毎日毎日遊ぶだけで夏休みを満喫するよりも、夏の間も一緒に勉強をして学力を向上させつつ遊べる方が私たちにとっては最適だ。だから今日はそんな文武両道の夏の始まりに相応しい遊びの日だった。
この時の私たちは、次の日からも小テストがあることなんかすっかり忘れていた。おかげで全員再テストを受けさせられることももちろん予想していなかった。
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