第75話 SJK素敵な先輩
始業式も終わり、いよいよ高校2年生が本格始動した。奇跡と言うべきか、5人で同じクラスになった。2年生からは文理でクラスが別れるのだが、私たちは全員文系だ。担任の先生は1年の時とは違えど、昨年度も授業でお世話になった女性の先生になった。間違いなく楽しい1年になる、5人みんな心の中でこれからの1年にワクワクしていた。
始業式から1週間の間は、朝早くの授業も放課後の授業もないので気楽な日々を過ごしていた。しかしその期間を過ぎるとスグに現実に引き戻されてしまった。また朝から夕まで多忙な1年間の始まりだ。
少し嫌になっていたが、5人でそんな濃厚な日々を過ごせると思うと楽しみになってきた。
いつもの時間にいつものコンビニで集まり、いつもの通学が始まった。変わったことと言えば自転車だ。私と1人の友人だけはシティサイクル、いわゆるママチャリで通学していたが、2人とも今年からクロスバイクでの通学に切り替えた。理由は簡単で、その方がより早く通学できるからだ。
駐輪場に自転車を止めて時間を見ると、いつもより5分以上早く着いていて早速その効果を実感した。
この日は1年生が学外での宿泊研修に向けて出発する。学校の立地の関係でグラウンドに大型車は入ることが出来ないので、20に近い数のバスが、学校内の車が入れる場所の大部分を埋め尽くしていた。
私たち自転車通学組にはさほど影響はなかったが、電車通学の生徒はバスの間を縫うようにしてこちらに向かってきていた。
その様子を見ていると、私と同じ名前のあの子の後ろ姿を発見した。声をかけようかとも思ったが、友人らしき2人の女子生徒と一緒に談笑する様子を見て声をかけるのをやめた。心の中では行ってらっしゃい、気を付けてね。と保護者のように言っていたが。
その週の金曜日には、宿泊研修から帰ってきたばかりの1年生との対面式が行われ、旅疲れも見える初々しい子達を含めた、今年初めて全校生徒が集合する機会が設けられた。
一連の年度初めの行事も終わり、1年生の授業も本格始動した。
ある日の朝、いつものように教室に向けて歩いていると、駐輪場の1階から歩いてきた女の子に声をかけられた。もう声だけでもわかる、入学式で出会った私と同じ名前の可愛い後輩だ。あの時は気付かなかったが、彼女も私たちと同じく上のレベルのクラスに所属しているようで、私たちと同じような忙しい日常の真っ只中だ。
彼女は偶然にも私たちと真隣の校区にある中学校の出身で、同じく自転車通学だった。
その子は話しかけてきた時こそ相変わらずの笑顔だったのに、朝早いですよねびっくりしました、1年間もつか不安です。と表情を固くしながら初めて弱音を口にした。
私は教室までの短い時間で昨年の1年間のことを簡略的に語った。
全力でやっていれば必ず楽しいと思える日が来る。それを共に乗り越えられる友人にも絶対に出会えると、私の話を通じて伝えられた気がする。踊り場で別れる際の表情は最初の笑顔に戻っていた。
その後も彼女とは学校内で頻繁に顔を合わせたが、いつも同じ3人組で居た。まるで私たち5人組のように。そんな状況でも私を見ると必ず挨拶をしてくれる可愛い存在だ。
自販機前で会った時には先輩らしくご馳走したりもした。
私にとって彼女は元気をくれる存在だ。
同じように、私も彼女が背中を追ってくれるような素敵な先輩になりたいと思う。私でなれるだろうか。
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