女子高生編

第45話 女子高生デビュー

今日は入学式が執り行われる。

クラスは事前にハガキで通達があったのだが、私と2人の友人が同じクラス、あとの2人が隣のクラスとなった。惜しくも全員同じとはならなかったが、隣であればいつだって会える。これからの3年間、みんながいつでもそばにいるということが楽しみで仕方がない。


5人横並びになり、同じ制服に同じカバンと同じ靴、そして同じ髪型で正門をくぐった。

広い体育館に入ると、大量の椅子が並べられていた。来た順に前に座るシステムで、新しい制服を楽しみながらゆっくり来た私たちは真ん中よりやや後ろに座った。

式が始まり、ガタイの良い校長先生が話す。一般的な校長先生の話というのはただただ長いというイメージしかない。しかしこの高校の校長先生の話は長い代わりに本当に面白かった。思わず聞き入ってしまい、15分をかなり短く感じた。

卒業式などとは違うので、式本体は直ぐに終了した。クラスへ行くと、私や友人を含めて総勢40人以上の男女が教室に集まっていた。

担任は赴任して3年目くらいの若い女性の先生だ。


早速と言うべきか、暑がりな私はブレザーを脱いで椅子にかける。そしてブラウスのボタンを解放して袖を捲った。

緊張して微動だにしない他のクラスメイトをよそに、ブレザーの利点を最大限に生かした。この点に関してはセーラー服よりブレザーが好きだ。

ひと通りの入学後のスケジュールの説明が終わるとこの日は終わりだ。私は母と共に担任の先生に個人的に挨拶をした。

先生は全ての事情を聞いていたらしく、今後は私を全面的に支えると宣言してくれた。


私は挨拶を終えるとすぐに正門に向かった。4人みんなが写真のために保護者と一緒に待っていてくれたのだ。

1年前受験生が始まった時には、5人同じ制服を着て同じ学校に通うことになるなんて思ってもいなかった。何度かそうなったら嬉しいなと夢見たことはあったが。本当に私たちはみんな運命的な出会いだったのだろう。

普通にピースで撮った後、5人で一斉にジャンプしている写真も撮ってもらった。女子中高生の記念撮影の定番だ。

今回は通学を想定してわざわざ電車で来た。1駅分先に歩けば繁華街があり、そこには飲食店も立ち並んでいる。ちょうどお昼時だったので、私たちは食べ放題のお店でみんなで昼食をとった。

私はパスタ、寿司、肉など、様々な太りの要因になってしまう食べ物を何も気にせずに次から次へと口に放り込んだ。

他のみんなを見渡しても、私たちは今後も運動を続けていくので平気だと言わんばかりの暴飲暴食を敢行していた。

全員部活動に入る気が全くない上に学校から強制されることもないので、確かに今後しばらくは運動する機会が増えそうである。


次の日、昼まで軽く学校があった。今日はオリエンテーションだ。学校内の施設とシステム、そしてクラスごとの取り決めを今日1日で行う。

マンモス校らしく、トイレや水飲み用給水機が様々な場所にある。今後休み時間に使う機会がありそうな図書館は、丸いホールの2階に位置する。中学校のそれとは広さが比べ物にならない。

とにかく全てのものが新鮮で、かつスケールが大きかった。


残る時間は各種手続きと学生証用の写真撮影、そして次週にいきなり行われる宿泊研修の話だった。

私たちには各種手続きにおいてひとつ重要なことがあった。それは定期券の申し込みではなく、自転車通学の申請だ。

私たちは全員自転車通学する気満々だったのだ。家からは少し距離があったが、最寄り駅には快速や特急が止まる上に他の高校がいくつか隣接しており、とにかく人口密度が高かったことから電車通学を避けたかったのだ。

書類を書き損じてしまい申請自体に少し時間を要したが、結果的に5人全員宿泊研修後からは自転車通学できることになった。


宿泊研修は出席番号順に部屋を割り振られるのだが、私は普通に女子部屋になっていた。一瞬不安が過ったが、友人の1人が同じ部屋なので安心した。

宿泊研修ではわざわざ他県の体育館へと行き、3日間の行動訓練や校歌、応援歌をひたすら覚えさせられる時間が続いた。最初は退屈だったが、応援指導がなかなかに楽しかったのでついついみんなで盛り上がってしまった。

ホテルもかなり豪華で、食事も贅沢だった。朝早く目が覚めたので、ホテルの周りを5人でランニングした。大自然の美味しい空気を吸いながらの運動も本当に楽しかった。


宿泊研修が終わり、次の月曜日を迎える。この日から私は自転車通学だ。いつものクロスバイク、ではなく週末に買ってもらったばかりのスカート巻き込み防止がしっかりついたママチャリに跨り、少し先のコンビニで待ち合わせて5人で自転車通学をした。

今日からは普通に授業が行われる。教科書満載の重たいバッグをカゴに入れるとハンドルがかなり重たくなってしまった。


いよいよ女子高生としての本格始動のときだ。

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