第42話 運命だね

アレから5人で毎日会っていたが、今日はみんなで集まらずに朝から合格発表に向かう。公立の合格発表は卒業後なので直接見に行かなければならない。合格していれば午後からは説明会がある。5人での共通の約束で、もしダメだったら午後3時にいつもの公園に来るようにと決めていた。

5日ぶりにセーラー服を着て、1週間ぶりに高校に向かった。朝イチの時間を外したので若干空いていた。掲示板の前に立ち、まずは私の番号に近い数字を探す。それを見つけたら見間違えないように1つ1つの数字を念入りに確認し、目線を下に移した。


私の番号は見当たらなかった。3回確認したって、私の番号は見当たらなかった。

私は不合格だったのだ。思い返せば英語がダメだったのかも、数学で稼げなかったのかも。考えたってキリがない。車に戻るまでは我慢したが、車が走り出すと私の目からは涙が出てきた。

良かれ悪かれこれが結末なのだ。幸い高校の選択肢はまだ残っている。行った先で頑張るしかない、そう思えた。

家に帰ってセーラー服を脱ぎ、昼食を食べてから3時までひたすらゲームをした。悲しみを早く忘れてしまいたかった。気付けばゲームに夢中になって、2時55分になっていた。

慌てて自転車に跨り、公園まで急いだ。

公園には私一人しかいないかもしれないのに、間に合わせるのに必死だった。


公園に着くと、滑り台に2人座って談笑している。いつもの友人だった。私もそこに走って向かい、ダメだったーと笑いながら大声で報告した。私たちもーと笑いながら2人分の返事がきた。

2勝3敗だったのか。そう思った途端、後ろからあとの2人が公園にやって来るなり言った。

ごめんね遅くなって。2人ともダメだったの。

残る2人とも不合格だった。つまり0勝5敗だ。

ちょっと待って、みんな不合格なの。冷静に状況を整理したが間違いなさそうである。色々なことを通り越して、私たちはただひたすら笑うしかなかった。

確かに不合格は悲しい。悲しいけど、全員が同じように不合格な運命共同体だったのだ。どこまで気が合うのだろうか。


さらに奇跡は続く。私は私立を2つ受けていたが、4人はあのマンモス校以外に私立を受けていなかった。つまり、4人は同じ学校であることが決まっていた。

私はというと、マンモス校で5人一緒になるか、1人女子校に行って女性磨きをするかを選べるのだ。明日までに入学金をどちらに払うかで決め、明後日は新入生集合日だ。

私の答えはその場ですぐに決まった。

私、女子校には行かないから、高校でもよろしくね。と宣言すると、みんな嬉しそうにしていた。

繰り返すが、全員が本命に落ちているのだ。でも、私たちは引き寄せられる運命なのだ。

この奇跡を、決して無駄にはできないのだ。

早速家に帰り、母にその旨を伝えた。母は念入りに私の意志を確かめたが、5人一緒なら良かったと言ってくれた。

女子校にも直接連絡を入れ、入学しない旨を伝えた。あの先生は残念がっていたが、縁を大事にしてくださいね。と優しく言ってくれた。


2日後の新入生集合日、またまたセーラー服をバッチリキメて、5人とその保護者みんなで車を乗り合わせて高校へ行った。

そういえば、全員同じ学校どころか上の方の同じクラスに入れていた。私たちはどこまでの縁があるのだろうか。

クラス変更の希望や学力の参考にする為のテストがいきなりあったが、ちょっと前まで受験生だった私からすれば簡単だった。

それが終わると、軽い説明の後制服の採寸に向かう。その前に私だけは面談に呼ばれた。

と言っても中学校からある程度の話は行っており、大した長話にはならなかった。

高校には女子生徒として入学することになった。これから向かう採寸も、女子の制服の採寸だ。


この高校の制服はブレザーだ。茶と黒の生地に白と黄色のチェックが入った変わった色のスカートを履き、ブラウスの上から紺地に緑色のラインの入ったベストを着る。胸元には金色の大きめなリボンを着け、最後にブレザーを羽織る。

女子校に負けないくらい可愛い制服だと思う。何よりも、セーラー服と違って暑い時の調節が容易だ。


私たち5人は、場所を変えても全員同じ服を着て共に学生生活を送られることが何よりも幸せだと思えた。言うならば、神様は私に3年間の素敵な学生生活に延長を与えてくれたのだ。

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