第41話 卒業の日
いよいよ卒業式を迎えた。私がセーラー服を堂々と着られる最後の日だ。
私は式が始まる前からずっと涙を堪えていた。ずっと一緒だった5人で一緒に学校過ごせるのは生涯最後になるかもしれないのだ。
式本番では1時間以上かけて1人1人に卒業証書が手渡しされる。私は証書の受け取りが1番最初だった。名前を呼ばれ、3年間で成長した甲高い声を張り上げて最高のへ返事をして校長先生の前に立つ。最初なので以下同文の言葉が入ることもなく読み上げられた。
受け取ったあとの礼でスカートの中が見えないかだけが心配だったが、ジャンパースカートは丈が膝を隠すほど長めなのであまり心配する必要はなかったようだ。
あとは席に戻り、ひたすら全員が受け取るのを待った。4人の友人の名前もすぐに読み上げられ、それぞれの勇姿を目に焼き付けた。
祝辞などが全て終わると、合唱に入る。最後の合唱も、私はやはりソプラノパートだった。いくつ歳をとっても君は君でいてほしい、という歌詞で思わず堪えていた涙が決壊したかのようにこぼれてきた。
みんなで次に会う時は本当に女性になっているかもしれないが、私は私でいようと思えた。
式が終わると記念撮影とアルバム記入の時間だ。アルバムにはまずページの真ん中に大きくいつもの4人が書き、その周りを他の子が埋めつくしてくれた。そのうち男子の1人は茶化すようにセーラー服似合ってたぞ、とだけ書いて行った。
記念撮影はもちろんいつもの5人から始まる。いつも5人だけで20パターンほど撮ってもらった。それが終わるとその他にも仲の良かった女子、男子、先生たちとも記念撮影をした。
結局クラス全員と記念撮影した。こんな私を3年間女子として受け入れてくれた学年の仲間、先生たちには感謝しかない。
私の3年間は、素晴らしい仲間がいてくれたからこそ成り立っていたのだ。
卒業式後はいつもの5人で遊び回り、夜には打ち上げに行った。この打ち上げにはクラス全員が集まり、私たちの団結力が証明された。
皆私服だったが、私たち5人はそのまま遊び回っていたのでセーラー服のままだった。
打ち上げのディナーは焼肉だったので、スカーフを外してから慎重に肉を焼いた。もう着る機会が少ないとはいえ、最後まで綺麗なセーラー服を保ちたかったのだ。
打ち上げもお開きとなり、私たちは5人でわざわざ歩いて帰宅した。また明日、みんなで集まるのだ。
帰ってからセーラー服を綺麗にハンガーにかけ、風呂に入る。1度立ち止まって壁にかかるそれに私は思わず3年間ありがとうと涙目になりながら抱きしめた。
そんな様子を見た母が話しかけてきた。
あの時女子の制服を着るという判断をしてくれてよかった。実はかなり小さい頃から本当は女の子なのではないかとずっと思っていた。だから今本当に晴れやかな気持ち。高校でも女の子で居たいならそれでいいから、何も心配しないように。卒業おめでとう。と言われ、涙ぐみながら、支えてくれて本当にありがとうと言って風呂へ向かった。
私の3年間は異様だったかもしれない。男子として詰襟で入学したはずの中学校を、女子としてセーラー服で卒業したのだから。
それでも、私は私で今後も生きていこうと清々しい気持ちで女子中学生としての生活を終えた。
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