第31話 夏の高校選び
波乱の梅雨が明け、期末テストの結果が出始めた。いつも5人の中でトップの友人が今回もトップだ。いつも3番手だった私は2番手に浮上してまさに下克上だ。
この日の帰りのHRで受験生らしい話が出てきた。どこの高校も夏休みにオープンスクールがあるのだが、その申し込みが明日から始まるとの連絡だった。オープンと言いながら申し込みを必要とするのは、単純に来る人数を把握するのと先生方の模擬授業の準備等があるからだと思う。
いよいよ高校選びという時期に入るのだ。推薦を受けたい子は内申点稼ぎに力を注ぐだろうし、高校なんてどこでも良いと思う子はまだまだ遊ぶだろう。
私たちはずっと同じくらいの成績だったし、塾に行き始めたことで同じくらい成績が伸びていた。
みんなで同じ高校に行けたらとすら思っていたが、現実はいくら仲が良くても仮に同じ学校を受けるならライバルなのだ。
オープンスクールの日程は各学校で話し合っているのか、多少の被りはあるもののなるべくバラバラに組んであった。もし夏に参加できなくても、私立は大抵年に3.4回あるのでまだチャンスはある。
私はずっと志望していた公立高校のオープンスクールへの参加を即決した。続くように同じ塾に通う友人も参加申し込みをしていた。
公立高校は5人で行きたい高校が少し別れたのだが、日程的に全部行けそうだったので結局3校分みんなで申し込んだ。
私の本命は赤いセーラー服の公立高校だ。
一方の私立は、電車ですぐのところにある生徒数が多いマンモス校の学校にみんなで申し込みをした。この地区では滑り止めとして人気の学校だ。
すると友人の1人が、せっかくだしここも行こうよと提案してきた。そこは学園祭に行った例の女子校だ。私が行ってよいのかと疑問に思いすぐ担任に確認を取ったが、問題ないと言われたので行くことにした。
結果的に、それぞれの本命の公立高校3つと女子校含む私立2つの計5つのオープンスクールへ参加することになった。
忘れかけていたが、明日は面談日だ。最近あの子に会っていないが元気だろうか。
次の日の放課後、いつも通り会議室に一番乗りで入って3人を待つ。待つ間に寝てしまったが、担任に起こされて面談がスタートした。
話の内容はいつもと変わらない。最近の調子や女子生徒との関わり方、男性の体の特性の方はどうかと聞かれていつも通り答えた。私の身体ははもう全く反応しないようになっていた。
すると私の担任から忘れないうちにと、ある封筒を渡された。オフホワイトの封筒の中身は例の女子校のパンフレットと記念のハンカチと手紙だった。
手紙の主は全く知らない名前だったが、担任からは会ったことあるはずだぞ。制服試着コーナーにいた人だよと言われた。
実はあの学校は、学園祭の時に制服を試着した女子中学生全員にこうしてパンフレットをくれるらしい。その際まず学校に電話がくるらしいのだが、担任はその時に私の事情を話して私の分のパンフレットに関しては断ろうとした。
しかし女子校側が、その子だって女性です。我々は女子生徒ならどんな事情があっても大歓迎ですと言い、私へのパンフレット送付を勧めたらしい。
手紙にも、本校には質の高い女性教育があります。入学してくださればあなたが生涯女性として活躍できるように支えます。心配は要りません。もし本校にご縁がなかったとしても、あなたは好きな道を歩んでください。
という風に書いてあった。
本当に受験できるのか不安だが、私は資料とハンカチと手紙に込められた学校側の配慮を有難く受け取った。
1年後には高校生になっている。私は来年どこでどちらの制服を着てどんな生活を送っているだろうか。4人はどこの学校に行っているのだろうか。
それは神様すら知らないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます