第26話 3年生1学期

この日は1年生の入学式だった。私は親戚の子との約束を果たすべく入学式に参加した。在校生も希望を出せば役員として参加できるようになっていたのだ。

式が終わるなり親戚の子をすぐさま見つけて記念撮影をした。まさかこの子も、私がセーラー服を着るようになろうとは思わなかっただろう。


こうしていよいよ3年生が始動した。私はこれから1年間、週3回塾に通いながら今まで通り生活する。今までなら週5回はいつものメンバーで遊んでいたが、それももうたまにしか出来なくなってきた。

例え週1回しか機会がなくなっても、私たちは続けた。

私を入れて5人組はみんな塾へ入った。そのうち1人は同じ塾の同じクラスに居た。

どこも授業の曜日がほぼ同じだった為に空いてる日も同じになり、そこで定期的に遊んだし運動もした。


塾ではまた新たな出会いがあった。他校の女子生徒から声をかけられることがあり、そこから次第に仲良くなった。

彼女は元バレー部で背が高かった。挨拶を交わして宿題があったかどうか、学校の授業進度などをよく話したと思う。

私は塾で同じになった人達に生物学上男子だということは黙って生活した。

黙っていたって問題なかった。私はもう格好も容姿も仕草ひとつにしても、誰が見ても間違いなく女子生徒だったのだ。

いつもの友人から、全然違和感がないと褒められさえした。


この頃、今後の生活においては必要に応じて女子トイレを使うように学校の先生から言われたし、塾でも最初から女子トイレの使用を勧められていた。

最初はあまり気が進まなかったが、思い切って女子トイレを使うことにした。中は全部個室なので、お互いに見る心配も見られる心配もないのが意外だった。これなら私が使っても問題はなさそうである。

コレを友人4人に話すと、全然いいと思うよ、一緒に行けるじゃんと陽気に言ってくれた。

この頃の私は精神が大きく女性の方へと向いていたのか、もう完全に勃たないようになっていた。

こういった変化が進む度に私は不安に苛まれていた。でも私の中の私も知らない私が女性でありたい願うことの結果であるのならそれでいいのだと自分に言い聞かせた。

もっとも、スカートを穿く以上はその方が都合が良かった。


そんな勉強漬けの毎日も連休まで時が流れた。最初の連休はさすがに塾もお休みだったので、前半には5人で久しぶりに出かけた。連休中はどこも人が多い。私たちが行ったスポーツ施設にも入場制限がかかるほどに人がごったがえしていた。

繰り返すが、私たちは最近こそその頻度は落ちつつも普段から体をよく動かしている。そのため今日の本気度はいつもの数倍あった。

まず、力を発揮すべく全員短パンと半袖シャツに着替えて、まるで部活のような感じで挑んだ。

バレー、サッカー、バスケに加えてバッティング。定番のチーム系スポーツでは2vs2に1人が審判という形で回した。バレーは苦手だったので進んで審判になった。

更にはアーチェリーやローラースケートで私たちはバチバチに競い合った。帰りの電車で立つのが辛いほど疲れたが、ある意味ここまでの勉強疲れは一気に無くなった気がした。

後半は家族で小旅行に出かけた。車で3時間ほど走った2つ隣の県で海鮮物を食べたりして旅館へ。旅館の風呂だけは相変わらず男風呂だ。受験前最後の旅行だと思って思い切り楽しんだのだった。


連休も過ぎ去り、制服移行期間が来た。

暑がりな私はすぐさま夏服へと移行した。大好きな丸襟ブラウスとも久しぶりの再会だ。

中学生最後の夏に向けて時は進み続けた。

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