第24話 ゆく年くる年

冬休みは本当に短い。短い割に宿題が多くて嫌になってしまいそうなので、おなじみの友人と短期集中の勉強会をいつものごとく開催した。その結果2日ほどで片付いたので、あとは年末ギリギリまで遊んだ。

2人だけ年末31日から帰省するという友人もいたため、30日が最後にみんなで集まった日になった。

ショッピングも運動も、充実していたと思う。珍しく雪が降って寒い日もあったが、私たちは寒さに負けじとランニングをしていた。


みんなで会った年内最後の日には久しぶりに制服で出かけた。あまりの寒さにカーディガンとタイツ、そしてコートまで使った。

やはり私たちはセーラー服が大好きだ。コレを着ているだけでみんな気分が上がってしまう。そしていつものように写真を撮った。

この時期制服を着る子は皆防寒をしている。私だってそうだ。何も着ないと本当に寒い。しかしセーラー服の上からカーディガンを着るとせっかくの長いスカートが短く見えてしまう。

私のこだわりとして、カーディガンはあらかじめジャンパースカートの中に着るようにしていた。こうすれば上着とスカートとの美しい境目が保たれてスカートが長く見え、脚も長く見えるのだ。私がやっていると4人はみんな真似してきたのだった。

クリスマスからの楽しい年末の時間があっという間に過ぎ去った。


31日には走り納めをした。私は男子の時から自転車が好きで、父から譲り受けたスポーツ用の自転車にたまに乗っていた。ジャージを着て、防寒をしっかりして走った。

帰省しない友人2人を誘うとノリノリで参戦してきた。やはり体を動かすのが大好きなのだ。

最近の運動の効果か、やる気に満ち溢れていた私たちは気付けば30kmもの距離を走り込んでいた。

折り返し地点には小さな神社があり、既に年末のお参りで地元民が列を成していた。休憩がてらそれに並び、無事に参拝した。

密かに、来年も私らしく女子らしく生活できますようにと願ったりした。

初詣用の出店が既に出ていたので、たい焼きを買って熱々のまま食べた。

やはり寒い日の温かい食べ物は格別だ。年始で2人が帰ってきたら再びここに来よう思う。


帰る頃には午後3時を回っていた。私たちは良いお年をと言って別れて家路に就いた。

我が家では遠くへ帰省はしないのだが、年越しはいつも近所にある祖父母の家で過ごすと決まっている。今年もお邪魔した。

年末の歌番組を横目に家族みんなでご飯を食べる。毎年この時間は1年を振り返る話で盛り上がる。


思えば今年は激道の1年だった。特に女子生徒になることになったあの時から1秒1秒が特別なものになった。そしてこれからも、私が女子であるこの時間はずっと特別なものだ。

画面越しに除夜の鐘が鳴り、新しい年がやってきた。

同時に受験生が近付いてきた。1年後の今日もおそらく私は女子でいるだろうが、今みたいな気楽な年越しはできないだろう。

これから頑張ろうと心に誓った。そんな年越しだった。


朝になると、おせち料理を出す準備が整っていた。私は今まで外でこそ女子らしく振舞ってきたが、家族の前でそんな姿はあまり見せていなかった。

今年は変わろう、そう意を決して食べるまでの準備を手伝った。母もそんな私を見てすっかり女の子らしくなってきたなと思ったらしい。

初詣にも出かけ、その時にも黄色のコートが役に立った。おみくじは中吉だった。


翌日の親戚の集まりでもきちんと食事の準備を手伝った。

親戚に4月から中1で同じ中学校に入ってくる女の子がいるのだが、私が女子生徒として在学していることを聞くなり嬉しそうな表情で、一緒にセーラー服で写真撮ろうねと言ってきた。年内に採寸が終わり既に予約まで済ませていたそうで、この子もセーラー服をえらく気に入ったらしい。

この何気ない一言に私がどれだけ救われたことかこの子にはまだ分からないだろうが、最高のツーショットにしてあげようと思った。


三賀日も開け、友人が帰省先から戻ってきた。5日に久しぶりにみんなと再会し、正月太り解消のための運動をした。今年も幸先の良いスタートだ。

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