第23話 クリスマス

小学校の頃から2学期の終業式は毎年クリスマスイヴだ。今年のクリスマスは友人達とお出かけする。

昼で学校が終わるので市内で最大規模のイルミネーションがある商業施設に行き、明るいうちにクリスマスマーケットを楽しんだ。

人が多いことを見越して今日は私服で行くことにした。修学旅行前に買った黄色いコートが大いに役立った。

というのも最近、いつもの友人達とは別の女子のクラスメイトが制服で電車に乗った際に痴漢に遭ったそうだ。

私たちも制服で動き回る機会がある以上十分気を付けなければならない。もちろん私も、知らない人から見ればごく普通の女子中学生だから警戒しなければならない。

勝手なイメージだが、テレビで見る痴漢に遭う中高生は大抵制服である。そのため私たちは、制服で遊びに行くのをしばらくやめることにしたのだ。


このクリスマスマーケットには野外で飲食できるスペースがあるのだが、ここで食べるホットメニューは最高に美味しかった。寒い時に食べる温かい食べ物は何倍にも美味しく感じるようだ。

もちろん商業施設内にも立ち寄り、百貨店で買い物もした。

冬場はすぐに日が落ちる。7時前には暗い夜空の元にキラキラとイルミネーションが広がっていた。

周りが見えていないカップルを避けつつ、撮影スポットへ向かう。写真撮影が多いことを見越してか監視のためかスタッフが何人も立っていて、そのうちの一人に撮影をお願いした。寒いのに嫌な顔一つ見せず応じてくれた。


クリスマスはみんなにとって特別な日である。キリスト教徒でなくても多くの人が何かしようと思うはずだ。

私たちも、今ここにいる人たちも全員がそう思っている。

いつか私も恋人とこういった場所に来たいとは思う。でも今の私が恋するのは男か女か、そもそも恋愛なんて出来るのか検討もつかない。

そんなことを考えたら気が狂いそうになるのだが、今はこの親友達のおかげで十分幸せなのだ。みんなが幸せでありますように、いい人と出逢えますようにと巨大なクリスマスツリーに祈りを捧げた。


遅くならないうちに切り上げ、今日はみんなでお泊まり会をする。夏旅、修学旅行と今までに何回かやったお泊まり会を含め、みんなで泊まるのはもはや慣れたものだ。

家に着くとケーキが用意されていた。それも様々な味が楽しめるタイプのホールが2つ。この子の母が買ってくれていたらしい。

先にみんなでお風呂を済ませて、ホカホカの身体でケーキにありついた。私は大好きなモンブランとチョコレート、欲張りにショートケーキの3種類を食べた。高そうなケーキを2つも用意してくれた友人の母に感謝だ。

動き回った疲れからか、この日はみんなお話しする間もなくすぐに眠くなった。


朝目覚めた私たちは、起きるなりすぐに着替えていつものショッピングモールへ行った。

いつも行っているカフェに行き、クリスマス限定で食べられる特別メニューのケーキセットを食べたのだった。

昨日も食べたのに太っちゃうね、と笑いながらおかわりまでしてしまった。

私たちはよく体を動かしているからセーフだ、と自分に言い聞かせて頬張る瞬間はこの上なく幸せだった。


私たちがみんなで集まる時、実は定期的に運動をしている。この5人全員にスポーツ系の習い事の経験があり、体を動かすことは基本的に大好きなのだ。

2日分の贅沢を取り戻すべく、私たちはこの日の午後もランニングと軽めのサッカーで真冬ながらよい汗をかいた。


楽しみながらも本当に有意義なクリスマス2日間だったと思う。今年ももう終わりが近づいている。受験生が近づくということは遊びに集中できる期間も僅かなのだから、この冬休みはもっと楽しもうと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る