第21話 修学旅行最終日

朝7時半少し前に目を覚ました。ちょうど起床時間の直前だった。とは言っても6時くらいまで起きていたので仮眠程度だが。

私は慌ててゴミを片付け、今日も証拠隠滅に成功した。

部屋に帰ると既にみんな起きていた。それもそのはず、昨日今日と起床時間ちょうどには部屋にいなかったので全く知らなかったが、館内放送を使って生徒が泊まる部屋には起床時間の放送が流れていたそうだ。

朝食を済ませて朝の支度に入る。このままホテルを出て奈良に向かい、奈良公園と東大寺を巡るのが今日のツアーだ。

私たちは重たいバッグをバスに載せてホテルを後にした。


1時間弱で、私たちのバスは奈良公園へと辿り着いた。

バスを降りて公園に足を踏み入れると、そこには大量の鹿がいた。鹿を避けながらクラス写真撮影のスポットに向かうが、並んでも鹿が邪魔をしてきて撮るまでに相当な時間を要した。結局鹿込みの写真になった。


そして私たちにはもうひとつ重大なミッションがあった。

私たちは昨日のトランプの大富豪決戦で、密かに今日のチャレンジャーを決めていたのだ。そのチャレンジャーとなった敗者である友人が、鹿せんべいを食べるというチャレンジを刊行した。

感想は味があまりなく、美味しくはなくて不味くもないという期待はずれなものであった。


東大寺には京都で見たそれとは比べ物にならない大きさの大仏様が居た。

出入口の門には2つの力士像がいたようだが、コレは出る時に初めて知ったのだった。

お守り売り場があり、皆熱心に探っていたが大体の生徒は既にお金を使い果たしていたので買うまでの余裕はなかったようだ。

ただ野球部のメンバーがそれぞれ数十円ずつを出し合って、1000円くらいの表札のようなお守りを1つだけ買っていた。


その後、東大寺から20分ほど歩いた先にある飲食店でみんなで昼食を取った。

修学旅行最後の食事なので、ひと口ひと口噛みしめながら食べた。奈良漬も出ていたが苦い味がしたようで、平気な私が友人や男子から引き受けた奈良漬だけで7人前も食べたのだった。


そして奈良に別れを告げてバスで一気に新大阪まで戻るが、敢えて高速に乗らずに街並みを楽しませてくれた。結局時間が余ったらしく、急遽大阪城に立ち寄って小休憩することになった。

予定外なので外から眺めるだけであったが十分すぎるスケールだった。

大阪城では男子にカメラを預け、城をバックに5人同時にジャンプする写真を撮ってもらった。

修学旅行中に使ったカメラというのは、初日に学校から配られた54枚まで撮れるインスタントカメラで、この写真は53枚目にあたった。残り1枚は帰りの新幹線で使おうと考えていたのだ。


新大阪に着き、30分ほどの待機時間を経て帰りの新幹線へ乗り込む。私たちは帰りには別の班の女子も巻き込んでゲーム大会をしようとしていたが、2日分の睡眠不足はそんなに甘くなかったようで寝てしまった。

起きた頃にはもう到着まで20分に迫っていたので、近くにいた違う班の女子にカメラを預けて最後のフィルムを使った。


新幹線を降り、駅から学校までバスで移動していよいよ旅が終わった。行きよりも随分と重たくなった荷物を抱えてバスを降り、校長先生の締めの言葉に耳を傾けた。

本当に楽しい2泊3日だった。

特に私を理解していつも受け入れてくれている4人がいたからこその修学旅行だったと思う。いつか大人になったらまたゆっくり大人の修学旅行行こうねと約束まで交した。

大人になった時に私である僕はどうなっているかは分からないが、行けたらいいなと考えて頷いた。


後日談だが、フィルムに残っていた西陣織会館の写真をわざと1枚多く頼んで、タクシー会社の運転手さん宛に感謝の手紙と共に送った。会社名もお名前も覚えていたので正確な宛先に送れた。

すぐに届いたらしく学校宛にお礼があったらしいが、そういう事は学校を通してねと苦笑いしながら指摘された。

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