第20話 修学旅行京都
朝7時に眠い目を擦りながら無事に全員起床した。
私は班長らしく6時半に目を覚まして、お菓子や飲み物のゴミを見つからないようにそっとゴミ捨て場に持って行き証拠隠滅を謀った。
それにしてもよくこんな両手いっぱいになるような量を一晩で食べたなと思った。
みんな本当は8千円までと言われているところを2万円以上お小遣いを持ってきていたので、こうした普段なら絶対にやらない散財が痛くも痒くもなかったのだ。
朝食と準備を済ませていよいよ町に出る。ホテルはそのまま連泊なので身軽で出発した。
ふと外を見れば予報通りの雪が降っていた。と言っても路面に積もるほどではなく、京都散策に影響はなさそうだ。
予定通りジャンボタクシーの運転手さんとロビーで合流して、挨拶と軽い自己紹介を済ませて車に乗り込んだ。運転手さんは40代の男性の方。ココ京都市内の在住で、私たちと同じ歳の娘さんと小学校のお子さんがおられるとのことでかなり親しみやすかった。しかもその娘さんも現在進行形で修学旅行に行っていたらしい。
8時半とかなり早めの時間に出てホテルに帰るのは17時くらいなので、学校から提案された観光スポットのうち半分かそれ以上は回れそうである。
京都市内の観光といえばほとんどが歴史のある寺院や各種の建造物である。
しかし今回は京都タワーなどの遊べる場所への立ち寄りもOKだったのと、昼食も各自好きなものを食べるということでかなり自由だった。
最初に向かったのは山の斜面に建つ寺院、清水寺だった。清水の舞台まではひたすら階段を登った覚えがある。清水寺の境内付近のとある場所には2つの石が並んでいる。石から石まで目を瞑ったまま到達できれば恋が叶うという縁結びスポットだ。私たちは各自でそれに挑戦した。
距離はそこまで長くないため正直簡単だったので全員クリアした。
私の場合誰と恋愛成就するかは分からないが。
商店街のようにズラッと並ぶ清水寺のお土産店に寄りつつ、予定通り京都御所を目指して再び中心地へと向かった。
途中で少し遠回りしながら、あの日本を代表するゲーム会社の本社を見せてくれた。
移動中に挟まる運転手さんの話は本当に面白かった。
例えばお賽銭に五円が良いとされる理由について、五円玉は日本の農業、工業、水産業の成功を祈るデザインであることと、日本の硬貨の中で唯一アラビア数字が用いられていないといった豆知識を教えてくれた。手元に五円玉がある人は1度確認してもらいたい。
そんな話を聞きつつ長い廊下がある三十三間堂に立ち寄り、京都御所から京都を一望できる京都タワーと回った頃にはお昼どきになっていた。
お昼ご飯は具体的に決めていなかったので運転手さんのおすすめに連れていってもらうことにした。
運転手さんは少し困りつつも、ちょっと高いけど娘が大好きな店が少し走ればあるからそこにしようか、と言ってくれた。念の為にアレルギーを聞かれ、問題のない私たちを海鮮料理のお店に連れていってくれた。
このお店も江戸やそれ以前からあった歴史のあるお店だったそう。みんなで1500円もする海鮮丼を食べて大満足だった。
午後の一発目は金閣寺を回った。朝からの雪が山の方ではしっかり降っており、綺麗な雪景色の金閣が見られた。カメラを運転手さんに持ってもらい記念撮影をした。その後は映画村へも滞在し、時代劇の撮影があるような本格的なセットを見学した。
この時点で運転手さんの混雑を避けた的確なドライブによって既に1時間ほど余っていた。スケジュール自体は運転手さんも知っていたので、寄り道しようかと言って西陣織会館へと連れていってくれた。
この場所では着物の着付け教室やイベント、販売まで行っている。運転手さんが受付で事情を話すと、なんと特別に試着会をさせてくれるということになった。
私はもちろん黄色をあしらった着物を選んだ。友人達も皆好きな色を選んだようで、夏の花火大会の時の戦隊ヒーローのようなカラーリングが再集結した。
驚いたことに、運転手さんまでグレーを基調とした着物を試着していた。
着物は浴衣よりもずっと締め付けがキツかった。これを着て踊る人がいるなんてとても考えられなかった。
私たちは運転手さんも交えて記念撮影をしてもらい、着物を脱いだ後は西陣織の小物を購入して会館を後にした。
京都散策もいよいよ終わりが近付いていた。北野天満宮を回ったあとは、これまた運転手さんの厚意で八ツ橋の本店に寄ってお土産とこの後食べる用の八ツ橋を購入してホテルへと帰還した。楽しい運転手さんとの別れは辛かったが、感謝の気持ちを述べつつ駐車料金を支払って今日の旅が終わった。
ホテルに着いてからは夕食までの時間トランプで勝負をした。特に目的はなかったが今日の思い出を語りながら1時間半暇を潰した。
夕食、班長会議、風呂が終わると今夜は集会がある。
集会では、サプライズで大阪の方から本物の落語家さんが出張で来てくださって落語ショーが始まった。内容は覚えていないが、かなり腹を抱えて笑った記憶がある。
楽しい集会後、今日もディスカウントストアへと向かって夜食を仕入れた。
この日も消灯後の見回りが終わるのを確認して、朝日が昇るギリギリまでゲーム大会をした。
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