第18話 修学旅行準備

2年生は合唱コンクールが終わって直ぐに修学旅行があり、2泊3日で関西を巡る。コレが悪い事を繰り返す問題のある学年だと問答無用でスキー漬けの修学旅行になるのだが、私たちの学年は見事に関西行きを勝ち取った。因みに5年前の姉の時はスキーだったらしい。


意外なことに行動班は完全に生徒だけで決めて良いとの事になっていた。しかも女子は5人か6人の班にするよう言われたので、結局いつもの5人が集まってしまった。正直勝手に決められるものだと思っていたのでかなり嬉しかった。班長をやることになったが、リーダーの経験は男子生徒だった頃から多少なりともあったので何も苦痛に感じることはなかった。


集団行動の訓練や、2日目の京都自由行動のルートと予算を授業の中で決めるなど、たったの3日間の為に数週間の間全力を注いだ。

しばらく社会科の授業も修学旅行で回る京都、奈良、大阪の歴史についての話題ばかりになった。せっかくなら深く知ってから行ってこいという計らいだったのだろう。

時には集団行動が出来ていないと、学級委員と班長が叱られるだけの集会なんかもあった。


私が生物学上の男子であることから、班員であるいつもの4人は宿泊の際の部屋をどうするか先生から相談を受けたらしい。そもそも先生側としては、私だけ別室または男子部屋への組み込みの予定だったそうだ。

しかし4人は同部屋で構わない、むしろそれがいいと訴えたそうで結局同部屋になった。先生に同じ2泊3日で行われた夏の女子旅のことを話して納得させたそうだ。

いくらみんなが私のことを女子として受け入れてくれていても、おそらくいつもの5人組で班を組まなければこうはならなかったと思う。

本当は相談されたことは本人に内緒でとの事だったらしいが、班活動中に1つも包み隠さず話してくれたのだ。

その直後の定期の個人面談で、修学旅行はみんなと同部屋でいいと告げられたが、頑張って初めて聞いたかのようなリアクションをとってみた。


修学旅行はもちろん制服だが、カーデガンやタイツだけで防寒は不可能なので、上着を着ることを許可されていた。もちろん耳当てやネックウォーマー、マフラーもOKだった。

しかしどれも持っていなかった私のために、修学旅行直前の週末にみんながコートとマフラーを選んでくれた。白いマフラーと私の大好きな黄色のコートの2点で5000円ほどで済んだ。この2点は修学旅行後にも私服として大いに役立つ事になった。


いよいよ旅の始まりだ。セーラー服を着て上着を片手に持ち、2万円のお小遣いと共に早朝の学校へと向かった。

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