第17話 女声で合唱

11月に近づき、いよいよ肌寒くなってきた。今回の制服移行期間では初めて長袖の丸襟ブラウスを着用した。暑い時は袖捲りをすればいいので非常に利便性があった。


同時に合唱コンクールも近づいていた。

本格始動前に、音楽の先生に去年の課題曲を歌って声を聴いてもらった。

意外にもあっさり問題なしと結論付けられ、今年は女声パートで歌うことになった。先生は昨年の同時期と比べて声がかなり変化していることに驚いていた。


例年指揮者は男子から選抜、ピアノ奏者は女子優先で経験のある人が弾くようになっている。ピアノの経験などない私にはどちらも無縁な話であった。

毎年課題曲と自由曲を続けて歌う形がとられる。自由曲に関しては15曲ほどの推奨曲の中からクラスごとに希望を決め、学年集会の際に正式に決定された。被った場合はジャンケンになるのだが、私のクラスは被らなかった。今年の自由曲はクラシックが原曲の、故郷の川を表現した曲だ。


私は女声パートとは言っても、低音のアルトになるものだと思っていた。しかし私の声は予想以上に高かったようで、高音のソプラノになってしまった。幸い運動部の声出しで鍛えた喉のおかげで難なく歌えた。

とはいえ練習中はやはり体が暑くなってしまい、ブラウスの袖を頻繁に捲っていた。


私には重要な役割ができていた。

なんと1番よく歌えてるという理由でパートリーダーに指名されたのだ。

個人的に争い事は避けたかったので、誰が歌えていないとか誰がよくできているとか、感じる部分はあっても名指しで注意はしなかった。

むしろ全体的に弱くなっている部分の歌い方を注意するなどして上手くまとめようと頑張った。

アルトのパートリーダーとのちょっとした諍いも乗り越えて、いよいよ本番が近づいてきた。


本番の頃には移行期間も終わり、セーラー服か詰襟かの冬服期間に移る。本番では髪をいつもより綺麗に結んで気合いを入れた。

心做しか、毛先がセーラーの後襟に当たる時の音がいつもより大きく聴こえた。

私たちは、目立ったミスもなく歌いきった。散々注意し、何度も練習してきたサビ前の部分もしっかりと歌えていたと思う。


結果は優勝だった。後で再び歌わなければならないが、ソプラノを堂々と歌えるパートリーダーの私はそんなことを面倒だとは思わなかった。誰も面倒だとは思っていなかったはずだ。

私たちのクラスの結束力がナンバーワンだったのだ。


去年と違い、女子として女声パートを歌えた事も含めていい合唱コンクールだった。

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