第16話 学園祭へ行こう
秋に学園祭をする高校が近郊にあり、いつもの5人で行くことになった。というのも、姉がステージに出るから見に行きたいという1人の提案によるものだった。
私服で行っても良いのだが、私たちは制服で行くことにした。ちょうど今は移行期間で個人的にはまだ夏服を着る時期だが、暑いわけでもないのでみんなで冬服のセーラー服で行った。
バスを2回ほど乗り継ぎ、高校に到着した。門を前に緊張して一度深呼吸をする私の手を、友人が行こうと勢いよく引っ張ってきた。
そう、ココはまごうことなき女子校なのだ。
もちろん文化祭の時は男性でも入って良いのだが、普段男性教員以外は女子しかいない空間である。緊張しないわけがない。
意を決して入ってみると、意外と普通の学校であった。
正面玄関を入ると、貴重そうにガラスケースに飾られた歴代の制服が出迎えてくれた。
やっと楽しむ気になれた私は、友人と展示や企画で溢れた各教室へと向かう。その道中で興味を引くモノを目にして、5人とも直ぐに足が向いた。
なんと、女子中学生限定で制服を試着して校内を散策できると言うのだ。
受付で学校名と名前を書き、簡単に身長やウエストを伝えると、いい匂いのする最適なサイズの制服とローファーを手渡された。
服屋さんにある3面+カーテンの試着室のようなスペースが5箇所、簡単ではあるが作られていた。ちょうど全て空きで、私たちは一斉に着替えに移った。
私が一番早く着替えが終わり、渡されたタグをハンガーにかけてセーラー服を預ける。
みんな次々と着替えが終わり、最後のセレモニー終了後30分以内に返しに来るよう説明を受けた。
見たところ私たち以外に10着ほど女子中学生の制服があった。
オフホワイトの生地に若干丸みのかかった紺の襟と袖口に白の平線が三本、胸元には青いリボンを着ける。紺のスカートはジャンパースカートだ。足元には白地に校名の略称が入った靴下と、黒いローファーを履く。
本当にカワイイ制服で憧れていたので感動してしまった。
私たちは時折在校生に間違われながら露店を楽しんだ。この学校は商業に力を注いでおり、地域連携も強いためにお店がかなり本格的であった。飲食物も多いので十分な昼食になった。
私はホットドッグ片手にステージショーを見物する。友達のお姉さんは、数人のグループで流行のアイドルの歌をメドレーにして踊りながら歌った。惜しくも総合順位は3位だったが本当に楽しそうで、見ているこっちもワクワクした。
本物の女子校の制服で楽しんだ学園祭もあっという間にフィナーレを迎えた。
制服返却に向かうと、着替える前に記念撮影をしてくれて、写真をその場で手渡ししてくれた。
感想を聞かれたのでこのまま着て帰りたいくらいだと言うと、微笑みながら入学待ってるよと言われた。
いよいよ現実に戻った。生地も襟も紺のセーラー服で胸元には青いスカーフを結ぶ。この制服も大好きだが、本物の女子校のカワイイ制服には及ばない。
本当にいい経験ができた1日だった。
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