第15話 私の変化

結局私たちは女子旅の後も毎日のように顔を合わせた。8月中旬にはクラスのみんなで集まって花火をした。非常に充実した中二の夏休みも終わりに差し掛かった。


この日は面談で学校に呼ばれていた。面談と言っても定期的に近況を報告するだけなので慣れたものである。

朝の準備を済ませ、いつも通り丸襟ブラウスのボタンを留める。前回は2番だったので、今日は1番のジャンパースカートを穿く。

いつも通りでは無いことが1つあった。いつもならスカートを穿いた瞬間に必ず一度は男の反応があるのだが、今日は全くその様子がない。コレに関しては、生物学上男性である以上仕方のないことだと割り切っていた。授業中になることもあったのだが、目立たぬように小さめのサニタリースパッツを履くなどして工夫をしていたのでなんとか過ごせていた。

それが今日、全く動じないのだ。

結局この日はスカートを脱いでからも一度も反応がなかった。初めて少しも苦労せずに女子として過ごせた気がした。


思い返してみれば最近変化したものがもう1つ、声だ。

中学生は特に男子は声が一段と低くなる。その波に逆らうように、2年に上がってからはなるべく高い声を出して生活していた。

それが最近は、地声がごく普通の女の子らしい高さになってきた。

この変化に関しても、おなじみの友人に言われて気付く程に自然なものであった。

今年の合唱コンクールは女声パートで歌えるかもしれないと思った。


2つの変化はますます進行した。

結局あの日以降ほとんど反応が無くなり、声も着実に違和感なく高くなっていった。

別に何か治療を受けているわけではないし、そういった類いのサプリを飲んでいる訳でもないが、あまりにも突然の変化に動揺してしまった。


私は全てのことを夏休み明け1番に保健の先生へ相談した。答えは意外にもあっさり返ってきた。

人間のみならず全ての生物に進化する機能が必ずある。生き物はその機能を生かして様々な変異を遂げ、環境に適応して今日まで生き延びることができたのだ。

私の変化も似たようなもので、女子中学生として過ごすうちに環境に慣れ、それ以上の女の子らしさを求めた結果の心情の変化から反応が起こらなくなったと言われた。

声に関しては、普段から高い声を心掛けていたことが良いボイストレーニングになり、声帯が次第に高音に慣れて高くなったのではないかという嘘のような見解を言われた。


私は変化を恐れる必要などなかった。

それは私の女子としての進化であったからだ。

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