第14話 女子旅の終わり
女子旅もいよいよ最終日。今日は水族館とプールに行く。ハードスケジュールであることを考慮して早めに寝た私たちは、学校がある日よりもずっと早い6時半に目を覚ました。
おかげで水族館にオープンから乗り込めそうだ。昨日の活動で汗の染みた制服は着ずに、各々の私服で出発した。
水族館に着くなり、私たちはイルカショーのステージへと向かい、確実に水を浴びる最前列の席を確保した。
ショーが始まり水槽の奥深くから勢いよく現れたイルカは、案の定私たちに大量の水を浴びせる。イルカの肌は全てヌメヌメしているようで、実はゴツゴツした人間の肌に近いモノがあるらしい。それが分かるほどに近かったのだ。
レインコートのおかげで服は濡れずに済み、その後もゆっくりと水族館を回れた。
その水族館で知ったのだが、カクレクマノミという魚はオスからメスになるという習性があるらしい。まるで私のようだなと笑ってしまった。
本来は女子学生服を着るだけの生活だったところが、私もすっかり女の子になってしまった。
昼食でカレーを食べたあとはプールへ。
初めての女性用遊泳水着の装着で緊張したが、何とか違和感なく着られた。
元々小学校の頃に水泳をやっていたので、ある程度の泳ぎはできた。そのため競走では1度も負けなかった。
長めのウォータースライダーでは思わず叫んでしまったが、みんなは私よりも大声で叫んでいたので安心した。
プールもそろそろ閉場の時間が迫る。私たちは監視員の目を盗み、最後の記念に手を繋いでダイブした。
旅の最後には地元から少しだけ離れた海岸まで帰ってきたところでBBQをした。予約制で道具も食材も貸してくれるため手ぶらで行ける便利なサービスだ。
このBBQには、何と私たち5人全世帯の両親と兄弟姉妹達が駆けつけて大いに盛り上がった。
もちろん、そこにいる全員が私の本当の性別を知っているが、皆が私を女の子として接してくれて本当にありがたかった。お肉も焼き野菜も、焼き魚もより一層美味しく感じた。
その後の花火をもって、私たちの女子旅は終わった。
その場で解散となり、各々が車で帰宅する。
その車中で母から言われた。私たちが女子中学生として5人揃って思い切り遊べる夏は今年がラストチャンスだったからこそ、全面的に女子旅を支える側に回ったと。
確かに、来年はおそらくこのような暇も惜しんで勉強しなければならない。
本来ならひとりぼっちになってしまう可能性だってあった、そんな私の学生生活をいつも助けてくれた最高の友達と過ごした3日間は、何よりも深い思い出となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます