第13話 夏休み、女子旅

旅館の朝食を済ませ、私たちは女子旅に向かう。今日の洋服は皆お揃いだ。紺地に青いチェックの入ったジャンパースカートにブラウスを組み合わせるおなじみのスタイル。そう、それは制服だ。もちろん私は丸襟で、他4人は皆胸元が涼しい開襟を着ている。

計画段階で言われるまでまさか夏休みに着ることになろうとは思ってなかったし、これで旅なんてまるで修学旅行のようだ。母親達にも制服を持参していたことは知らせてなかったため、少し驚いたようだったが止められはしなかった。


肝心の女子旅は今も残る城下町や広大な花畑など、各所の観光スポットを回った。

写真を見返して思ったのだが、花畑と制服を着た少女は絶妙に良い構図である。

昼食には冷やし中華を食べた。やはり真夏の大自然のテラスで食べる冷やし中華は堪らない。

午後にはそのままお菓子作り体験へ。色とりどりの和菓子を自分たちの手で作った。

お店に並ぶような様々な色をしたデザイン性に溢れた和菓子は、意外にも一般家庭にある調理器具で作れるものだと知って驚いた。使ったのは本当にざるや爪楊枝くらいで、あとは手でいくらでもデザインできるのだ。目の前にあった10色の白餡は、ものの1時間で夏を彩る植物達をかたどった生菓子へ生まれ変わった。

今日の女子旅はまだ終わらない。今度は陶芸体験である。

陶芸体験と言ってもろくろを使って成形する方ではなく、成形済の茶碗に専用の絵具でデザインをするというもの。それぞれが思うままにデザインをする。私は黄色が好きなので、全体を薄く黄色で塗ったあとハートを描いてみるなど工夫を凝らした。皆デザインもそうではあるが、制服に垂れないように集中して描いた。見た様子だと、皆昨日の浴衣と同じカラーリングになっていて面白かった。

この後伝統的なレンガ製の巨大窯で焼いて貰うのだが、焼き上がりに最低半日はかかってしまう。そのためここの陶芸体験では後日配送してくれる。


その日はそのまま温泉で有名な街へ行き、旅館で寛いだ。すぐに温泉には行かず、先に卓球で真剣勝負をした。1人だけ卓球経験のある子がいたのだが、卓球が苦手な私は全く歯が立たず1-11で完敗を喫した。

今日の活動だけでもかなり汗をかいたのに、またいい汗をかいてしまった。

昨日と同じく、男湯に浸かって再度合流。今日も暖簾から出るタイミングが同じであった。どこまで気が合うのだろう。


夕食を終え、私たちは旅館の周りを散歩した。私たちが普段暮らしている街中では、街灯によって綺麗な夜空が見えなくなっている。しかしこの旅館の周りにはほとんど街灯がなく、理科の教科書のように無数の星が広がって見えた。

夜だから分からないだけで、空はよく晴れていたようだ。

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