第11話 夏休み、浴衣の私

体育祭からテストと時は流れ、中学2年の夏休みに入った。昨年と違い部活動がない私は、始まって1週間の間おなじみの5人で家に集まって勉強会をした。学生の勉強会というものは、学校でやらない限りは遊びになってしまうことが多い。特にファミレスやフードコートでやる勉強会なんて私には信じられなかった。

私たちがここまで集中したのは、夏休みを思い切り楽しむためであった。結果的には大半の宿題がこの勉強会で終わった。


私たちは夏休み前から、郊外である大きな花火大会に行くことを計画していた。

この花火大会は私の浴衣デビューでもあった。向日葵色の生地に白い花柄のかなり派手なものを買ってもらった。初めての浴衣は締め付け具合がキツく大変だったが、それ以上にこんなにも似合うようになったのかと嬉しく思った。

髪には赤い髪飾り、足にはカツカツ音を立てるサンダルを纏った。


それぞれ違う色の着物に身を包まれた女子5人組が人混みの中を歩く。そんな私たちの姿はまるで戦隊ヒーローのようであった。


ここの花火大会は他のところと比べても断然長く1時間半にも及んだ。それぞれの浴衣に似た色の花火はもちろん、大きい花火が散ってさらに小さい花火を出すものや消える時にチラチラ光るものなど様々な花が夜空に咲いた。この時代の流行りの花火には土星や星を象った小さめの花火があった

どんなに綺麗な花火より私が一番好きなのは、やはりオーソドックスな火の本来の色をした大玉だった。

時々降ってくるのは風に流された花火玉の破片。必死に避けたがどうしても降りかかるし、髪に絡まった小さなものは髪飾りを外さなければ取り除けない。それでもこの役目を終えた破片ひとつひとつに、お客さん全員を楽しませた歴史があるのだと感じた。


全ての玉が尽き、空が真っ暗になる頃にはその場にいた人達が一斉に引き上げる。途中友人のサンダルが脱げてしまって拾うのに少し苦労したが、私たちは渡り鳥のような陣形を取り、何とか前へ前へ進んで迎えの場所まで歩いた。

喧嘩騒動を起こしてパトカーに連行される酔っ払いを横目に、やっとのことで私の母のミニバンまでたどり着いた。


今回の計画は花火だけではなかった。郊外である事を考慮してこの日は旅館に1泊、その後は2日間に渡って母親2人の引率によって女子旅をした。

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