第5話 合唱コンクール

2学期の中間考査の時期はちょうど移行期間に重なっていた。この期間はそれぞれが過ごしやすいと思うものを選んで着る。そのため制服としてのまとまりがない期間とも言える。寒がりな女子なんかは直ぐにセーラー服に衣替えしたが私はやはり暑がりで、中間考査が終わり合唱コンクールの練習が本格化する移行期間の最終盤まで夏服を着用した。もちろん丸襟ブラウスで。


合唱コンクールでは客から見て左に男子、右に女子がそれぞれ3列になってひな壇に立つ。普通であれば私も男子の列に立つのだが、詰襟の中で1人セーラー服はやはり変に目立ってしまう。かと言って女子の列に立ったとしても女声パートはできない。

指揮者との話し合いの結果、私は3列目の女子の1番左寄りの場所で歌うことになった。ここならばセーラー服を着たまま男声パートをしっかりと務められそうだ。


本番までのカウントダウンが1週間を切る頃には、私の髪型はポニーテールになっていた。解くとちょうど鎖骨あたりまで行くセミロング位の長さにまで遂に伸びたのだった。

難しいパートに頭を抱えるピアノ演奏者や、よくあるパートリーダー同士の激突を経ていよいよ当日を迎えた。

本番では私と長髪の女子達は皆綺麗にポニーテールを整えた。普段はツインテールのお嬢様スタイルの子も、この日だけはポニーテールで揃えた。短髪の女子たちは前髪を留め、おでこを出すスタイルでそろえた。ここまで来ればコンクールを控えた吹奏楽部のようだったが、気持ちが高まるような気がした。


みんなで懸命に歌った。同じ服を着た女子のパートに引き込まれそうになりながらも頑張った。

惜しくも賞とはならなかったが、それ以上の達成感があった。

多少悔しさもあったが、優勝すれば全体の閉会の時に歌わなければならないので内心ホッとした。


合唱コンクールが終わると、クラスメイトから明日遊びに行こうよと誘われた。

私は行くかどうか迷ってしまったが、断る理由もなく行くことにした。

迷ってしまったのは他でもなく、女子4人から誘われたからである。それも皆制服を着て行くとのこと。プリクラを撮る予定があるということくらいは簡単に察しがついた。むしろそうでなければ、休みの日にわざわざ制服で遊びには行かない。


私の人生初プリクラは、5人同じ紺色の服を着て同じポニーテールで写された、まるで女子中学生5人組であるかのような仕上がりになった。

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