第3話 女装中学生

起床と同時に、私は改めてセーラー服をじっくり眺める。ふと、1箇所だけしつけ糸を取り忘れていたことに気がついて慌てて外した。

朝食と洗面、トイレを済ませていよいよ着用の時が来た。


何度かやって慣れたはずの動作なのに、初めてやるかのような気分になった。スカーフは少し練習すればすぐにできるようになった。やはり私に合わせたサイズであるため、土曜日にコソコソ着ていたそれとはフィット感がまるで違った。除毛も済ませておいたので、違和感なく華奢な白い脚がスカートから出ている。

髪はいきなりで伸ばせるはずもなかったが、元々長かったこともあり、短髪の女子と言えば何とか誤魔化せそうだ。


家を出て私は学校へ向かう。元々早めに出る習慣があり、いつもより時間がかかった割に教室には1番乗りであった。

登校してくるクラスメイトになんというべきか迷っていたところに誰かが教室に近寄ってきた。クラスのマドンナ的存在の女子であった。私と同じ洋服に身を包まれた彼女はカバンを置いてこちらを2度見すると、冷静になって近寄る。

そして第一声に笑いながら、似合ってる可愛いと言ってくれた。なぜこの格好なのか聞くことはなく、ただただ褒めてくれた。

他のクラスメイトもやはり、何故男の子である私がセーラー服を着ているのかという質問はしない。それどころか男子達は興味深そうに、スカートの感想を求めてきた。

朝のHRで先生から軽く説明はあったが、誰も理由には関心がなさそうであった。


1人だけ、入学後あまり話してなかった女子が女の子になったのかと尋ねる。私は女の子になった訳では無く、男子としてこれからも通う。女装しているだけだよと説明したが、なんの躊躇もなくその説明ができてしまうのを可笑しく感じた。


授業、給食、休み時間と初めて女子の制服で過ごす時間はあっという間だった。違和感も不慣れな点も1日でなくなった。無理に内股を作らず、座る時はスカートを摘んで脚を閉じるよう心がけた。


部活にも入っていたが、先生も先輩も同学年の人たちも快く受け入れてくれた。

あくまで男子であるため、その後の大会も男子として出場した。もちろん大会の行き帰り、出ない大会の応援には制服で行った。

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