第2話 私のセーラー服
朝になった。日曜日でも学生服のお店は意外と空いているものである。
母がカウンターに向かい、学生服の購入の旨を告げ僕は試着へ。当然ながら詰襟を持ってくるスタッフさんに母が事情を話すと、驚いた表情を見せつつ直ぐにセーラー服を持ってきてくれた。
採寸は昨年の年末にもしたのだが、やはり物が違えば測る場所も違った。ウエストの位置を考慮して上着を長めにした方が良いと言われ、おおよそのサイズが決まった。
母が予約表を記入していると、先程のスタッフさんが何やら大きな箱を持ってきた。
運命のいたずらか、ほとんど同じサイズの物が在庫にあったというのだ。
早くても2週間、それまでは詰襟か姉のセーラー服で我慢思っていたところが、早速着ることになってしまった。
夏服の予約を済ませて店を後にし、その足で中学校へ。どうやら話しよりも先に制服を買うことで本気である事を見せつける母の作戦だったらしいが、それどころか今買ったばかりのセーラー服を着て話しに行くことになった。私は言われるがままに多目的トイレで袖を通した。慣れているため、着方やスナップの留める場所はだいたい把握していた。スカーフだけはまだ難しいので母にお願いした。
話し合いは変わった私を見て驚いた女性の担任と校長を巻き込んで2時間にも及び、最終的に男子という扱いのまま女子学生服で通うことになった。家族以外の人にその姿見られたことからくる恥ずかしさと緊張が入り交じって、何を話したかは正直全く覚えていないが、簡単な話でなかったのは確かだった。
普通ではなくなることを考えるとちょっとした後悔もあったが、やはり嬉しいと思ってしまう自分がいた。
午後からは人に見られることに慣れるため、セーラー服のままファミレス、ショッピングに連れていかれた。姉も高校のセーラー服で付き添ってくれた。
私のセーラー服は蛇腹線で胸当てがある。
姉のセーラー服は平線で胸当てがない。
スカートで長い距離を歩いたことがなかったため、まとわりつく布をうっとおしく思ってしまった。
その夜は女子の制服を着る上で必要な作法を姉に叩き込まれた。脚を開き放しにはしないとか、座る時はスカートを摘むとか、好きで着ていた時からは想像もつかないほど女子の制服は気を使うものであると理解らせられた。
いよいよ明日から、私の女子学生服生活が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます