第7話大団円
鑑はにやつきながら、近づいてきた。
「クックックッどうして私がいるとわかった、」
「あまりにも不可解な出来事が多かった、そこにはいないはずのスケルトンや、ドレイン・ビー、鍵のついた宝箱、呪いの魔法の短刀、
誰かが仕組んでいるなら、この試験を担当したあなたしかいない」
「なるほど、でも、なぜ私が、そんなことをすると思った?」
「5年前の、あの魔竜事件、生き残りは二人いた、一人は来名さんの姉穂麻央さん、そして、もうひとりはあなただった」
「あなたなら来名さんが、穂唱さんの妹だということも、そしてエリクサーのありかを知ってることも知り得た」
「来名さん、お姉さんは、エリクサーを政府から隠そうとしたんじゃない?」
「え、ええ、政府が隠蔽しようとしてるって言ってた」
笑いを噛み殺したようにクククと言った鑑は、
「確かに、当時私は政府所属の探索者だった、この100階の宝を得るのが任務だった」
「その時、本当は竜は倒されたんじゃないですか?」
そう僕がいうと、
「ほう、どうしてそう思う」
鑑は意外といった風にそうに答えた 。
そして僕は、目の前にいる竜を指差して 、
「その竜が死んでるからだ、腐敗臭がしてるし、目が傷ついてるのにもかかわらず気にもとめない、もしスケルトンを操っていたのなら先生の魔法は死者を操る死霊魔法を使えるはず」
それを聞いて、パチパパチパチと鑑は拍手をした
「ご明察、確かに、5年前のあの時、竜は倒されたよ、大きな犠牲をだして、私以外の死んだ英雄達によってね」
「じゃあ、やっぱり......」
そういう僕を、見下したように広角をあげ
「そのとおり、私がそこにいる死せる
「てめえ!」
憤る太陽に、
「怒らないでくれたまえ、これは私に課せられた任務だったのだ、 上からこの事を知りうるものを消せとね」
「エリクサーなんてものの存在か明らかになれば、病気や怪我がなくなってしまうかもしれない、それは大手製薬会社にとって、とても都合が悪い、ひいては、多額の政治献金を受け取ってる議員達にもね」
「ひどい」
要さんが言い 、
「そんなことで、お姉ちゃんを!」
睨み付ける来名さんに 、
「まあそうだが、少し弁明させてもらいたい、おっとその前に、エリクサーを渡してもらえるかな割られては困る」
「渡した瞬間、攻撃するつもりか!」
太陽がそう言い 、
「いいや私にもまだ君達に用がある、まあ信じなくても、君達に選択肢など無いだろう?そう要君、君がこっちに持ってくるんだ」
「いわれた通りにすれば皆を助けてくれるんですか......」
「ああもちろん」
要さんは鑑の言うとおりにエリクサーを持っていった。
エリクサーを渡すと、
「はっはっはっはっ! やっと手に入った5年待ったぞ!」
鑑は気がふれたように笑いだした、そして、
「普! お前の推理はほとんどその通りだ、だが、肝心なところが違う!」
「政府から探索を命じられたのは、エリクサーなんかじゃないんだよ」
「!?」
僕は驚いて、声を出せなかった。
そう鑑が唱えると、要さんに紋様が蛇のように巻き付き、要さんは急にぐったりして意識を失ったようだった。
僕が、動こうとすると、
「おっと動くなよ、動けば
「なんで、要さんを」
鑑は高笑いし、僕達を蔑む目を向けて言った。
「この娘が宝なんだ、この世界とは異なる世界の住人、そうだ《異界人》それがこの娘なんだよ」
「まさか!」
「うそだろ!?」
「ゆうきが!?」
「そうだ、5年前、私は竜を操り探検者を皆殺しにして、あの塔でエリクサーとこの娘を見つけた、だが、一人だけ殺し損なった者がいた、お前の姉、穂唱麻央だ」
「お姉ちゃんが 」
「あいつは私に重傷を追わせて異世界人を連れ去った、後の政府調査で、あの女の横に、魔方陣が描かれた跡があり、この娘とエリクサーは見つからなかったらしいから、転移魔法で外に飛ばしたんだろうと私は思った。」
「私は任務失敗の責任を取らされ、政府を追われたが、ずっと調べていたんだよ、穂唱は必ず妹になにか伝えているはずだとな、そして一年前、来名の入った学校に潜り込んだ、すると、この異世界人が現れた、歓喜したよ、まさか、自分から現れるなんて、まあ本人は知らんだろうがな」
「私は、この異世界人を手に入れようと考えた。だが一対一で魔力の高いこの娘を捕獲するのは難しい、そこで出来損ない共をつけた、それが普と牧鎚、おまえたちだ、案の定、鍵開け、解呪や回復、戦闘で大量の魔力を消耗した。ホラ今ならこんなに簡単に拘束できる。」
そう言うと脇に抱えた、要さんを揺らした。
「まさか、なにか知ってるかも知れないから消そうと思ってた、
来名がエリクサーまで見つけてきてくれるとは思わなかったがな」
そして最後に、
「ああ、穂唱真央が目覚めないのは傷のせいじゃない、 私が呪いの魔法をかけたからだ」
鑑はそう言うとクククっと笑いながら離れていった。
「待て!」
と呼ぶ僕達の声は、竜の炎を吐く音が掻き消した。
「ん......」
要ゆうきが目を覚ますと 、
「やっと目が覚めたか」
その男の声で、はっとなったが、動こうとしても体が動かせなかった。
「無駄だよ、その紋鎖は魔力を奪う、ほとんど回復も出来ない」
そう言って、ゆうきを脇に抱えながら早足で歩く鑑はニヤリと笑った。
「なんでこんなこと! みんなは! 皆はどうしたの!」
「彼らはもうこの世にはいない」
「そんな......皆が......」
「何で私だけ殺さないの!」
「ああ、君は気を失ってたから知らないのか、君は、異世界人なんだよ、私達が探してた宝が君だ」
「わたしが.......異世界人......?」
「ああそうだ、5年前穂唱麻央によって、外に転移されたんだ」
「じゃあ......わたしが、あそこにいたの......」
驚いていたが、一息吐いて
「そう、そして私を政府に渡すのね」
「いいや、あいつらには渡さない、渡すわけがないだろう、私を使い捨てた奴らなどにな」
鑑は虚空を睨んで言った、そして 、
「君を欲しがる奴らは、いくらでもいる、大企業、国、果ては闇の社会まで、何せ異世界は、巨額の金と力をを産み出す最後のフロンティアだらな」
そう言い、前から遺跡の入り口から光と風がもれてくるのを感じて
「ああ、この風が、私を素晴らしい人生へといざなってくれる」
だが、その風は突風となり、鑑を吹き飛ばした。
「なんだ!?」
鑑が目をやると 、
逆光を背に、要と共にとおる達三人の姿が見えた。
「皆!!」
「そんなおまえたち!? なぜだ!! なぜ生きている!!」
それは遡ること、10分前のことだった。
ドラゴンゾンビの吐く炎の中、三人は無事だった。
「おい、おい、どうなってんだこりゃ!?」
「これって、普?」
太陽と来名さんが驚くなか、僕は中華鍋を掲げ炎を防いでいた。
「ああ、助かった、100階に竜がいるって聞いてから、怖くてバイト代貯めて作った唯一の
「でかした! お前の異常な慎重さがここで役に立ったな! でどうやって竜を倒すんだ?」
「いや倒せない、炎を防ぐだけだ。」
「最悪だー! と言いたいとこだけと、何かあるんだろ、信じてるぜ」
「ああ、二人とも僕の肩に手を置いて、行くよ」
そうして僕達はここにいる。
「そんな馬鹿な、ありえん、上位の探索者でも、魔方陣も無しに転移なんて、出きるわけがない!!」
フラフラと立ち上がりながら、鑑が言った。
「僕は冒険をしたくないんだ、だからすぐ皆で帰れるよう、ほとんど全魔力を使って即座に転移できる魔法を習得した。
ただ急だと、転移場所指定が出来ないから、さっき会話したのは、確実に転移場所に飛ぶ為だった。
まさか目的が要さんだったなんて思わなかったからね」
僕がそう言うと、唇を噛みながら鑑はこちらを睨み付け、
「まあいい、ここで三人共にやって、その異界人を連れていく」
「無理だよ、スケルトン三体、ドラゴンゾンビ、もう魔力も残ってないはずだ」
「なめるな! おまえ達ぐらい素人ならやれる!!」
そう言うと、鑑は、手に魔法の剣を造り、切りかかってきた。
「ありがとよ、お前がくれたこいつのお礼、返すぜ!」
そう言って、太陽が担当を振り下ろすと突風が吹き、風が鑑を押し止めた。
「これは、さっきのと同じ、私が置いた短刀の力か!
だがこの程度......」
風を押し、無理矢理前に出た鑑に、
「上を見た方がいいですよ先生」
「なめるな! そんなブラフに騙されんぞ!!」
その瞬間、僕の投げた中華鍋が落ちて鑑の頭を直撃した。
「ぶっ!!」
そう言って、鑑は膝から崩れ落ち、地面に倒れた。
(あれから 1ヶ月か、)
そう僕はあのときの事を思い出していた。
鑑が逮捕されたことで、魔竜事件のことも白日のもとにさらされ、 政治家達は捜査を受けている。
そして、騒動の後、要さんは世間に対して、自らが異界人であることを公表した。
もちろん、僕たちは止めたが、彼女は、
「ありがとう、でも、わたしが異界人だと言ってしまった方が、危害を加えられづらいと思うし、わたし自身、もっと自分のことを知りたいから、調べるためにも公表した方がいいと思うの」
要さんはそう言ってたが、おそらくは逮捕された鑑がしゃべると、 僕達の身に危険が及ぶからというのもあったのだろう。
そうして、要さんは学校を去った。
来名さんの姉、麻央さんは意識を取り戻した。
どうやら鑑が司法取引に応じて解呪方法を話したらしい。
それから僕たちは時の人となり、連日メディアに追いかけられる事となった。
太陽は、多くの女の子から、モテまくったが、テレビのインタビューでセクハラ発言をしてしまい、
結果大炎上、全世界の女の子から嫌われることとなった。
来名さんはメディアを冷たくあしらい、氷の
僕はあまりにも普通なので、メディアの人はあまり取り上げなかった。
そして今、世間は新しいものに興味が移り、僕達の事は忘れ去られ、太陽は安堵している。
そして今日は、実技試験、
「おっそい! とおる、またスライムにてこずってたんでしょ!」
「ごめん来名さん!
このプレゼントしてくれた魔法の爆裂お玉、爆発の威力がありすぎて、僕も吹き飛ばされて......
あれ太陽はまだ来てないの?」
来名さんが無言で指差す方をみると、ボロ雑巾があった......
「いや、ボロ雑巾じゃない! 太陽だ!」
「とおる、オレは、ここまでだ......再来世は、きっとイケメンに生まれ変わる......」
「そのバカ、また魔法の短刀で、スカートめくってきたのよ」
幾分か性格が丸くなった来名さんが、ほほを膨らませる。
「またか、懲りないな、太陽は」
と僕が苦笑していると、
「君達、何を遊んでるのかなあ」
と後ろから聞き覚えのある声がした。
外遺跡探索者~異世界に行く気はないのに向こうからやってきた @hajimari
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