第6話真相へ

 来名まなは、皆と別れて石の家の間を走っていた。



(皆、ごめん......でもやらなきゃいけないことがあるの!)  



 そう胸が張り裂けそうな思いで走りながら、5年前のあの日の事を思い出していた。    



 それは両親の離婚で別れた姉に会った時の話しだ。


 

 そのときの姉は、周囲を警戒しながら、こう言った。



「まな、今、私政府の依頼で探索に加わってるっていったわよね、あれはエリクサーなの、政府はおそらく見つけたら隠蔽するはず、でもね、私達探索者は、万人に真実を知らせるため先を行く者だと私は思ってる」


「もし見つけて私が手に入れたら、100階に魔法で隠すから、 大人になって信頼できる仲間を沢山作ったら探してちょうだい、この帽子が場所を教えてくれるわ、愛してる」   



 そう言って自分の帽子をくれた、それが姉との最後の会話だった。  



(だめだったよ、お姉ちゃん、私口下手で人見知りだから、仲間どころか、友達だってうまく作れなかった、今だってみんなを裏切っちゃたんだもん......)  



(このままなら、お姉ちゃんとの約束も守れない! だから、来たの! 私一人で必ず約束は守るから)



 そう思いながら杖をギュッと強く握った、帽子のつばは塔とは別方向を指していた。



(ここだ、この場所だ)  



 何の変哲もない石の家の中、帽子は止まった。



 まなは杖を掲げ、  



「隠されしもの、見えざるもの、その真の姿、明らかにせよ!」  隠者の破衣ハーミットブレイク  



 と唱えると、目の前に一つの瓶が現れた。

 その瓶は美麗な彫刻が彫られている宝石のようなものでできており、中には黄金色の液体が入っていた。



「これがエリクサー......、これがあればお姉ちゃんを助けられる!」  



 瓶を小さなバッグにいれると、悲観的だった気持ちが、少し勇気づけられていた。



(すぐ帰って皆に謝ろう!)  



 そう思い、家を出て走り出すと、大きな影が自分を包んだ、その瞬間、ドガァァァァンという音と衝撃で吹き飛ばされた。  



(何! なんなの!?)   


 

 状況が飲み込めなかったが、鼻を突く腐敗臭を感じ、そちらに顔を上げると、そこに自分がいた。



 そう、それは自分と同じぐらい大きな目に写る自分の姿だった。



(ま、まさか......)  


 

 それは家十件分、身体はびっしりと鱗に覆われ、四本の大きな角に口と四肢には大きな牙に爪、巨大な尾と翼をを持つ、とかげのような生物、その姿は紛れもなく、伝説の魔物だった。  



 竜は、ゆっくりと首をもたげ正面を見据えると、腕を振り下ろしてきた。  



 ドガガガガガガガ!!!!  



 轟音をおこしながら、竜の爪は家を切り裂いた。 



(わたし、生きてる?)  


 

 そうまなが、不思議に思っていると、


 

「だ、大丈夫、まなちゃん!」  


  

 よく見ると自分を庇ってる、ゆうきの姿があった。



「ゆうきなんで!? あっバックがない! あそこ!」  


 

 と、とっさにゆうきから離れ、まなは地面に落ちたバッグを拾った。



「良かったエリクサー割れてない......」



「危ない!」



 ゆうきの声が届くと同時に安堵したまおが顔を上げると、竜の真っ赤に開けた口が迫って来ていた。


 

(あっ、わたし....死)    


 

 その一瞬、意識を失ったまなは、揺れる振動で意識を戻し  



「おいまな! 大丈夫だよな! 目、開けないとちゅーするぞ!」  


 

 という聞き覚えのある声に目を開けると、そこにいたのは、自分を抱いて走る太陽の姿だった。



「太陽! どうして!?」


「当たり前だろ。俺たちが帰ると思ったのかよ」


「わたし、みんなをだまして.......ごめんなさい」  



 まおが謝ると、



「仲間じゃねーか、それにオレも謝らなきゃならないことがある......」


「えっ?」


「お前、着やせするタイプだったんだな」  

 

 

 太陽は、指に当たってる胸の感触を感じ言った。  


 

「ナイス! 太陽くん!」    



 追い付いたゆうきは屋根の上を並走しながら言った。


 

「おうよ!」  



 そう答えた瞬間、ブーンと風を切りながら巨大な尻尾が太陽たちの横の家を叩いて粉々に砕いた。


 

「あっぶねー! あいつまじで、バケモンじゃねーか!」


 

 降り注ぐ瓦礫を避けながら走る太陽達に、竜は再度、尻尾を振りあげ振り落とそうとした。


 

「ヤバい! 次は避けられねえ!」  



 太陽は来名をかばうと、次の瞬間  



「たああああ!」  


 

 家の屋根から、飛びかかった要の斬撃が竜の右の瞳をとらえたが、鮮血をほとばしらせながら、竜は空中にいる要をつかみに来た。


 

「嘘! 目を攻撃したのに!」   

  

 その瞬間、要は手で払いのけられ地面に叩きつけられた。  

  


「ゆうき!!」  


 

 まなの声が響いく中、人影が土煙のなか立ち上がった。  


 

「だ、大丈夫、当たる瞬間自分で後ろに跳んだから、でも.......」    




 先程の竜の攻撃か、古い石の家壁は崩れ行き止まりになっていた。



「やべえな......さっき確認した逃げ道が、行き止まりになってやがる......」  


「皆!」  



 その行き止まりの壁から、とおるが現れ転げ落ちてきた。



「いたたたた......」


「とおるくん!」


「とおる!」  


「普!」


「みんな!」


「お前まで来ちまって 皆であの世も悪くねえかな」


「死ぬつもりはないよ、来名さんエリクサーは見つかった?」


「え、ええ私、でも、このせいで皆を危険に、何て言ったらいいか..... 」


「今はいい僕を信じて貸してくれる」     



そう僕が言うと来名さんははバッグの中のエリクサーを渡してくれた。



「攻撃をやめてください! エリクサーならここにある、取引しましょう!」  



 と大きな声で僕は叫んだ      



 すると、石の家の影から背広姿の1人の男が現れた。



「お前!?」

  

「なんで!?」


「そんな!?」  


 

 皆も驚いていた、それもそのはず、目の前にいるのは皆も知っている男、


 

 教師の鑑直実だった。

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