Ella

とあ

No starting

ella


私はお姫様。

誰がなんと言おうとそうなの。

絶対にそうなの。

だって私そういうふうに育てられたんだもの。

仕方ないでしょ?

お姫様にはティアラとお城。

おひめさまには貢物。

”オヒメサマ”には良い男。

世界の中心は私なの。

だってそうなの。

私は人に愛されるもの。

だって私は皆が羨むオヒメサマなんだから。


「「「おはようございます。絵楽様」」」

「おはようございます。ヱルの皆さん。」

「本日は学校ですか?」

「ええ。お見送りお願いできますか?」

「「「もちろんです!!!」」」

私はこの家のオヒメサマ。

オヒメサマは囚われの身。

いつ迎えに来てくれるかわからない王子様を飽きずに今日も待っている。

私もおかしいと思うけど、まあいいの。だって私見つけたもの。

最近ね、私の周りに何かがあるの。だから私は生きるのが楽しい。

ただそれだけでいいんだなって。

私は待ってる。彼が私に話してくれることをね。


「おはよう。灰谷。」

「おはよう、白場君。」

「今日も車なのか?」

「ええ。」

変わらない人。私の環境に怯えてる癖に、いつも私を気遣ってくれる。後ろで見てるヱル達に怯えていつも手が少し震えてる。

可愛い人。

「また喧嘩したの?」

「最近、隣の高校のやつが喧嘩ふっかけてきてるみたいでさ、大変なんだ。」

「そうなの、、、大変ね。でもなぜ隣の高校は急に喧嘩なんて、、、?」

「さあ、誰かを探してるみたいだけど。」

「、、、そうなの。」

人のことを思いやる気持ち。

喧嘩が強いところ。

ちょっと困ったように笑う、その顔。

こんなこと考えたら怒られちゃうわね。

「そういえば、私と会ったときも喧嘩でボロボロだったわね。」

「あのときは!」

「わかってるわよ。ごめんなさいね。あの時、私がストーカーされててヱル達がピリピリしてたのよ。」

ただ私にプリント届けに来てくれただけなのにね。

「ずっと思ってたんだけど、なんであの人達のことを”ヱル”って呼んでるんだ?」

「私の名前は絵楽。似た名前にしたかったそうなの。」

「愛が深いんだな。」

「別に。」

いつもわかったような口を聞いてくる。むかつく。

「あの!灰谷先輩!」

「なんですか?」

「お話があるんですが、少しお時間いいでしょうか?」

「、、、いいですよ。白場君、先に教室に行っててください。」

「いや、いいよ。待ってる。」

「そう。」

紳士。紳士なの?わからないわ。

目の前の後輩君らしき男の子は顔を真っ赤にして私を見つめてる。

背が高い、栗色の髪。どこかキラキラしてるみたい。

ああ、そういうこと。

「あの!僕、灰谷先輩のことが好きです!だから、僕を、僕を、、、!!!」

「ちょっと触らないでもらえる?」

「お願いします!お願いします!」

察してはいたけど久しぶり。それにこれはすごい。

いっぱいあるし、私の好きなものばかり。少し増やすのはやめようと思ってたけど、こんなに可愛くお願いされたら仕方ないわよね。

「わかったわ、別にーーー

「お前何してんだ!?」

「え、ちょっと白場君!?」

「お前、何無許可で灰谷に触ってるんだよ。手離せ!」

「灰谷先輩。この人ヱルですか!?それならわかりますけど!」

「いいえ、彼は、、、、ヱルではないわ。」

「、、、そうですか。わかりました。」

そういうと彼は、殴りかかってきた白場の拳を綺麗に避けて三発同時に白場に食らわせた。

やっぱりそうだった。

「お前みたいなネズミ共がなんで絵楽の近くをうろちょろしてんだよ。キモいんだよ。王子様ぶってさあ。てか、お前だろ?絵楽のストーカーは!?」

「ち、違う!!!俺は灰谷をずっと守ろうと!」

「そういう、偽善者精神っつーの???意味わかんねー。折角、隣の高校ヱル達がお前を粛清してやったのにさあ。なんでだよ?あれか?お前は絵楽の王子様だっていう幻想でも見てたのか?」

今日も瓜は絶好調。綺麗な顔が歪んでる。

「だって、灰谷俺のこと好きだろ?だっていつも俺と話してくれるし、優しくしてくれるし、お前は俺のお姫様だよな?」

可愛くて、愚かで、可哀想な人。

「なにかを勘違いしてるみたいだけど、私をお姫様に仕上げてるのは私自身。それに、私に貢物の一つもできない醜男、私には必要ないわ。」

「言われてるじゃん。まあ残念、絵楽は俺のオヒメサマだから。」

そうね、残念。

「じゃあな。お前はヱルになる機会すら失った。もう絵楽に会うことは叶わない。」

「叶わない夢を見続けるのは苦しいわよ。白場君、、、じゃあ、さようなら。」

本当にさようなら。

「悪くない男だったな。まあ、勘違い野郎だったわけだけど。」

「どうだったかしらね。」

「今日は、お前の好きなブランドの化粧品と、洋服とケーキを揃えて来たんだ。これはまだ一部。」

「いっぱいあるのね。」

「ああ、期待しといてくれ。」

「演技、うまくなったものね。」

「一生お前には叶わないよ。」

また今年も私のヱルはこの人だけど、少し気づいてる。でも知らないふり。

貴方は、かぼちゃ。お城まで私を運んでく。ただの道具。

でもその言葉はタブーなの。

私のヱルは貴方じゃない。


私は人に愛される。

私は、私をオヒメサマにする。

ただ、私のヱルは、私の王子様は、、、きっとこんなことをしても迎え来てはくれないわ。


私は毎日、盗まれた化粧品、盗まれた服と、盗んだヱル達の心に仕われ生きている。

そんな哀しいオヒメサマ。

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Ella とあ @akari1230

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