第23話 鍋パ(しゃぶしゃぶ)/1



長いので、前後編になるかと。

あと、微力ながら妹成分増やしたつもりです。


「ただいま〜兄ちゃん」


お、美幸帰ってきたね。


「おかえり、美幸。今日も学校おつかれ様やね」


「友達多いし、めっちゃ楽しいで?学校」

 

「それは良えなぁ」 


うんうん、前の学校から変わってよかったなぁ。


「兄ちゃんこそ、お仕事してるもんなぁ...

 いつもありがと!見てるで?」


...ちょっとどころではなく恥ずかしいけど、

応援してくれんのは嬉しい。


「なんのなんの、仕事も楽しいで?

 かなり疲れはするけど、友達もできとるし」


「兄ちゃん顔赤いで」


「えっ、ほんま?すー、はー」


「あはは」


「そういえば今日、ハルくん一家も

 ご飯一緒に食べるで〜。しゃぶしゃぶや」


「え、やったぁ!夜が楽しみやねー!

 ほな、早よう宿題してくる〜」


自分からやって、ほんま偉いよなぁ。


「休憩いらん?なんか飲み物とか持ってこか?」


「え、ありがと。じゃあ、

 ホットミルクはちみつ入りで!」


「はいよっ」


さっと拵えてトレーで部屋に持っていく。


「ありがと兄ちゃん。うち、頑張るわ」


「おお、美幸は偉いなぁ。頑張り」


さて、俺は俺でやることやらななぁ。


お肉は牛肉と豚肉、両方行ってまおうか?


昆布はあったなぁ...大根、白菜、人参買わな。


ねぎは新しく刻まなあかんね。


菜箸はある。ガスコンロは...うん、ガスもある。

土鍋も久々に使うなぁ。


しいたけと締めのうどんが欲しいな。


ぽん酢、ごまだれ…うん、ある。


紅葉おろし、柚子胡椒、大蒜もあるね。


よし、買うものはメモに書いた。


買いに行こ。と言ってもタクシーやけど。

はぁ、免許とって原付買いたいなぁ。


毎度のことながら短い距離に少し驚かれる。


タクシーアプリ、めっちゃ便利やなぁ(棒)







運転手さんに「すぐ戻ってくるんで…」

とお願いして、駐車場で待っててもらう。


待たせたあるから余計なものに目移りさせず、


必要なものだけをちゃっちゃか買っていく。

幸い昼でも夜でもないので人は少なかった。


「すみません、お待たせしました…」


「いえいえ、この時間帯は暇ですし良いですよ」


(※筆者はタクシーにあまり乗りませんので、

 頼んで本当にこんな事をしてくれるかは全く

 確証がありません。想像で書いてます)


「ありがとうございます、

 なんせ体弱いもんで…」


「それは...、回復したら良いですね。

 出しますよ」


「お願いします」





よし、帰宅。手ぇ洗ってうがいして、

買ったものを冷蔵庫に収納。


野菜類は残しておいて、さっと水洗い。


鍋にペットボトルの水と昆布を入れて、熱した。


洗った野菜・きのこを

それぞれ食べやすい大きさに刻んで、

ボウルかタッパーに入れていく。


鍋の方は弱火にかけて夜ご飯の頃には

だし汁になってるようにする。


「…ちょっと、早かったかな?」


ま、ええか。


食器もきちんとそろてるし、…あ。


せや、俺はお酒買われへんから

お酒飲むんやったら自前で持ってきてもらわな...


言うん忘れとったやん。


えーっと、


“プルルルルルル…プルルルぴっ”


『はいもしもし〜』


「あ…すみません大智さん〜、

 言うん忘れとったんですけれど

 俺はお酒買われへんので、

 お酒もし飲まれる場合は

 自前でお願いしても良えですか?」


『ああ!全然オッケーだよ。

 寧ろ、確認とってくれてありがとう。

 じゃあ甘えちゃって飲んじゃおうかな。

 今日は楽しみにしてるよ。またね〜」


「はい、また夜に」


ぷつっ


よし、あとは掃除でもして待とか。




《鶴崎大智side》


…良い子だ。


「あら、どうしたの?しみじみしちゃって」


「ああ、蓮君から連絡が来たんだ。

 お酒は買えないので自前でお願いしますって」


「わざわざ言ってくれるなんて、

 相変わらず良い子なのねぇ」


「だなぁ」


確か、三年ちょっと前。


遥希が高校生になる頃に隣に越してきた、少年。

年は遥希と同じだった。


遥希は蓮君とすぐに打ち解け、良く懐いていた。


ご飯を向こうで食べたりもしていた。


元々友達が多いとは言えなかった遥希に

こんな良い子が友達になってくれたと

僕等はとても喜んだんだ。


僕等にもすぐに打ち解けてくれた。

蓮君達には親が居らず、

蓮君は体が極端に弱かった。


ある日、妹の美幸ちゃんが眠りついた後に

僕等に打ち明けてくれた過去は、

とても忌まわしいものだった。


喜美恵(※遥希母)は蓮君の体に刻まれている

歪で夥しい傷を見て、息を飲んでいた。


蓮君ーーいや、彼は僕等の事を

どのように思っているのだろう。


僕等は彼等の事を息子娘のように思っている。


彼が誰かに甘えていたり

子が親に求めて当然の欲求を

表に出しているのを見た事がない。


彼は今、普通の幸せという物を

感じる事が出来ているのだろうか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る