第2話 お隣さん



俺の生まれは大阪なんやけど、

京都名物の八つ橋を持って、美幸と一緒に

挨拶に行く。


ぴんぽーん…


『はーい』


「あの、隣に越してきた渡辺と申します…

 挨拶周りに」


『ああ!今出ます〜』


優しそうなご高齢の声やなあ。


ガチャっとドアが開く。


「はいは〜い、ただいま…」


「わざわざありがとうございます。

 大阪から越してきたんですが、

 これよかったら、つまらんもんですが」


「あら〜!そんな、良いのに。でも、

 ありがとうね」


「いえ、これからよろしくお願いします」


「よろしくお願いね。

 それと、可愛い妹…娘?さんね」


「妹なんです。美幸、挨拶してーな」


「よろしくおねがいします!」


「可愛いわね〜」


そんな感じで右隣の家は、

ご高齢の夫妻が住んどった。

めっちゃ優しそうや。


まぁ、爺さんの方は

用事らしくていなかったけど。


「やさしそうやったね」


「せやねぇ」


「つぎ、こっち〜?」


「そうやよ。さっきの家が播磨さんで、

 今から行くとこは...鶴崎さんやね」


「つるさきさん!」


「じゃあ、ピンポンする?」


「うん!」


ぴんぽ〜ん…


『どちら様?』


「隣に越してきた、渡辺と申します」


『今出まーす』


大分と若い声。俺と同じくらいかな...?


がちゃ。


「どーも…」


「はじめまして、大阪から越してきました。

 これから宜しくお願いします」


「おー、よろしくお願いします。

 まぁお隣さんなんだし、

 楽な関係で行こうぜ。

 今ちょっと両親が旅行で居ねえんだよな」


「ええのん?じゃあ…

 これ、粗末なもんやけど」


「おお、八つ橋。ありがと!

 そういえば、お前何歳?

 あとそっちの可愛い子は?

 お前も綺麗でイケメンだし…娘?」


「や、俺は十五歳で次は高校やよ。

 この子は妹の美幸。

 ほら、挨拶してーな」


「よろしくおねがいします!」


「同い年じゃん!

 ていうか妹、可愛い。

 ま、上がってけよ」


「え?上がってええの?

 それ以外なんもないけど…」


「良いんだ良いんだ。暇だしな」


「じゃあ、お言葉に甘えて…失礼します」


「しつれいします」


両サイドええ人そうでよかったわ。


「なんもないけど、ゆっくりしてけ。

 家具とかまだ運んで来てないんだろ?

 車の音あんましねぇし」


「ようわかったね」


「まぁな。そんで、高校はどこいくんだ?

 引越して来たって事は近くなんだろ?」


「うん、

 美幸が〇〇小学校で俺が〇〇高校」


「え、まじ!?一緒じゃん!」


「へ、奇遇やな。改めて宜しくやな」


「ああ、よろしく。

 ていうかみゆきちゃんの小学校、

 俺行ってたぜ!」


「えー!つるさきさんいってたん!?」


「おー、そうなんだよ。奇遇だよなー」


「すごいな、なんか」


「そうだな。そういや、お前の下の名前って

 なんて言うんだ?」


「にぃにはな、蓮って言うねん!」


「おう蓮お前

 妹ににぃになんて呼ばれてんのか

 羨ましいなテメー」


「ええやん、別に」


「ぬー…イケメンめ」


「…顔、褒められても

 なんも嬉しないんよ、俺」


あの母に似てる言う事やからな。

あの人は顔が良かった。


だから男をとっかえひっかえできたんや。


「お、う…なんか悪かった」


俺の顔でも見て何か察したんか?


「や、こっちの事情やしね」


「だいじょうぶ?にぃに」


「ああ、大丈夫よ。そんで、

 君の名前なんて言うん?」


「ああ、俺は悠希、鶴崎ハルキだ。

 ハルとかハルキとか呼べよ」


「そうさせてもらうな。

 じゃあ、この後運び込みもあるし

 また後で」


「おう、そうか。またな!」










「ええ奴やったねぇ」


「そうやなにぃに」


それから20分後、

業者さんのトラックが来た。


「ーーこれで全部です、揃ってますか?」


「ええ、ありがとうございます」


「では、今後ともご贔屓に」


そう言って去っていったトラック。


その後には、ハルくんがいた。


「お、早速来よったんねハルくん」


「勿論よ蓮。

 俺一人で留守番なんて暇だしな」


「いや、美幸も懐いてくれてるから

 ありがたいんよ」


そう。

俺が業者さんと会話している間は、

ハルくんと遊んでもらっとった。


美幸も楽しそうに一緒にゲームしてた。


ゲームをあんまりした事

なかったからってのもあるんやろうね。

ゲーセンに避難した時位しか

ゲームやらへんかったから…


せや、昼ごはんはどうしよ。


買い食いはあんまりしたないんやけど。


食い倒れの大阪人が

何言うてんねんと思うかもやけど

金は出来るだけ節約したい。


え?そういえば関西人って

ケチなイメージ有ったって?

やかましいわ。


「せや美幸、昼ごはんは何食べたい?」


「ん?ん〜…」



「…どうした蓮?そんな顔して」


「…あんまお金使いたくなくて。

 食器とか調理器具とかあったら

 作ったんやけどね」


「ほう。少し待っててくれ」


そう言うとハルくんは電話をかけ始めた。


「お隣さんが来てさ、

 食器類とかなくて困ってんだ。

 ん?ーーーーーああ、すっごい良い奴。

 ーーごめんごめん。

 でさ、家に招いて良い?

 食材もそうだし。

 ーーーおお、ありがとう!

 じゃーーーーってええ?

 明後日まで帰れない?

 嘘でしょ…まぁ良いけど。

 じゃあ、気をつけて」


話は終わったっぽい…か?


「なんの話しとったん?ハルくん」


「ああ、俺んちの食材とか食器とか、

 使ってくれって!

 勿論それが嫌じゃなかったら、だけど」


「嫌なんかやないけど、

 …それはええのん?」


「良いんだよ。

 家主が良いっつってんだから」


「なら、ありがたく使わさせてもらうけど…

 せや、せめてものお礼にハルくんのも

 作ろっか?」


「良いのか!?やった、

 密かに気になってたんだよ」


「おぅ、そんなにか」


「まぁ気負うなよ」


「にぃに、決まった〜!やきそばがええ!」


「おうおう、作ったろーな、

 とびきり美味しいの。

 近くにスーパーとかある?」


「有る有る。

 全国チェーンの平凡なスーパーがな」


「そりゃありがたい。冷蔵庫の中見てから、

 買い物行ってくる」


再び家に上がらせてもらう。


立派両開きの冷蔵庫やなぁ…。


野菜室を開き、閉じる。


やっぱり場所まで借りてんのに

食材までもを使うことには躊躇する。


まぁ必要な野菜はにんじん、玉ねぎと

キャベツくらいか?


お肉も買うことにしよか。


あとは強いて言うなら、ソース位か。


さていくぞとなった時。


「にぃにだいじょうぶなん?」


「……自転車やし大丈夫やよ。…と思う」


「何がだ?」


「なはは、情けね〜…」












大手スーパーにて。


案の定息を切らした俺は息を必死に整える。


気を取り直して店内に

カゴを持って入っていく。


豚肉はこっちやな。

ほ?お買い得国産豚バラ肉。

ふむ...そんな問題無さそうやけど。

ほのかなピンク色は鮮やかやし、これと...

普通のにんじん。普段やったら多く入ってて

安めなやつを買うところやけど、

仮にも他人の家を借りる訳やからな。

そんなにいらんと言うわけや。


キャベツも4分の1玉、玉ねぎは一玉。


4コ入りの卵パックもカゴに入れる。


味付け用ソースは

オタフ〇の俺が好きなソースの

小さいタイプ。


マヨネーズとか油とかは...借りよか。


麺はおあつらえ向きな焼きそば専用袋麺

(26円)を4玉。


作ったキャッシュカードで決済。

限界額までお金を入れてある。


やばい、残高の底が全く見えん。


レジのお姉さんがめっちゃびっくりしてる。


あー、そんなに凝視せんといて...!

心が死ぬ...!


パスワードを打ち込み、無事完了。


マイバッグに買ったものを入れて、


自転車のカゴに入れる。


さぁ、帰ろ〜。



キャラクターファイル

No.2 渡辺 美幸

女性 8歳 新小学三年生

蓮の妹。兄の事が(家族的に)

大好きである。

ショートカット。異父兄妹。

そのせいで友達がおらず、

兄に暴力を振るっていた母を嫌っている。

虐待されかけていた所を

いつも蓮に庇われていた。

体の弱い兄の事を常々心配に思っている。

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